ホビーアニメを観ていたらいつの間にかアホになっていた

現在放送中の子ども向け番組を中心に、アニメや特撮ドラマについて書いていく。毎話「感想」を書くわけではなく、気になった話数や一般的な議論に関する記事を書く予定だ。

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モンスーノの聖なる泉に浸かってみよう

 

モンスーノとは何か?

あなた方の多くはモンスーノという言葉を聞いたことがないだろう。それもそのはず、モンスーノは造語だ。モンスーノはモンスーノDNAによって構成される液体・モンスーノエナジーから生まれたモンスターの総称だ。液体研究の第一人者・ジェレディ・スーノ博士の名前から、(スーノ博士のモンスター=)モンスーノと名付けられた。モンスーノが地球に現れたのは、遠い昔、恐竜のいた時代。恐竜を滅ぼしたとされる隕石に乗って、地球にやってきた。モンスーノは「五部族」の古代文明を築き上げ、やがて、歴史の陰に埋もれることとなった。このモンスーノとの絆、家族の絆、仲間達との絆を巡る物語がモンスーノである。
 
 

モンスーノの何がダメなのか

モンスーノは、電通系企業の利を活かし、世界各国で展開してきた。海外でしか発売していない玩具も多く、熱狂的なファンが海外から玩具を取り寄せることもあるようだ。日本未放送の3期のギリシャ語版は日本でも観ることができる設定になっており、一時期話題になっていた。日本のモンスーノファンが海外のファンと繋がる動きまであるようである。もはや全世界的なアニメと言って遜色ないだろう。にも関わらず、モンスーノはしばしばダメなホビーアニメとして扱われている。
 
初期の翻訳とリップシンク
モンスーノは、現在テレビ東京で放送されている海外産アニメの開拓者である。今でこそスムーズで、ユニークで、わかりやすい訳になっているが、初期は正直なところ、聞けたものではなかっただろう。英語のスピードをそのまま日本語に落とし込んでいたため、かなりの早口であった。中には、駄洒落の英語版のような表現もあり、日本語では訳しきれていなかった。モンスーノを好きなファンはむしろ、そうしたテンポや意味がわかりづらいフレーズも気に入っている。さて、英語が原語版である今作においては、一つ、大きな問題が生じる。口パクに唇を噛む形が入るのだ。日本語向けに直せばよかったのだが、口パクは直っておらず、いわば、ただの吹き替えになっている。こうした口パクのズレも気になる人は気になるようである。
 
玩具の出来が悪い
玩具の出来が悪いという話はよく挙がっている。そもそもモンスーノは、スティックのりより少し短いぐらいの筒状のアイテム・モンスーノコア(以下、コア)に収納されている。アニメでは、コアを弾き、回転(スピン)させ、障害物や相手のコアにぶつけることで、人よりはるかに大きい巨大なモンスーノを展開させる(1体で人間3人ぐらいを乗せることができる)。モンスーノは、人間の指示通りに動き、基本的に8分間行動できる。しかし、玩具では、巨大なモンスーノは出て来ず、筒の中にミニフィギュアが格納されているだけである。鳥型のモンスーノを立てる台などは付属していない。その上、玩具のモンスーノは基本的にミニフィギュアが出づらい。
 
さらに、米国版と日本版では遊び方が異なっていた。米国版はモンスーノを使ったトレーディングカードゲームである*1が、日本版はモンスーノをスピンさせる技術を競うゲームである。結果として、日本の玩具は子どもたちの心を掴むことができず、放送終了を待たずに展開を終了する。前述の通り、スピンの技術を競う日本では、モンスーノのスピンを助ける玩具を中心としたアクセサリー類や、強化パーツが発売されなかった。アニメ本編ではこうした玩具が積極的に販促されており、日本で売られなかったことが悔やまれる。
 
 

モンスーノのよさとは?

では、何がよかったのだろうか?
 
