ホビーアニメを観ていたらいつの間にかアホになっていた

現在放送中の子ども向け番組を中心に、アニメや特撮ドラマについて書いていく。毎話「感想」を書くわけではなく、気になった話数や一般的な議論に関する記事を書く予定だ。

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『デジモンユニバースアプリモンスターズ』第12話 書き換えられた戸籍情報

自治体とクラウド

ある日突然、この世から突然家族の存在が抹消されたら、あなたはどう思うだろうか? 『アプモン』第12話ではそのような目に遭った少年の過去が描かれた。唯一の肉親である弟を奪われた少年の動向も気になるが、この記事では戸籍が書き換えられたということに注目したい。


私自身は今回のアニメを見て、戸籍を書き換えることが可能だということへの驚きや、スーパーハッカーに関するご都合主義展開への嘲笑を含め、いろいろな想いを巡らせた。だが、実際に調べてみると、戸籍情報への不正アクセスが現在あるいは近い未来に起こりうることだとわかった。現在、自治体が抱える情報は自治体内で厳重に保管するわけではなく、クラウドで管理するようになってきているそうだ。そのようなことを前提に、アニメの内容を振り返ってみよう。

 

 

第12話「サクシモン 超アプリンクで 打ち破れ!」

全てのアプモンチップを渡すようレイに迫られたハルは、要求を拒んだ。はじめについて知りたいとハルが言うと、レイはこれまでのいきさつを語り始めた。


母親が死に、親戚にも見放されたレイとはじめは、二人だけで暮らし始める。そんなある日、レイは”Leviathan”から謎のメッセージを受け取り、ゴールを目指して暗号を解き始めた。ゴールとして示された場所にやってきたレイとはじめだったが、はじめは突如として消滅してしまう。そして、ついにはじめがネットの海に囚われていることを突き止めたのだという。


一緒にはじめを救いたいハルだが、レイはチップを全て渡すよう要求する。しかし、口論の最中、レイを邪魔だと思うサクシモンによって別の場所にワープさせられる。エリと寅次郎はレイが消えたことを喜び、帰ろうとした。だが、ハルはレイの想いに賛同し、レイを助けに行こうとする。


「物語では、正しい気持ちを持つ主人公は必ず最後に勝つんだ」


一方、罠に嵌ったレイとレイドラモンは窮地に立たされていた。レイドラモンはチップに戻り、レイは磔にされた。もはや絶体絶命と思われたその時、3人と3体の超アプモンが現れた。勝ち目のない相手に想いだけで立ち向かおうとするハルを、レイは非難した。


「想いがなければ勝てない」


自分も想いがあって戦っているのだと気づいたレイは、ハルにレイドラモンの超アプモンチップを渡し、ドガッチモンとアプリンクさせた。超アプモン同士のアプリンクはサクシモンのフィールドを破壊し、逃げたサクシモンを追尾した。超ハック能力で全ての情報を引き出そうとしたが、リヴァイアサンにより阻止された。結果としてサクシモンを倒したハルは、ドガッチモンの超アプモンチップをアクティブ化させることに成功する。レイはメールモンを含む3枚のセブンコードアプモンのチップをハルに託し、去っていった。ハルはリヴァイアサンを倒し、はじめを救うことを決意するのだった。

 

外部からの遮断は「ザル」

情報を外部から遮断したからといって、安全性が担保されるわけではない。そもそも今回のアニメでは、少年ハッカーが戸籍システムをハッキングし、2人だけで暮らせるよう書き換えた(おそらく、保護者をでっち上げたのだろう)ようだ。これを見て私が第一に感じたことは、インターネット上に戸籍のデータを置いておくなんて愚かだということなのだが、実はこの認識には誤りがあるらしい。つまり、インターネットから隔離しても、ハッキングからは逃れられないのだ。

 

鍵が外れる可能性

まず第一に、ハッカーはネットに上げられていない情報も盗み出すことができる。例えば、特定の情報やネットワークに鍵(パスワード)がかかっていた場合、一見すれば安全に思われる。だが、残念ながらパスワードさえ解読あるいは窃盗できれば、その情報・ネットワークは誰にでも閲覧できてしまう*1。閉鎖されていないインターネット上の情報・コンピュータに比べてセキュリティ意識が甘いため、かえってサイバー攻撃の被害に遭いやすい。このように、「厳重に」鍵をかけた情報であっても、盗まれる可能性に変わりはないのだ。

 

外部との接続の可能性

もちろん、仮にインターネットから「完全に」遮断していたとしても、OSのアップデートや情報の移動などで外部との接続は発生しうる*2。たしかにインターネットにさえ接続しなければ、守りが磐石かと思うかもしれない。でも、そういった状況でこそセキュリティ対策をしなければならない。

 

部屋に鍵はかけなくてもいい?

例えば、うちのマンションのエントランスには指紋認証があるから、部屋に鍵をかけなくても良い、と思う人はいないだろう。建物内への泥棒の侵入さえ許してしまえば、自分の部屋はザルだからだ。どんなに外見がしっかりしていても、中身が穴だらけなら意味がない。部屋に鍵があるからといって安心しないことが重要だ。

 

情報はデータセンターに

さて、これは情報セキュリティの話なので、話を戻そう。情報を外部から遮断していたとしても、侵入・窃盗のチャンスはいくらでもある。だから、敢えて情報をネットワークに載せ、専門の業者によって厳重に管理された場所(データセンター)に保管しようというのが、近年の取り組みだそうだ*3。もちろん、クラウドサービスの利用者側のセキュリティに対する意識は引き続き求められるが、エントランスに鍵があるから自分の部屋には鍵をかけないというような愚かしい行為は無くなるだろう。

 

人間には心がある

随分話が脱線したが、天才ハッカー・レイがハックした戸籍情報はおそらくザル管理だったわけではない。ほんの小さな穴を突いて侵入されたのだ。そして、はじめの戸籍情報が消失したあの流れには唯一の家族が消され、大人にも頼れないという絶望的な状況を演出する意図があったのだと思う。


なぜレイとはじめが選ばれたのかはまだわからない。でも今回、ハルが人間にはハッキングに勝る力(誰かを救いたいという心、強い想い)があることを教えてくれた。レイには、人工知能にはない人間の力を使ってリヴァイアサンに立ち向かってほしい。

*1:大企業・中堅企業の情報システムのセキュリティ対策〜脅威と対策〜

パスワードを盗み出す手段、あるいは鍵をすり抜ける手段はいくらでもあるらしい。中には、コンピューターから発せられるノイズを使ってパスワードを盗み出すという手段(コンピューター自体のネット接続は不要)もあるようだ。

冷却ファンのノイズによりデータを盗み出すマルウェア「ファンズミッター」 | マルウェア情報局

*2:遮断されたネットワーク上・コンピュータ上で情報を厳格に管理するためには、情報の持ち出しを記録する必要がある。だが、記録をつけるのには限界があるとの指摘もある。いくらインターネットに接続できなくても、物理的に情報が持ち出せたなら意味がない。

どんなサイバー攻撃よりも危険なのは組織に潜む「隠ぺい体質」|齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機|ダイヤモンド・オンライン

*3:震災で一部のデータが消失したこともクラウド化に踏み切る大きな要因のようだ。

東日本大震災からの復興に向けての意見(2) : 富士通総研

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