ホビーアニメを観ていたらいつの間にかアホになっていた

現在放送中の子ども向け番組を中心に、アニメや特撮ドラマについて書いていく。毎話「感想」を書くわけではなく、気になった話数や一般的な議論に関する記事を書く予定だ。

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トップになったはずのアイドルに迫り来る強敵! 『アイカツスターズ!星のツバサ編』

前作では表現できなかった王道のインフレ展開

『アイカツスターズ!』が放送開始して1年が経ち、新シリーズ『星のツバサ編』が始まった。アイカツシリーズにこうした大々的な副題がつくのは初めてだ。『アイカツ!』では映像ソフトなどで3-4年目を『あかりジェネレーション』と呼んでいるが、基本的に(10月に始まってその翌年の)西暦年をとって「2015シリーズ」などと呼んでいた。


その星のツバサ編では、船の上に作られたライバル校「ヴィーナスアーク」が来航し、主人公たちの前に立ちはだかる。主人公たちが「四ツ星学園」のトップアイドル「S4」になった矢先のことで、主人公たちや四ツ星学園には衝撃が走った。やっとの思いで「トップアイドル」になったのに、自分たちが大海を知らない井の中の蛙であることに気づかされたからだ。

 

 

 

『アイカツ!』2年目との類似性と差異

この展開は、『アイカツ!』の2年目をなぞっている。『アイカツ!』2年目では、主人公とトップアイドル「スターライトクイーン」が去った「スターライト学園」の前に、ライバル校「ドリームアカデミー」が立ちはだかる。

 

スターライト学園は対決ライブを申し込まれるが、新作の「星座ドレス」と「星座アピール」の前に為す術もない。そんな時、海外に武者修行に出ていた主人公・星宮いちごが帰還した。いちごには1年の*1ブランクがあったが、拝借した下位の星座ドレスを使用することで、辛うじて勝負を引き分けに持ち込んだ。

 

2つのドレス

この星座ドレスは名前が似ているが、星のツバサとは異なる。星座ドレスは黄道十二宮をモチーフにしたドレスのことで、上位種である星座プレミアムドレスには羽がついている。星座ドレスをまとったアイドルは観客のボルテージを最高潮にすることで、星座アピールを出すことができる。

 

一方の星のツバサは、惑星をモチーフにしたドレスのことで、羽こそついているが星座アピールのような制限事項は今のところ明らかになっていない。代わりに、アイカツシステムに選ばれた者のみが手にできることになっている。

 

2つの学校

そもそも、ドリームアカデミーとヴィーナスアークの立ち位置は全然違う。ドリームアカデミーは科学に基づいた合理的なカリキュラムを実施していて、体力重視(いわゆるスポ根)のスターライト学園のアンチテーゼになっている*2。ただし、スターライト学園を潰すことは考えておらず、結局仲良くやっている。

 

一方、ヴィーナスアークは世界中のトップアイドルを集めることを目標にしており、四ツ星学園の白鳥ひめと主人公・虹野ゆめを引き抜こうとしている。そのために、ヴィーナスアークは圧倒的な力でアイドル界を搔きまわし、その魅力を見せつける。スターズと無印の2年目は似ているようで全然違うのだ。

 

今回は、アイカツから学んだように見えるこの展開について考えていきたい。

 

星のツバサ編に重みを与えている要素

星のツバサ編のストーリーに重みを加えている要素は色々あるが、大きく分けて3つ挙げたい。1つ目はゆめの幼馴染・七倉小春がヴィーナスアークにいること、2つ目はアイカツシステムがアイドルを選ぶこと、3つ目はスカウトという名の引き抜きがあることだ。この3つの要素が星のツバサ編を面白くしている。

 

七倉小春がヴィーナスアークに

イタリアに渡ったはずの主人公の幼馴染がヴィーナスアークの生徒になっている。七倉小春は主人公の幼馴染で、アイドルに憧れ、ゆめの誘いで四ツ星学園に入学した。しかし、父親の転勤により、志半ばで学園を去ることになる。

 

