ホビーアニメを観ていたらいつの間にかアホになっていた

現在放送中の子ども向け番組を中心に、アニメや特撮ドラマについて書いていく。毎話「感想」を書くわけではなく、気になった話数や一般的な議論に関する記事を書く予定だ。

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挫折や葛藤のあるキャラクターVSなんでもトントン拍子に進むキャラクター〜人間味は必要か〜

近年のアニメ視聴者に見られる人格・人間性に対する過剰な要求

アニメや特撮に対して、最近インターネット上でよく見る意見として、次の2種類があげられる。ひとつは「このキャラクターは全く成長していない。ウジウジしてばかりで、見苦しい。」というものだ。最近で言えば、『遊戯王ARC-V(アークファイブ)』の主人公・榊遊矢に対してこのような批判が多い。もうひとつは、「私は子ども向けアニメの優しい世界が好きなのに、この作品ではキャラクターが平気で人の悪口を言う。」という内容の不満である。これは、『アイカツスターズ!』が放送開始した際、前作の『アイカツ!あかりGeneration』と比較して、よく言われることだ。

 

両者に共通するのは、キャラクターの人間味に対して言及しているということである。おそらく、キャラクターの人間味を軽視している人たちが想定する(子ども向け)アニメというのは、主人公の成功ばかりを描いて、視聴者に爽快感を与えるもの、あるいは、完璧な主人公を描いて子どもたちに具体的な教訓を与えるもののように、確定的な要素によって視聴者に何らかの情報を提供するものだ。特に、(実写の特撮を含む)ヒーロー物では、強くて悩まない主人公を求めている大人が多い気がする。一言で言えば、現代のアニメにおいては、「最強の聖人」を求める声が根強くなっている。

 

ヒーロー・ヒロインは最強であるべきか

最初は弱かった主人公、だんだん負けなくなる主人公

主人公に失敗や敗北を許さない人がいる。例えば、『アイカツ!あかりGeneration』に人間味がない理由のひとつとして、簡単に仕事がもらえることが挙げられる*1。主人公の大空あかりには、(2nd Seasonにて、)必殺技が出せず、成績も振るわないという不遇の時代があったのだが、それ以外のキャラの闇の時代があまり描かれていない。親の七光りという呪縛から抜け出すためにドラマオーディションを受け、合格した紅林珠璃こそいたものの、回想以外の劇中で敗北した(負けたことで涙を飲んだ)キャラクターはあまりいなかった。それどころか、2nd Seasonの頃から、自分の負けは棚に上げて自分が負けた相手を賞賛するようになっていた。負けたからこそ自分に鞭打ち頑張るというような描写は皆無だったと言える*2。そんな中で、仕事のオファーだけ来られても、重みは全く感じられないであろう。

 

舐めプをする主人公

このように、負けない主人公には魅力がない。同様に、『仮面ライダーウィザード』の操真晴人は、中盤以降の話で、使えば確実に勝てるであろう最強フォームを封印して戦っていた*3。これに対し、ネット上では「舐めプ(舐めプレイ)だ」という批判が相次いだ。最強フォームならほぼ勝てる*4というシステムになっていたため、2話完結の物語の終盤でしか最強フォームの真価を発揮しなかったのだ。「強い怪人だから最強フォームで挑んだけれど負けた。だから、工夫や特訓をして倒す」というのならまだわかる。だが、その気になれば倒せるのであれば、その回で怪人を倒した意味はないのではないだろうか?いずれにせよ、敵幹部以外には負けない仮面ライダーウィザードには、あまり魅力がなかった。

 

勝利が約束された主人公

似たような事例になるが、『遊戯王ZEXAL(ゼアル)』では、主人公の九十九遊馬が特定の種類の相手に負けられないという設定*5だったため、敗北がパワーアップの布石などの節目にしかなかった。たしかに、最強のカードを使わなければ弱いという意味での敗北の描写はあった。だが、本筋のバトルで勝つことがほぼ分かっている以上、逆境を乗り越えることが確定しているつまらない物語、つまらない主人公になっていた気がする。もちろん、逆境を乗り越えるに越したことはないが、逆境を乗り越えられなかったからこそ、最後に逆境を乗り越えた時に視聴者が最大級の爽快感を味わえることもあるのだ。要約すると、逆境を乗り越えずに勝つ主人公に視聴者は共感できないし、確実に勝てる主人公には魅力がない。

