ホビーアニメを観ていたらいつの間にかアホになっていた

現在放送中の子ども向け番組を中心に、アニメや特撮ドラマについて書いていく。毎話「感想」を書くわけではなく、気になった話数や一般的な議論に関する記事を書く予定だ。(2017/7/13 Update: 2つあった関連記事欄を1つに収束。)

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映画『パワーレンジャー』:「スーパー戦隊」老害に贈るニューヒーロー【未鑑賞者向け】

「これだから今の戦隊は」と愚痴る人へ

どの長期ジャンルにも懐古厨は存在する。「昔はああだったのに、売れた途端にこうだ」「最近の◯◯には昔のような××がない」新作のリリースのたびにそんな声が聞こえてくる。スーパー戦隊シリーズをはじめとする特撮ドラマでも、ヒーローの顔がダサいとか、昔の玩具はうるさくなかった*1だの、ネガティブな意見がネットに流れる。


玩具も買わない世代からそういう声が聞こえる場合もあり、そのような批判は売り上げに貢献しないチープトークと見なされがちだ。そんな中、老害の願望を叶えてくれる作品が登場した。それが映画『パワーレンジャー』である。

 

※この記事は、作品の中で起こることを具体的に・直接的には書いてはいないが、人によってはネタバレだと感じる場合がある。そういうのを嫌う場合は、戻るボタンや閉じるボタンで帰ってほしい。

 

 

 

現代に再誕するニューヒーロー

パワーレンジャーが描くのは、ニューヒーローの誕生だ。商業的な都合で表現が制約されていく中、今のスーパー戦隊・テレビ版パワーレンジャーではなかなか扱えない題材を描いている。いつの間にかおもちゃ(最近ではコレクションアイテム)ありき、イケメン・美人俳優ありきの販促のための番組になっていたスーパー戦隊が、今生まれ変わったのだ。

 

ヒーロー誕生の過程

パワーレンジャーでは、ヒーローが誕生するまでの過程を丁寧に描く。最近のスーパー戦隊では、第1話に変身アイテムと合体ロボットの販促をしなければならない。そのため、後から満を持して合体したり、変身能力を手にするために苦悩したりする展開が描かれづらい。


現在放送中の『宇宙戦隊キュウレンジャー』も、9人という人数(ロボットは5体合体)を活かして、後からメンバーが増えていく形式になってはいる。だが、やっぱり第1話では先に戦隊があって、それにレッドとブルーが変身能力を得て加入する形になっている。おもちゃを売る都合上、第1話で変身せず、ロボットが活躍しないということはあってはならないようだ。


でも、映画『パワーレンジャー』の世界ではヒーローの存在はおろか、悪の存在すら明らかになっていない。その世界に生きる主人公たちが突如、能力に目覚め、ヒーローの器として認められる。お約束もクソもない世界で、主人公たちは心も体もヒーローに変わっていく。「なんとかブレス」を使えば自動的に強いヒーローになれる世界ではなく、文字通りヒーローに変身するまでの道のりを丁寧に描いてくれている。真のヒーローの誕生をとくとご覧あれ。

 

 

人間としての自立

映画『パワーレンジャー』は、ティーンエイジャーの等身大の悩みをぶちまけている。大人に将来を決めつけられ、友人関係で悩み、大人の都合で居場所を奪われる。そんな若者たちが全ての人から必要とされるヒーローになっていく。


最近のヒーローは、ヒーローとしての戦いと人間としての悩みを絡めがちだ。単なる人間関係の悩みかと思ったら怪人やヒーローが関わっていたということもよくある。少しネタバレになってしまうが、前年の『動物戦隊ジュウオウジャー』も、単なる家族との不仲を描いていると思ったら、実はその背景にヒーローの存在があった。


今回の映画では、ヒーローである以前に人間、しかも人間として完全ではない10代という構図を徹底していて、悩み自体が戦いの原動力になる展開はごく一部だけだ。「父の厳しさの背景にはヒーローとしての過去があった」というようなヒーローありきの展開はない。逆に、専ら戦士として生きた古代のヒーローたちの過去も垣間見えて、現代のヒーローの等身大の姿と対比されている。

 

醜い存在としてのヒーロー

今回の映画の主題は、どんなに弱い存在でもヒーローになれるということである。様々な事情を抱えて補習クラスに通う若者たちが、周囲の人間からの疎外を乗り越えて団結し、1つのグループになる。特撮が若手俳優の登竜門となった上、放送コードの厳しい現代では、いじめなどのティーンエイジャーの暗い部分は描きづらくなっている。だから、前述のように人間の悩みを戦いに絡めて描くようになっているのだと思う。


さて、ヒーローがかっこよくなければならない現代、弱い立場にあるヒーローはなかなかにウケが悪い。よっぽどのギャグを挟むか、戦士としては強い設定にしないと、子どもには支持されないはずだ。今はむしろ、忍者やレジスタンスなど特定のジョブに就いているヒーローも少なくない。


もちろん、職業という枠の中で弱さを描いてはいるのだが、今弱い立場(いじめや自己実現の悩みなど)にある人がヒーローである(になる)というようなケースはなかなか見ない。あらゆる意味で強いヒーローが求められているのだ。だから、悩み多きティーンエイジャーという立派でもかっこよくもない「職業」を描いている映画『パワーレンジャー』は新鮮だった。

 

本当に老害

このように、映画『パワーレンジャー』は現代のお約束まみれのスーパー戦隊ではなくなっている。今の戦隊に不満がある人、販促ありきのチープなストーリーに辟易している人ほど、観てほしい作品だ。


でも、今この記事に100%頷いている人は、多分最近のスーパー戦隊仮面ライダーをよく観ていないと思う。東映特撮ファンクラブ(2017年7月時点で1ヶ月無料キャンペーン中)やAmazonプライムなどで観ることをお勧めする。

*1:最近の特撮ヒーローの玩具は操作時に歌やラップが流れるのがトレンドになっていて、声が入っていなかった頃やクールな音声が流れていた頃のファンにとっては拒否感があるようだ。もちろん、彼らは大人になってしまったため、恥ずかしいというのもあるだろう。

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