第51話でゆめたちがヴィーナスアークに乗船したとき、香澄真昼は覚えのある香水の匂いを嗅ぎ*3、桜庭ローラは聞き覚えのある声を聞く。2話の終わりに小春がヴィーナスアークのオーナーを出迎えることで、視聴者側には小春がヴィーナスアークにいることが明かされる。


小春は1年目の終盤に電話という形で再登場しており、そのシーンでは私服の状態で船の甲板に出ていた。自信が出たらゆめの前に再び姿を表すというが、ゆめは幼馴染が敵の仲間という厳しい現実を突きつけられたら、どうするだろうか? どのような形で小春がヴィーナスアークにいることが明かされるのか、それを知ったゆめはどうするのかに注目が集まる。

 

アイカツシステムの超自然的能力

アイカツシステムが人知を超えた能力を持っているという設定はスターズの1年目から引き継がれている。ゆめとひめ、そして、諸星学園長の姉・諸星ホタルはアイカツシステムに過剰に適合しており、それが原因で身体に悪影響を及ぼすレベルの高パフォーマンスを発揮してしまうことがある。

 

これをひめは「アイカツシステムに選ばれた」と表現している。この障害を乗り越えることで、ゆめは平時から「能力」発揮時よりも高いパフォーマンスをすることができるようになった。


星のツバサ編では、アイカツシステムに認められると星のツバサが手に入るという設定が登場する。スターズ1年目ではプレミアムドレスはS4のみが着用でき、自身とブランドスタッフがデザインした一点もの。それ以外の下級ドレスはひな形(テンプレート)から生徒が自由にカスタマイズしたものだった*4。しかし、ここで自由に作れないドレスが登場する。


そもそも、無印ではドレスは全てデザイナーがデザインしたものであり、トップデザイナーが努力や功績を認めたアイドルでなければ、プレミアムドレスを着ることができなかった。そのため、一義的には無印の設定に戻ったとも言える。

 

だが、プレミアムドレスを着る条件が自分のブランドを持つことであるため、無印よりも大変だ*5。逆に、アイカツシステムとは絆や信頼関係が結べないため、デザイナーとアイドルの信頼関係を描けないという意味では無印に劣る面があるかもしれない。

 

引き抜きによる危機感の強調

ヴィーナスアークのアイドルでアイドル海賊を名乗るエルザ・フォルテは、白鳥ひめと虹野ゆめをヴィーナスアークに引き入れるため、第1話で星のツバサを使用する。

 

エルザはゆめを、あくまでひめを引き込むためのエサとしか思っていなかったが、2話で認識を改めるそぶりを見せている。(S4になり)学園を守る立場のゆめが敵の魅力に取り憑かれ、学園の安定にもゆめ本人の人間関係にも揺らぎが生じている。果たして、ゆめが下す決断は……?

 

背徳感

先ほどからちょくちょく名前が挙がっている白鳥ひめ。彼女はゆめが憧れるトップアイドルだ。ひめに憧れて、ひめのいる四ツ星学園に入った*6。でも、白鳥ひめこそがゆめの憧れる唯一無二のアイドルのはずなのに、ゆめはエルザの魅力に惹きつけられている。

 

ゆめを「奪おう」とするエルザの前に、ゆめの親友である桜庭ローラが立ちはだかる。だが、当のゆめはエルザに奪われる妄想をしていた。なんだこの昼ドラは!? ゆめは背徳感に苛まれながら、四ツ星を抜けてヴィーナスアークに入学してしまうのか……?

 

敵対する学校への誘い

もちろん、学園長の側もトップアイドルを2人も失うわけにはいかないので、頭を抱えている。無印ではアイカツ界が盛り上がるとあんなに喜んでいたのに!

