ホビーアニメを観ていたらいつの間にかアホになっていた

現在放送中の子ども向け番組を中心に、アニメや特撮ドラマについて書いていく。毎話「感想」を書くわけではなく、気になった話数や一般的な議論に関する記事を書く予定だ。

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【ベイブレードバースト】医師「何かスポーツでもやっているのかい?」紅シュウ「ベイブレードです」が一人歩きしている件について

ベイブレードバースト第10話で、怪我をした少年と医師のやりとりが話題になっている。この記事では、その回のあらすじと怪我をした原因を記述する。

 

www.beyblade.tv

 

ベイブレードバースト第10話「乗り越えろ!相棒を信じて!!」

この回は、強敵に負けてスランプに陥った幼馴染に助言を与える心優しい少年の姿と、その少年が試合前に大怪我をしてしまうという皮肉な展開を描いた回である。以下、あらすじというよりも起こった内容をクロノロジカルに記述していく。

 

この回のあらすじや登場人物の詳しい紹介に関しては、テレビ東京側の公式サイトを参照されたい。

www.tv-tokyo.co.jp

 


強敵・小紫ワキヤの最強シュートに負けた主人公・蒼井バルトは雪辱を晴らすため、新必殺シュートの特訓を重ねる。ところが、バルトは必殺技とワキヤへの執念に囚われ、まともなシュートすら出来ずにいた。

 

クミチョー(黄山乱太郎)は、ベイブレードクラブの仲間を文字通り(復讐や特訓のための)コマとしか思っていないバルトを見限ったように見えたが、実際は何とかして欲しいと紅シュウ*1に持ちかけていた。だが、シュウ自体もワキヤの強さには感服していたし、バルトを立ち直らせるために協力する素振りは見せなかった。

 

一方、ワキヤを意識しすぎてスランプに陥っているバルトは前に勝っている緑川犬介を前に場外負けを喫し、終いにはバースト負けしてしまい、バルトは悔しさのあまり、帰宅してしまう。

 

所は変わって、シュウは1人で特訓をしていた。そこにバルトの弟と妹である蒼井常夏(トコナツ)と蒼井日夏(ニカ)が通りかかる。シュウを見つけたニカは嬉しくなって走り寄るが、階段に躓いてしまい、転んだ日夏を避けようとしたシュウは肩を捻ってしまう。シュウは何事もなかったかのようにやり過ごし、常夏達に、「ヴァルキリー(バルトのベイブレード)は元気か?」とバルトへ伝えてくれ、と言い残す。

 

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場面は変わって、常夏と日夏らが家の庭でベイバトルをしていた。それを見たバルトは、相棒(ベイブレード)と対話することと、勝ち負けに関係なくベイバトルを楽しむという大事なことを思い出す。

 

この次が問題のシーンである。シュウは病院で、医師から全治1ヶ月を宣告される。医師はシュウが右肩に相当無理をかけていることを指摘し、何かスポーツをやっているのかと質問をする。シュウはベイブレードをやっていると答え、医師は「君はブレーダーか」と合点がいった表情を見せる。今はベイバトルをせず、しっかり治療に専念するよう念を押し、場面は病院の前に切り替わる。そこで、次の対戦相手である銀刃オロチが、シュウが病院から出て行く様子を目撃し、シュウが問題を抱えていることを察知する。

 

 

翌朝、常夏達から伝言を聞いたバルトはシュウに、ヴァルキリーが元気であることを伝え、放課後、ベイクラブに来てバトルするよう促す。シュウは躊躇ったが、バトルを禁止されていることを伝えられず、承諾してしまう。

 

[rakuten:yousay-do-pointup:10028674:detail]

 

放課後、ベイクラブに来たシュウは、バルトとバトルをする。肩の痛みに耐え切れずに渋々フォームを変えたが、周りには肩を痛めていることを悟らせなかった。それどころか、バルトのヴァルキリーをバーストさせた上で、「絶対決勝に行く」と言ったバルトに対し、「楽しみにしている」と返した。しかし、シュウの「頑張れよ、バルト」というモノローグが入り、この回は終了する。

 

【ベイブレードバーストアニメ】乗り越えろ!相棒を信じて!! - YouTube

少なくとも2016年6月12日までは上記リンクからこの回の動画が見られるはずだ。

 

この回全体のテーマ

この回の全体のテーマとしては、シュウがバルトに寄せる信頼、シュウの周囲に対する気遣いや優しさと、それから、ベイバトルの本質が挙げられる。シュウの怪我とは関係ない部分もあるので、詳しくは書かない。

 

一人歩きする「ベイブレードで全治1ヶ月」

怪我の原因はベイブレードで肩に負担をかけすぎていたことによる疲労の蓄積であると推測できるが、トリガーとなったのは、ベイブレード自体ではなく、人間の衝突を回避したことである。ベイブレードが直接的原因とは言い難い。シュウの優しさと自分への厳しさが招いた悲劇であり、ベイブレードが引き起こしたものではないのだ。

 

ベイブレードはスポーツ

ベイブレードバーストにおいて、ベイブレードはスポーツである。1話の動画は少なくとも放送期間中はいつでも観られるようなので、プレイの様子を確認してほしい。

 

【ベイブレードバーストアニメ】「行こうぜ!相棒(ヴァルキリー)!!」第1話 - YouTube

 

