ホビーアニメを観ていたらいつの間にかアホになっていた

現在放送中の子ども向け番組を中心に、アニメや特撮ドラマについて書いていく。毎話「感想」を書くわけではなく、気になった話数や一般的な議論に関する記事を書く予定だ。(2017/7/13 Update: 2つあった関連記事欄を1つに収束。)

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『バンドリ!』よ、お前はもっと人気になれるフレンズだったはずだ!

バンドリ!』がどんなフレンズなのか考える

今期の深夜アニメに、市場予測的にはかなりの確率で覇権になったはずなのに、なぜか埋没してしまったコンテンツがある。『BanG Dream!(バンドリ!)』だ。『バンドリ!』は高校に入学した少女が、幼少期に星を見たときの感動を伝えるためにバンドを始めるという物語。日常をなんとなく、つまらなく過ごしている少女たちを取り込み、主人公の少女はついにバンドを立ち上げる。明らかに力を入れているのに、話題は『けものフレンズ』に持って行かれている。関連会社の一部が同じであるため、「潰す」相手ではなさそうだが、勢いが負けているのは明らかだろう。

 

g.co

 

売れる要素しかなさそうなバンドリは、残念なことに、バズるのが得意じゃないフレンズになってしまった。大丈夫、フレンズによって得意なこと違うから。

 

 

 

あらすじ

主人公の戸山香澄は妹の通う中高一貫校に魅力を感じ、同じ学園の高等部に入学する。自己紹介で、幼い頃に「星の鼓動」を聞き、「キラキラドキドキ」したことをクラスに話した。キラキラドキドキできる部活を探していた香澄は、とある出来事からギターを手にし、ライブハウスでのライブ鑑賞を初体験する。「Glitter*Green」のライブに感銘を受け、香澄はバンドをやろうと決意した。ギターの弾き方も音楽業界のいろはも知らない少女は、周囲の人物に助けられながら、デビューへのステップを歩んでいく。

 

ロックとの乖離

ジャンル的にはアイドルアニメ

まずは、バンドリが帯びている違和感について考えていく。バンドリは、基本的にはバンドを全面に押し出している。だが、活動を通して心を開いていく、ハンドサインではなくサイリウムを使用するなど、アイドルアニメの気がある。ギターを始めた主人公がジャカジャカ弾きから入らない、和音のような楽典を前提とした指導が入るなど、「ロックバンド」(あるいはその結成を勧めること)を前提としたアニメとは違う印象を受ける。

 

バンドにkawaiiを求める時代ではない

製作陣とバンドファン層の間に隔たりがあるとすれば、届けたいメッセージと受け取りたいメッセージの違いによるところが大きい。筆者は20代前半だが、ロックバンドにハマっていた中高生の頃は、かっこいい・歌詞に共感できる・ノレるということがバンドを好きな理由だった。厨二病を卒業するにつれて、だんだんノレる方向にシフトしていった気がするが、大まかな方向性としては変わらなかった。


しかし、バンドリは、「可愛い」を前面に押し出してきた。現在のバンド事情には全くもって詳しくないが、バンドに可愛いを求める風潮が強いとは思えない。アイドルバンドが大流行しているというニュースを聞かないからだ。つまり、今はバンドに「可愛い」を求める時代ではないのだ。もし女性アイドルバンドに需要を見込んでこうしたIPを立ち上げたのであれば、誤算と言われても仕方ないだろう。

 

ショバロは?

「じゃあ、SHOW BY ROCK!!(通称・ショバロ)はなんだったのか」という話になるだろうか? でも、ショバロはジェンダー中立的なコンテンツであり、女性バンドだけが登場するバンドリとは大きく異なる。かっこいいと可愛いが両方押し出されており、可愛い系のバンドでもかっこいい系の曲をきちんと作っている。


あのアニメではキャストが3次元でもバンドをするというような2.5次元性はなかった。だが、実在するアーティストを2次元化したキャラクターを(主にゲームに)登場させることで、逆のアプローチからの2.5次元化に成功していた。漫画・アニメよりもゲームが先行しているため、バンドリとの比較には適さないが、ショバロは需要を幅広く取り込んでヒットしたものと考えられる。

 

ハラハラバクバクな失敗ステージ

バンドリが評価されない理由のひとつは、主人公・戸山香澄の行動に視聴者がついていけないことにあるとみて間違いない。平たく言えば、香澄は人望があって周りを引っ張っていくというタイプではなく、人望がないのに周りを引っ張っていこうとするタイプである。そのため、視聴者をハラハラバクバクさせるような失敗もしてしまう。