 

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ヒーロー・ヒロインは聖人であるべきか

主人公の人格が超越的であることを求める人がいる。つまり、間違ったことを好まず、悪いことをしたら謝り、間違ったことをした人には説教をするというような強い人を求めているのだ。私の知る限りでは、そういったキャラクターはアンパンマンぐらいしかいないと思う。アンパンマンは毎日欠かさずパトロールをし、お腹を空かせた人に自分の顔を与え、困った人を助け、バイキンマンを退治する。誰もがアンパンマンを愛し、敬っている。しかし、そのような人物は極めて非現実的だ。誰だって、どこか性格に穴があるはずである。

 

不完全から進化していく主人公

わかりやすい例は、『仮面ライダーカブト』の天道総司と『プリティーリズム・ディアマイフューチャー』の上葉みあだ。まず、天道総司は、才気があり、料理が得意で、唯一の肉親である妹を愛し、戦いも強いという完璧な部分が強調されたキャラクターだ。しかし、変なこだわりがあったり、上から目線だったり、神出鬼没だったりするため、他の登場人物が手を焼いていた。天道は、ライバルライダーや最強の敵ライダーの出現など数々の逆境を乗り越えていく。そうして周りに認められつつ、自分の不完全な部分も見せていく。『カブト』の場合は、2号ライダーが努力型の凡人だったため、主人公の人間味がどうしても薄まりやすい。だが、だからこそ、時折見せる人間味が映えるのだ。

 

完璧に近づいていく主人公

上葉みあは反対に、スター性が高い以外はほぼ「嫌な奴」とみなされる。突然ステージに乱入して、芸能界のトップスターである春音(はるね)あいらを倒す*6と宣言したと思えば、実際には何もできなかった。口うるさい上に、なんでもかんでも一番でなければ気が済まず、礼儀もなっていない。プリキュアシリーズにも、ガサツな主人公はいるが、それ以上に飛び抜けている。それでもスター性は卓越していて、「一番」初心者なのに、チーム内で一番すごい*7。もちろん、性格面では改善が見られ、終盤では敵幹部に説教をしている。おそらく、最初から聖人であればみあの物語は描けなかったし、視聴者の心を掴むこともなかっただろう。第一印象が最悪だから観るのをやめたという人がいるならば、非常に残念だ。

 

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このように、短所があるキャラクターには、成長や他者からの承認など、最初から聖人のキャラクターには描けない魅力がある。短所がなければ、その物語はただ敵を倒し、あるいは年中行事を淡々とこなしていくだけの無機質なものになるだろう。


以上のように、現代日本では、強くて悩まないキャラクターが強く求められている。だが、感性だけで政治や時事を批判できる世の中だからこそ、感性豊かで不完全なキャラクターを推すべきではないだろうか?

*1:他の記事でも説明しているが、実際には、オーディションではなく、仕事の内容を描くためだと思われる。

*2:他の記事でも言及したが、骨折したのに練習をしようとした黒沢凛は咎められている。

*3:通常フォームや中間フォームで苦戦すると、中間フォームや最強フォームになると初めてフォームチェンジをする(あるいは負けるか逃げられる)というような戦い方をしていた。

*4:販促の都合上最強フォームになる必要があるため、2話完結の前半で敵に逃げられることも多かった。

*5:異世界の使者に憑依されており、負けると異世界の使者が消滅し、世界のバランスが乱れる

*6:春音あいらはプリズムショーと呼ばれるフィギュアスケートのような競技のトップ選手であり、そのライブステージもプリズムショーのリンクだった。

*7:プリズムショーは、技術以外は「心の煌めき」に大きく左右される。「心の煌めき」が強いスターは、強い「プリズムジャンプ」(必殺技)が跳べる。

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