ホビーアニメを観ていたらいつの間にかアホになっていた

現在放送中の子ども向け番組を中心に、アニメや特撮ドラマについて書いていく。毎話「感想」を書くわけではなく、気になった話数や一般的な議論に関する記事を書く予定だ。

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プリリズとキンプリ:ユーゴスラビア化するコミケジャンル分け問題

スピンオフが生み出す複雑な問題

国内最大級の同人誌即売会「コミックマーケット92」にて、プリティーリズムとKING OF PRISMがジャンル分けで分断されていることが話題になっている。

2つはもともと同じシリーズの作品だが、その特殊な事情によって分断されてしまったようだ。

 

www.comiket.co.jp

プリティーリズムとKING OF PRISMは両方とも2日目だが、プリティーリズム(キンプリ除く)とKING OF PRISM by PrettyRhythmに分かれてしまっている。


詳しく書くと複雑になってしまうが、簡潔にいうと、

  • 女児向けアニメから成人女性向けアニメに変わったという特殊な背景がある。(公式は元々、対象の性別を規定しないファミリー向けと認識している。)
  • アニメシリーズ当初から相手役の男子キャラクターが出ていたため、GL/NL/BL*1が全シリーズで成立しうる。
  • そのために、ジャンル分けがかなりセンシティブになっている。

というのが、今回取り上げたい問題である。

 

ジャンルの説明(知っている人は読み飛ばし可)

プリティーリズムとは(知らない人向け)

コミケの話題から来た方には作品のことがわからない人もいると思うので、手短に説明する。

 

『プリティーリズム』は2010年にアーケードゲームが始まり、2011年から2014年までテレビアニメが放送された女児向けの作品だ*2

スケートとダンスとファッションを組み合わせたエンターテインメントである「プリズムショー」に取り組む少女たちの様子を描く。


その中では男子キャラクターが恋人役や脇役で登場していた。

だが、脇役だった男子キャラクターの扱いは次第に大きくなり、アニメ第3作の『プリティーリズム・レインボーライブ』ではついに、男子キャラにソロ曲とCGライブが与えられた*3

最終回でユニットを結成するなど、現在ほどではないが優遇されていた。

 

KING OF PRISMとは(知らない人向け)

『レインボーライブ』の男子キャラの活躍を描くスピンオフ作品。

2016年の映画『KING OF PRISM by PrettyRhythm』が初出である。

最初の映画は60分に満たなかったが、10名を超える新キャラクターが登場し、それぞれについて設定が練られた。


「プリティーリズム」は元々タカラトミーアーツの版権であり、後継作の『プリパラ』も放送中だったためか、女子キャラクターの露出は極力抑えられた。

設定や画面の隅に女子キャラの存在はあったが、基本的にはもっぱら男子の活躍を描いている。


しかし、KING OF PRISM(以下、キンプリ)から入ってプリリズを観た人も多く、女子キャラの今後を観たいという声が高まっていた。

その結果、続編の『KING OF PRISM -PRIDE the HERO-』では、元のキャストが総出演し、女子キャラが登場した。

 

明確に男女間の恋愛を描くシーンもあり、男子になったからBLというわけではなかった。

新しく女子のモブキャラも登場しており、すでに二次創作が行われているようだ。

本当はこれ以上の意義があるが、プリリズを見ていない人もいるかもしれないので言及を控えたい。

 

性別の混在と作品の交差

上記で説明した通り、プリリズおよびキンプリはGL・NL・BLが混在し、キャラクター自体も作品の枠を超越している。

1作目・オーロラドリームと2作目・ディアマイフューチャーは続き物の1セットで、基本的に全キャラクターが続投している。


もちろん、3作目・レインボーライブと4作目・KING OF PRISMでも続投があり、作品ごとに分けることは難しい。

いずれの作品でもGL・NL・BLが成立しうるため、地雷を避けるためのゾーニングにも限界がある。

この状況が他ジャンルにはなかなかない障害を生んでいる。それは以下の通りだ。

 

  • いずれかの作品を観ていないことが許容されている一方で、全作を観ていることが前提の創作もある。
  • 男子が地雷の人と女子が地雷の人と雑食の人が混在している。
  • レインボーライブとキンプリは別ジャンル扱いだが、キャラが続投していて世界観が同じである以上、切り離せない。

 

全部観ていない人VS全部観ている人

まず、一部のシリーズを観ていないファンが一定数いることによって起こる問題がある。

 

通常のジャンルならば、観ていない作品があると「にわか」認定される。

しかし、プリリズにおいては、あまりにも新規ファンが増えすぎたため、観ていないことが実質的に許容されている。


実際には、旧作をオマージュした描写や旧作を観ないと技の力関係が理解できないというシーンもあるのだが、観なかったからといって認識が180度変わってしまうわけではない。