例えば、第3話はトラウマ回と呼ばれている。クラスメイト・りみ(後のBass)の姉が所属するバンドが悪天候の影響でライブハウスに到着しておらず、楽器も弾けない主人公が勝手にステージに上がり込んで時間稼ぎをするという回である。その際に歌った曲がきらきら星である。


このとき、ネットは「きらきら星がトラウマになった」という意見で溢れかえっていた。この回を見た視聴者は、後輩や同僚が失敗したときの様子を思い浮かべたり、自分の幼少期の失敗を重ねたりしたことだろう。単純に人と違う感覚を持っていると解釈できる場面も多々あるが、視聴者の理解を超える行動をすることもあり、視聴に耐えられない人もいると思われる。

 

バンドリの評価できる部分

2.5次元展開によるリアリティの担保

このアニメにあって、他のバンドアニメにはない持ち味といえば、キャストが楽器を演奏してライブを行うことだろう。いわば、若気の至りでバンドを始めた高校生を3次元でも見ることができるのだ。アイドル声優を推したい事務所側としては、声優にも注目してもらえておいしいはずである。


これまで劇中でバンドが前面に押し出されていた作品で、キャストがそのままバンドもやっていたということはあまり聞いたことがない。あったとしても、吹き替えによる「歌唱担当」に過ぎないだろう。あるいはキャストが自分のバンドに所属しているだけで、2.5次元活動はしていないというものもあると思われる。


こうした事情を考慮すれば、劇中バンドがアイドル路線になってしまうことも致し方ないと言えるだろう。アイドル声優の土壌で育ったファンは、ロックの土壌にはなかなか馴染めないはずだ。これは私の個人的な体験だが、ロックバンドのライブを何回か経験した後にロック系のアイドルのライブに行ったところ、毛色が違って困惑したことがある。サイリウムと指という大きな文化の違いの隔たりは、客が埋めるよりも作る側が歩み寄った方が商売としては正しい。アイドル路線のバンドアニメは、アイドル声優の売り方として、何ひとつ問題がないというわけだ。

 

明確な目的の提示「絶対ここでライブします!」

バンドリの主人公の特徴は、圧倒的な技量のなさにある。通常であれば技量がないとライブが放送できず、CDが販促できない。しかし、このアニメの場合、放映前にバンドが始まっているので初心者がバンドを始めるストーリーになっても問題ない。むしろ、アニメとしてはその方が好都合である。完全無欠の天才がバンド界で頂点に立つ物語など、大人は誰も見たくない。ある程度需要があったとしても、よほどの爽快感がないと成立しない。ギターの腕が高いにもかかわらずコミュニケーション能力が著しく低いなど、短所を設けることで初めてキャラに魅力が出てくる。そして、成長できる。


今回の戸山香澄の場合は、感動を伝えたいにもかかわらず手段がない(まさに「何もない」状態)というところから始まり、手段やそれを実現するための仲間を見つけ、目的のために仲間とともにステップアップしていく。流れを大まかに表すと、以下のようになる。

 

  1. 目標を立てる
  2. 手段を探す
  3. 具体的な目標を立てる(「絶対ここでライブします!」)
  4. ギターが弾けるようになる
  5. バンドを結成する
  6. 文化祭でライブをする
  7. 「SPACE」のオーディションに合格する
  8. 「SPACE」でライブをする
  9. 感動を伝える


こうしたわかりやすい「クエスト」があることで、主人公の成長が手に取るようにわかる。突拍子もなくライブが始まり、そのライブから収穫が得られないような普通のアイドルアニメとは違うのだ。たしかに、見方によっては「おつかい」をこなしているだけかもしれないが、明確な目標がある方が安心して観られるはずだ。

 

バズるのが得意なフレンズになるために

 

ここまで見てきた通り、バンドリは登場人物の成長物語をそれを演じるアイドル声優の成長物語と重ね合わせた2.5次元コンテンツになっている。しかし、アイドルという言葉を隠すことでバンドが好きな視聴者に違和感を生み、主人公のカリスマ性のなさが視聴者のトラウマを呼び起こしている。だが、バンドアイドルアニメであること、悩みや問題を抱える少女たちがそれを乗り越えて成長していく物語であることをもう少し広めていけば、もっといいフレンズになれるはずだ。

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