 

無印では学園間の交流が活発に行われていて、交換留学という形で他校の生徒が学びにも来ていた。スターライト学園とドリームアカデミーの合同の学園祭もあり、違う学校同士でも志は同じであるという趣旨の歌まで存在する。なんということだ。視聴者も頭を抱えたくなる。


基本的にスターズに出てくる他校はライバルであって友達ではない。強いて言えば、ちょっと弱い可愛い奴である。一方、四ツ星学園は城下町では名が知れ渡っていて、デパートでライブをさせてもらえるなど顔が利く。割と内向的だ。

 

しかも、ゆめは白鳥ひめにしか興味がなくて、男子部もM4も知らずに四ツ星学園に入っている蛙オブ蛙である。そんなゆめは県外の甲子園常連校に引き抜かれて、県内大会の強豪校を去ろうとしている。こう考えればわかりやすいだろうか? (ゆめは小学校時代、バレーボールをやっていた。)


「私もあんなプレーができるようになりたい!」


しかし、ゆめは県内大会で見たひめのプレーを見て四ツ星学園に入ったのであって、単に野球が上手くなって甲子園に出たいから入ったのではない。しかも、今や四ツ星学園のエースである。抜けられるはずがないのだ。

 

それなのに、エルザ・フォルテという強肩を知ってしまったので、より良い環境に移らざるを得ない。でも、私はひめ先輩の意志を受け継いでキャプテンになり後輩たちを導くと決めた。ああああああああああ……!

 

『アイカツ!』2年目のふわふわ感

『アイカツ!』2年目は、2年目のジンクスを乗り越えられなかった印象がある。売上自体は伸びたのだが、相次ぐ引き分けや他者への過剰な肯定など甘すぎる展開があった。言い換えれば、相手の勝利を無条件で賞賛する文化だ。

 

星座をモチーフにしたドレスのおかげで売り上げは伸びたが、果たして争いのない優しい世界は物語に深みを持たせることができたのか疑問が残る。今は図書室でのライトノベルの貸し出しが問題になるなど、子どもの舌も肥えてきている。

 

「視聴者の女の子は争いを好まないので、登場人物は仲良くさせた方がいい」というノウハウに囚われて、聖人君子しかいない絵本のような世界を作っていては、子どもに飽きられてしまうだろう。

 

反省を活かし続けられるか

さて、アイカツスターズの2年目はというと、早乙女あこがブランドのミューズの座を奪われて悔しがる、桜庭ローラがエルザの前に立ちはだかって通称・彼氏面をするなど、負の感情たっぷりでやっている。

 

「引き分け!エルザさんはすごいよ!わーい!」と言うようにはいかない。アイカツ2年目を反面教師にして、似たような構図でも全く違う話になっている。優しくない世界で、引き抜きに対してゆめが下す決断が注目される。

 

正常なインフレ

副題に出した「インフレ」は登場人物がどんどん強くなっていき、当初の敵とは比べものにならなくなると言う意味の言葉だ。無印ではどうしても「みんなすごい」になってしまい、スターライトクイーンや「アイカツランキング」というものがあったにもかかわらず、強弱の差がつきづらかった。

 

だが、スターズではちゃんと相手を否定してくれるので、力関係を示すことができる。今後はプレミアムドレスが湯水のように出てくるようだが、アイカツシステムに選ばれた強者とそうでない人の差、選ばれし者同士の力関係をどう示すかがスタッフの腕の見せ所になるだろう。

 

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(投稿時間はアイカツスターズ!星のツバサ編3話放送後だが、執筆は放送前。)

 

(2017/8/29 改行を調整。一部の文言を変更したほか、小見出しも追加している。) 

*1:時代設定は1年目の最終回から1年後。

*2:ちなみに、トップアイドルの音城セイラと姫里マリアはスカウトによる入学である。セイラはロックなアイドルを目指してスターライト学園を受験したが、不合格だった。

*3:学園を離れる前、姉の香澄夜空が小春にプレゼントしたもの。夜空が使っているのと同じ香水である。

*4:アイカツの成果によって支給されるグレードアップグリッターというアイテムがないと、強いドレスは作れない。

*5:無印の場合、同じブランドを好む複数のアイドルがプレミアムドレスを与えられる展開や、すでにミューズがいるブランドのプレミアムドレスをもらう展開もあったので、実は無印より条件が厳しい。今回、星のツバサの1話目では、S4の早乙女あこが内定していた新作ブランドのミューズをヴィーナスアークの花園きららに奪われるという展開があったので、簡単にはいかない。ゆめもベリーパルフェという新ブランドを立ち上げたが、プレミアムドレスの案が浮かんでいない。

*6:ひめは幼少期から芸能活動をしており、1年次にS4になった。

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