一方で、観た上で作品を嫌う一般的なアンチも当然存在する。

ヘイトスピーチ問題との兼ね合いもあり、ある作品を嫌う人が少なくないのがこのジャンルの現状だ。

 

そんな中で、古参ファンを中心にシリーズ間クロスオーバーが行われるため、一触即発の危険がある。

シリーズ横断的な創作の扱いには十分気をつけたい。

 

男子が地雷VS女子が地雷VS全部許容

次に、観ている人・観ていない人という区分にも関係してくるが、性別の地雷という問題もある。

 

プリリズというジャンルでは、男子が主人公の作品があるにもかかわらず、男子が地雷な人がいる。

逆に、男子が主役のキンプリしか認めず、女子が主役のプリティーリズムを毛嫌いする人もいるようだ*4


一方で、プリティーリズムでBL・NLを描く人もおり、今後KING OF PRISMでGLやNLを扱う人が出てくる可能性もある。

プリリズだから百合、キンプリだからBLという分け方をするのは難しい。

でも、BLが地雷・NLが地雷・GLが地雷という人は確実に存在していて、配置担当の方にはかなり繊細な分け方が求められる。

 

レインボーライブとキンプリ地続き問題

さらに、レインボーライブとキンプリは世界観が同じで、続投キャラがいるため、切り離しづらい。

地雷避けのためにジャンルを切り離した結果、2つの作品を跨ぐ二次創作が板挟みになっている。


例えば、レインボーライブとキンプリの間の空白期間に何があったかを想像して描くとか、続投キャラ同士のカップリング(CP)を扱うといったとき、レインボーライブともキンプリとも言えなくなる。

しかし、キンプリで描写のある一部のNLCPをキンプリと混在させたりBLサークルの近くに置いたりすると、地雷が爆発する可能性がある。

 

同世界なのにクロスオーバー扱い!?

それから、前述のように、キンプリに初登場した男子キャラとレインボーライブのときから成長した姿の女子キャラを絡ませるケースは、容易に考えられる。

試しに同人誌通販サイトを覗いてみたところ、そのような作品がちらほらあった。

 

本来であれば、これは同ジャンル内のシリーズ間クロスオーバーであり、他ジャンルとのそれではない。

ジャンルが分割されていなければ、板挟みになりづらかったはずだ。


こうした難民問題は、本来世界観が地続きなものを切り分けてしまうから起こる。

しかし、一緒にしたらしたで地雷が作動してしまうので、難しい問題である。

 

拡大するプリズムナショナリズム

このように、プリティーリズムは奇異な成り立ちを背景として、ジャンル分けが難しくなっている。

解釈の自由を求める人々と公式に忠誠を誓う人々の紛争も起きており、地雷もあちこちに埋まっている。

まるでバルカン半島やパレスチナのように、収拾がつかなくなっている。


ここで、公式地雷勢とプリズムナショナリストの双方に言いたいのは、信じるか信じないか、0か1かという姿勢を改めるべきということだ。

例えば、欧米の学生は教授の主張に果敢に挑戦していくという。

彼らは先生を敬っていないわけではない。先生の意見に真摯に向き合うことで敬意を評しているのだ。


同じように、作品のどこがどう素晴らしいのか、どのように問題なのか、それをはっきり主張することも大切なのではないだろうか?

公式への忠誠心を煽るだけであれば、ナショナリスト国家と変わらない。

体制批判に終始している野党も、国民の支持を集められない。

 

今こそ、「ここが凄い」「ここがダメ」のテンプレートを使うときだろう。

 

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*1:GL=ガールズラブ、女の子同士の愛。NL=ニュートラルラブ、異性愛。男女間の愛。BL=ボーイズラブ、男の子同士の愛。

*2:女児向けというと、プリズムエリートに怒られるかもしれないが、わかりやすくするためなのでご容赦願いたい。

*3:アニメ第1作『プリティーリズム・オーロラドリーム』、アニメ『プリティーリズム・ディアマイフューチャー』では男子のライブは手描き作画で行われた。

*4:プリリズで明確に男女間の恋愛をしているキャラがキンプリでは男同士の友情を深めているため、プリリズの前提がない人の目には全く別のキャラに映る。そのキャラのNL前提の本を買ったら解釈違いで地雷が爆発する可能性がある。もちろん、観てはいるけれども特定のカップリングが苦手という人もいるので、「嫌いなCPがあるならば、その人は特定の作品を観ていない」というふうに演繹することはできない。

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