話のテンポが早い
モンスーノの最大の特徴は、日本の作画なのにアメリカのカートゥーンのテンポで話が進むことだ。例えば、第8話『父との再会』では、二十数分で大きく分けて8つの内容が展開する。前回登場し、天から5人目の仲間になる予言を受けたものの仲間になれなかった謎の少年・アッシュを尾行する。敵の襲撃を受ける。古代モンスーノ文明の遺跡を発見する。遺跡にて、僧侶の少年・ノアの口から古代モンスーノ文明の伝説が語られる。父らしき人影を発見し、後を追う。父とアッシュがともにいる。再び敵襲があり、4体のモンスーノがやられ、ピンチになる。父から新たなモンスーノと新アイテムを託され、敵を退散させる。父とは離ればなれになったが、アッシュが仲間になる。日本のアニメであれば、敵からの襲撃を増やして2〜3話に分けてやるであろう話をわずか1話で展開している。いわゆるシリアスな笑いを提供するシーンはあるが、日本のアニメのような日常回は、基本的に日本で放送していない3期にしかない。コメディというわけでは決してない。
 
 
作画崩壊が少ない
モンスーノには、作画崩壊が少ない。やはり、海外に輸出する作品だったからか、作画崩壊を指摘されることが少なかった。作画崩壊を指摘する場合、中割りを持ち出す場合が多いが、モンスーノの場合、中割りに関しても抜け目がなかった。唇の動きの不一致やキャラデザインが気に入らないという人がいるかもしれないが、仕事の出来は目を見張るものがある。
 
 
登場人物のキャラクター性
モンスーノの主人公・チェイス・スーノは王道から外れている。ホビーアニメの主人公といえば、熱血で少しバカというのが王道のパターンだろうか?ポケットモンスターのサトシからデュエルマスターズシリーズの切札勝太まで、様々な熱血バカがいる中で、モンスーノは熱血バカどころか皮肉屋の策略家が主人公である。「諦めて降参するんだな(≠堪忍しろ)」「クズで役立たずの負け犬め」などおおよそ主人公が言わないであろうセリフが多い。中には、敵からモンスーノを巻き上げる回まで存在する。仲間のブレンは日本語版では擬音語・擬態語を多く使う。ソフトウェアを中心としたメカニックに詳しく、時にハッキングもする。皮肉たっぷりの語り口のお嬢様・ビッキーは、チームの紅一点でありながら、一番格闘が得意だ。時に、暴力やメカで紛争を解決する外道キャラでもある。僧侶の少年・ノアは、モンスーノに詳しい一方で、一般常識は乏しい。モンスーノとの意思疎通や未来予知ができる(ヴィジョンが見られる)能力・モンスーノサイトの持ち主で、チェイスに同様の能力を開花させた。アッシュは謎が多く、スーパー戦隊でいうブラックのポジション。スピリチュアルな物を信じるノアとは逆で、現実主義者だ。
 
敵組織はいくつかあるが、冷酷な女司令官や残酷なマッドサイエンティストがいる一方で、敵側にも表情豊かなキャラクターが登場する。主人公をつけ狙うセクシーな女性幹部や、名古屋弁の図書館荒らし、正統派ライバルキャラでありながらモンスーノとは異なる方法でコテンパンにされる(!)ライバルチームなど、人気のキャラも多い。
 
YouTubeにはテレビ東京の公式動画も上がっているが、脚色がシリアスに振り切っている。笑いを提供するシーンももちろんあるので、勘違いは禁物だ。
 
 
 
モンスーノは全体的に、見苦しい点もあるが、ファンやネット住民からすれば、盛り上がれる点が多い。少なくとも日本においては、玩具の販促というホビーアニメの根源的な目的を果たせていないという意味で、駄作と言われても仕方ない。映像ソフトも販売されておらず、TSUTAYA限定のレンタルDVDに限られている。外国のDVDを取り寄せるコアなファンもいるらしいが、次のステップにつながるような成果は上がっていないようである。このようなファンの間で消費されるコンテンツのビジネスモデル化は、ヒットの種を守り抜くための喫緊の課題である。
 
 

*1:後にトレーディングカード会社が撤退し、形式が変更される。

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