ホビーアニメを観ていたらいつの間にかアホになっていた

現在放送中の子ども向け番組を中心に、アニメや特撮ドラマについて書いていく。毎話「感想」を書くわけではなく、気になった話数や一般的な議論に関する記事を書く予定だ。

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『仮面ライダービルド』第1話 ウサギと戦車 意外にもベストマッチだった

バラバラなモチーフ 意外なハーモニー

仮面ライダーダブルを彷彿(ほうふつ)とさせるフォルムなのに、ウサギと戦車というしっくりこないフォーム……

 

2つのものを混ぜて戦うのに、天才物理学者……

 

仮面ライダービルドが放送される前は、誰もの心が期待と不安の間で揺れ動いていたはずだ。だが、テーブルの上に運ばれてきた料理は、期待以上のものだった。すっかり涼しくなってしまって季節外れの喩えだが、スイカに塩をかけたときのような、どう考えてもミスマッチだけれど実際食べてみたらベストマッチだったという感覚。


仮面ライダービルドは、視聴者の想像の斜め上を行くつかみどころのない奴だ。

 

斜め上を行く内容

化学ではなく物理

仮面ライダービルドは2本のビンをベルトにセットして変身する。2つのビンを振り、パワーをチャージ。ビンをベルトにセットして、レバーを回す。ベルトからプラモデルのライナーが放出され、2つのパーツが合わさり、変身完了。


物理学なのに混ぜると言うのは「ミスマッチ」かと思ったが、実際にはそれぞれの物質の性質を活かしている。ラビットはジャンプ、タンクはタイヤや馬力。2つの物質を混ぜて化合物を作る(化学)のではなく、2つの力を組み合わせて強力な技を繰り出す(物理)。物理学者という設定は、意外とベストマッチだった。


ところで、ビルドに変身する桐生戦兎は数式時計を身に付け、運動を使って朝食を作る。映画などでよく見る、一般大衆が思い描くような科学者だ。前年のエグゼイドとは違い、本格的な物理学は扱わないのかもしれない。

 

謎をちりばめていくスタイル

世界観の説明や主人公の過去については、ライダーを紹介してからというのが普通だ。しかし、今作では1話からすでに世界観を説明し、主人公の過去の断片を見せるという挑戦的な作風になっている。1話から人物を出しすぎているので、各人物の印象が薄くなるのではないかという懸念もある*1が、テンポよくストーリーを進めていくのではないかという期待も持てる。


平成仮面ライダーシリーズを観て育った世代が大人になったことから、大人向けの作風も求められているのだろう。現在、万丈龍我(脱獄犯)がゴミ置き場から拾ったTシャツをプレミアムバンダイで販売することが話題になっているが、現在では、オタクやコレクション行為への拒否感も薄れている。 設定にやや暗い部分があるのは、大人寄りの内容にしても問題はないという判断なのだろうか?

 

斜め下を行く内容

もちろん、全てが賞賛できるわけではない。一部には、「これってどうなんだろう?」と思える内容もあった。いわゆる「面白かった頃」のテレビに戻りたい気持ちもあるのだろうが、販促と作風のミスマッチは弁解の余地がないだろう。

 

おもちゃとのミスマッチ

おもちゃのギミックにこだわりすぎて、変身時のテンポが悪くなっているように感じる。仮面ライダービルドの変身シーンがテンポ悪く感じる理由は、大きく分けて次の2つだ。すなわち、ビンを振るという行為に時間がかかるという点と、ハンドルを回す動作に締まりがないという点である。


まず、ビンを振るという行為。このビンはフルボトルと呼ばれていて、振ることを前提としたビンだ。しかし、10秒も20秒も振っていたのでは戦いの緊張感が薄れる。フォームチェンジのたびに振る必要があるようだが、せめて2回程度に抑えるべきだと思う。


それから、ハンドルを回すという行為は平成ライダーの変身ベルトには合わない。平成ライダーのスタンダードは、スタイリッシュに変身してスタイリッシュに戦うことにあると思う*2。仮面ライダーフォーゼのように、変身時にわざと時間をとるライダーもあるが、変身に必要な動作自体はシンプルだった。回る(回す)おもちゃというのは、子どもに人気の出るおもちゃの鉄則だが、映像で魅せられるかといえば、微妙なところだ。

 

朝の番組にはミスマッチ

第1話から、朝の番組としてどうなのかな、という描写があったのは残念だ。まずは、セクハラ描写が2つあった。取材を申し込んだ女性記者を政治家がラブホテルに誘うというシーンと、編集長がその記者にホテルに向かうよう命令するというシーン。それから、人体実験の断片的な記憶をトラウマティックに描くシーン。


最近の平成ライダーは、朝の番組というよりも、大衆ドラマに持っていこうという感がある。実は、こうした描写は最近になって特撮に導入されたわけではない。セクハラやハードな描写はここ数年は避けられていただけで、2000年代初期までの特撮には一般的だった。これが「表現への抑圧」だとすれば規制を取っ払うべきだが、ふさわしくないものだとすれば、復活させる必要はなかったはずだ。


10月から放送時間が朝9時からになるが、時間が1時間ずれたからといって、セクハラ描写が許されるわけではない。セクハラに関しては、子どもがどうとかではなく、不適切だということを制作側は理解すべきだ。トラウマ描写も、日本民間放送連盟(民放連)の放送基準*3に見合うよう、十分配慮しなければならない。

 

視聴者のニーズに合わせて

仮面ライダービルドは、視聴者の想定していた内容を超えるような、スイカに塩をかけたような番組だ。しかし、あくまで子どものおもちゃを売るための番組であることを忘れてはいけないし、おもちゃを売ることに執着して映像映えしないものにしてもいけない。


もちろん、主人公の失われた記憶を追っていくことを示した第1話は評価できるし、3つに分断した世界というのも気になる。あと、回転する武器がものすごくかっこいい。ビルドの発想自体は悪いものではないと思うので、ヒット作になることを期待したい。

 

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*1:最近の作品では、1-2話に1人、新たな脇役を登場させていくのがスタンダードだった。怪人に襲われるという経験を通じて、主人公の関係を深めつつ、キャラクターを紹介していくという方式だ。

*2:実際のところ、「変身」コールを「へんーしん」と伸ばさないライダーの方が多い。

*3:よりよい放送のために | 一般社団法人 日本民間放送連盟

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