大きなスタジアムを前に、体を大きく使ってシュートをする。筆者は『爆転シュート ベイブレード』世代であるが、自分がベイブレードで肩を痛めた記憶はない。それだけバースト世界のベイブレードは異質なのだ。バースト世界のベイブレードが怪我を伴うものであることは否定しない。だが、今回はベイブレードのプレイ中に偶発的に肩を捻ったのであって、ベイブレードのプレイが原因で肩を壊したわけではない。(『バースト』世界の)ベイブレードは危険だとネタにするのは、因果関係として不適切だ。

 

危ない玩具と危ない修行

このアニメの趣旨は危険な玩具をめぐる攻防ではない。

 

例えば、『MARVEL ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ』は、『ベイブレードバースト』と対をなす作品と言ってもよいだろう。『ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ』は昔懐かしの遊び〈メンコ〉をマーベルヒーローと融合させて進化したホビー玩具〈バチ魂バット〉の販促番組である。

 

marvel.disney.co.jp

 

トニー・スターク(アイアンマン)の協同者であるアカツキ博士は、刑務所代わりにヴィラン(怪人)を封印するディスク(バチ魂バットのアニメ内の呼称)を開発する。ところが、発表イベントをロキ率いるヴィラン軍団に襲撃され、ヒーローが次々とディスクに封印されてしまう。アカツキ博士の息子らイベントに招待されていた子ども達は、ディスクを操る能力を手にし、ヒーローとタッグを組んで悪に立ち向かう。


ベイブレードバーストがアニメ全体で熱く楽しい玩具の遊び方を提供しているのに対して、ディスクウォーズは最初から、ディスクはヒーローやヴィランを封印した危険なものであると定義している。『ベイブレードバースト』は熱血スポ根アニメであり、今のところ、大会に渦巻く悪の陰謀やベイブレードに秘められた秘密といった超常的要素は確認されていない。メンコで世界が終わるアニメとコマでみんなが笑顔になるアニメは明らかに別のベクトルのアニメであり、混同は避けるべきだろう。

 

話を戻すと、今回、シュウが怪我したのは、スポ根的特訓の影響である。ベイブレードが呪いや異常に高い性能を持っているのではなく、シュウの体に負荷がかかっていただけだ。それをベイブレードが危険だからとネタにするのは、的外れである。

 

大怪我を引き起こした要因

ここからは、肩を捻るだけで大怪我になった理由について考えていく。

管理者の不在

シュウには管理者がいないので、怪我をしやすい環境にあった。主人公・バルトの母は息子のベイブレードを遊びとみなしており、「ベイブレードの修行だよ」と言ってお手伝い(+体力作り)をさせたり、食卓で息子がベイブレードについて楽しそうに話しているのを聞いたりしている。母がいない場所でも、ベイクラブのメンバーと楽しくベイブレードをし、休日は大会に出場している。一方、シュウは小学生でありながら1人暮らしである。ベイクラブにも参加しておらず、孤独さが際立っている。子どもの体力づくりを管理する親の存在のありとなしで、怪我をする危険性も大きく変わる。

 

高次元の戦い

シュウはバルトにとって親友であり、憧れの存在である。知識も経験もないバルトがシュウのシュートを真似て、知識と経験のあるシュウがバルトの試合を解説するという垂直的な関係が出来上がっており、シュウが高次元の存在であることがわかる。プロ野球の選手と草野球の選手で想定しうる怪我の程度が違うのと同様に*2、ベイブレードで遊ぶ子どもとベイブレードに真剣に打ち込むシュウでは怪我の程度が異なるのだろう。アニメの作画上の演出でも怪我の程度が甚だしいことが示唆されており、「ちょっとベイブレードで遊んでいて」という感じではないことがわかる。

 

右肩に負担がかかるフォーム

シュウのフォームは右肩に負担をかけるものであったことが劇中で示唆されている。まず、問題の医者との面談シーンでは、右肩に負担がかかっていることをかなり直接的に指摘された。次に、バルトとのバトルのシーンで、肩の激痛からフォームの変更を強いられた。周りから新必殺シュートかと期待を持たれるが、いろいろ試しているんだと答えている。このシーンからわかることは、シュウの本心にとって一番良い選択は右肩に負担のかからないフォームへ修正することであるということだ。少々脱線してしまったが、フォームの変更を強いられるほど肩に負担がかかっていたのだとすれば、フォームも要因の一つといえよう。

 

 

 

まとめると、プロに近いベイブレード選手である紅シュウが、まともな管理者のいない状況で負担のかかるプレイや特訓をしていたというのが、ただ肩を捻っただけで大怪我になった原因である。ベイブレードという危険なスポーツが彼に怪我をさせたわけではない。

 

プリキュアが当然のごとく関係のない一般家庭に庇護を求めている中で、ひとりぼっちの紅シュウが誰にも助けを求めないことは、優しさというよりも、助けを求めることを知らない児童に対する構造的暴力かもしれない。それをネタにするのはあまりにも酷ではないだろうか。

 

beyblade.takaratomy.co.jp

 

www.beyblade.jp

*1:シュウはバルトの幼馴染でありながら、天才ブレーダーである。

*2:そもそもプロの選手ともなれば、ドクター(=管理者)などの指導のもと、怪我のリスクを抑える練習内容を選んでいるとは思うが。

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