ホビーアニメを観ていたらいつの間にかアホになっていた

現在放送中の子ども向け番組を中心に、アニメや特撮ドラマについて書いていく。毎話「感想」を書くわけではなく、気になった話数や一般的な議論に関する記事を書く予定だ。

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男女が手を取り合うアニメ『双星の陰陽師』

1話のサブタイトルが「運命の二人〜BOY MEETS GIRL〜」

このアニメの始まりは衝撃的であった。オープニングの楽曲と映像が流れず、スタッフが表示されるだけであった。1話でオープニングをカットし、エンディングの代わりに使うというのは、深夜アニメでよく見る手法だ。これは、このアニメが「深夜42時アニメ」であることを視聴者に告げるかのような演出であった。更に凄いのは、主人公のトラウマから始めることである。普通の子ども向けアニメであれば、トラウマ映像を流せば、子どもは怖がる。夕方アニメにそう言った演出は期待していなかったので、衝撃的であった。

 

そして、サブタイトルにある「運命の二人〜BOY MEETS GIRL〜」であるが、どういうBOYがどういうGIRLにMEETしたのか考えてみた。

BOY

過去の戦いで大切な人々を失った経験を受けて、運命から逃げていた。あんなに大きなケガレ*1は見たことがないと言っていたが、実際にはパワーがあって倒せた。自信がなかったのかもしれない。日常では、手当たり次第に女子に告白していて、愛に飢えていることがうかがえる。

 

GIRL

自分の運命を受け入れ、自分に自信があるいい家の子。呪装*2をたくさんかけるのが得意だが、札を大量消費するのが欠点。スピード型。だが、人に恵んでもらったお金でおはぎを際限なく食べるなど、抜けた部分もある。

ここでわかるのは、ただのガキが女の子に出会ってギャーギャー言っているのではなくて、BOYが、GIRLに出会ったことで大きく変わるという衝撃的な出会いであるということだ。こんな深夜42時アニメをなぜ作ってしまったのだろうか?この記事の中で考えてみる。

 

夕方枠でこのアニメをやる意味とは何か?

そもそも夕方アニメの役割は大きく分けて次の通りである。

  • ホビー玩具の販促→遊戯王、ベイブレードなど
  • ゲームの販促→プリパラ、アイカツスターズなど
  • 漫画の販促→ナルトなど
  • 映画の販促→ドラえもん、クレヨンしんちゃんなど
  • 娯楽→ちびまる子ちゃん、サザエさんなど

このアニメ作品は漫画の販促であり、主な対象層は中高生以上である。この対象層に関して、小学生以下と比べた際に挙げられる特徴としては以下のものがある。

  • 異性のキャラクターの活躍に一定の理解がある
  • 戦闘や流血描写に一定の理解がある
  • 「なりきり遊び」*3には興味・関心がない

これらを考慮に入れて検討した今作の主な特徴は以下の通りである。

  • 主役の男女2人がジェンダー的に平等である
  • 大人の楽しみ方を意識している

 

主役の男女2人がジェンダー的に平等である

男女1人ずつが主役のアニメがこの枠で放送されているのは奇跡である。以前も、少女が実質的な主役の少年漫画原作のアニメ『ソウルイーター』が放送されていた。しかし、それ以降、あまり男女で主演を張るという夕方アニメを見たことがない。このアニメがジェンダーの面で優れている部分としては、安易に男が女を守るとか、女が子どもを守るとしていない点が挙げられる。この作品の1話では、女性が技術(知性?)を用いて男性を守る、非戦力の男性が女性を戦わせて自分が子どもを守るという描写を入れつつも、最後には男性が戦いに加わって力で敵を倒す、という長所を生かした共同作業を実現している。そこまでして男女2人が主役だと主張しているのに、男性のお金を女性が使い切るという描写を入れたのは残念だ。


それはともかくとして、少年と少女が手を取り合って共同作業をするというアニメの内容は、現代の社会を象徴するような内容だ。待機児童が多く、女性が働きづらい世の中になっている。男性が子育てをするというのは社会制度的にまだまだ難しい。現代社会においては、夫婦共働きをしなければ、子どもを育てるだけの資金を獲得できない。男女が一緒に働き、子どもを養うことが求められているのだ。一方で、ロボット技術の発展で、力がない人が物を持ち上げることも容易になった。男女の壁はどんどんなくなってきている。男女共同参画社会への期待が高まる中で、こうしたアニメを放送するのは、何らかのメッセージが背景にあるのかもしれない。

 

大人の楽しみ方を意識している

まず、大人への意識の根拠として、描写が大人向けに近いということが挙げられる。中高生は、思春期を経て、興味関心が大人のものに近づいてくる。つまり、異性が疎外の対象ではなく興味・関心の対象となってきたり、戦闘描写への耐性がついたりしてくる。また、アニメのキャラクターになりきるというよりも、キャラクターに対して憧れたり、自分を投影したりするようになる。玩具を使っているという行為よりも、想いのぶつかり合いに興味が湧いてくる。言い換えれば、精神面での価値判断ができるようになるのだ。中高生男子が喜ぶような描写も入ってくるし、「バトルって楽しい!」ではなく「戦いは苦しい」という描写もある。これが小学生向けであれば、えっちな描写はパパ向けのものになるし、バトルは楽しいという前提から話が始まる。中高生はそこが違うのだ。


次に、出演声優がアイドル声優ばかりである。焔魔堂ろくろ役の花江夏樹や音海繭良役の芹澤優などはまさに今売り出し中といって差し支えないだろう。もちろん、花江夏樹は未就学児向けの『リルリルフェアリル〜妖精のドア〜』に出ているし、潘めぐみに関しても『手裏剣戦隊ニンニンジャー』で敵幹部・十六夜九衛門を演じたり、『ハピネスチャージプリキュア』でキュアプリンセス/白雪ひめを演じたりと、子ども向けが多い。だが、公式ウェブサイトのSTAFF/CASTのページ*4を見て欲しい。明らかに声優ファンに向けたキャストのコメントが載っている。もしかしたら、小学生で声優ファンという人もいるかもしれないが、これらのコメントは見る限り、全国のちびっ子に向けたものとは到底思えない。このアニメは大人を意識したプロモーションを行っており、中高生以上が対象とされていることがよくわかる(小学生に優しいひらがなのページはない)。

さて、まだ「なぜ大人向けなのか?」という疑問が解決していない。だが、男女が手をとりあうのは大切だというメッセージを込めた作品だとすれば、異性への意識が強まっていく中高生以上の人々にメッセージを送るのは当然と考えられる。中高生以上であるから、深夜ではなく、平日の夕方に放送しているのではないだろうか?


検討してきたように、双星の陰陽師が夕方に放送されるのは、中高生以上の人々に男女が手をとりあうことの大切さを説くためである。まだ1話の段階でこんなことを言ってしまって良いのかとは思うが、今後のろくろ、紅緒夫妻の活躍に期待している。

 

*1:悪霊のこと。

*2:陰陽術のことであり、公式サイトを見る限り呪詛ではないらしい。

*3:ここでいうなりきり遊びは、番組の中で起こることを真似しつつ、想像力を以って発展させる行為である。

*4:『STAFF/CAST | TVアニメ「双星の陰陽師」公式サイト』2016年4月6日閲覧。 http://www.sousei-anime.jp/staffcast/

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