「うっせーな!売れりゃいいんだよ!売れりゃ!」
最近の子ども向け番組って、正義というよりもおもちゃの魅力を紹介する番組だったり、極端に対象であるジェンダーに傾斜した内容だったりしませんか?もちろん、ポケモンやドラえもん、サザエさんのように、どんな人にも通じるアプローチで描いている作品もあります。でも、子ども向け番組の多くは、特定のジェンダーに向けた玩具やゲームの販促のため、他のジェンダーを軽視したり、その活躍を制限するものになっている気がします。しかし、2016年2月からテレビ東京系列で放送中の『リルリルフェアリル〜妖精のドア〜』(以下、リルリル)は、女児向けの玩具を販促するためのアニメであるにもかかわらず、教育的でバランスの良い作品になっています。リルリルは、幅広い層の子どもに向けた情操教育アニメです。
今回は、友情・性・好奇心という3つのテーマをピックアップしていこうと思います。
あらすじ
人間界と、フェアリルドアによって結ばれている世界・リトルフェアリル—この世界には、フェアリルと呼ばれる妖精が暮らしていた。ある日、人間の少年・花村望は偶然開いたフェアリルドアから、チューリップのフラワーフェアリル・りっぷが誕生するのを目撃する。りっぷは仲間達とセイントフェアリルスクールに通いながら、自分が生まれた時に目撃したあの大きな生き物にまた会うことを願いつつ、日々成長していく。一方、花村少年はフェアリルに関する書物を参照しながら、フェアリルの謎に迫っていく。
お友達
友情は物語の一大テーマです。お友達に意地悪してはいけませんとか、困ったお友達は助けてあげましょうとか、いろいろなメッセージをくれます。りっぷと同じフラワーフェアリルのローズはその名の通り、高飛車な性格で、普段は落ちこぼれなのに時々凄い魔法を使うりっぷに嫉妬しています。ある時、ローズはいたずらの魔法をかけて、りっぷが怒られるよう仕向けていました。しかし、ローズは急に魔法が使えなくなります。森の中でワークをしている途中、りっぷが蔦に足を取られ、動けなくなってしまいました。その時、ローズは初めてお友達のために魔法を使い、蔦を焼き払うことに成功しました。人に意地悪してはいけないというメッセージが色濃く現れた回でした。
別の回でローズは、フラワーフェアリルのみんながマーメイドフェアリルの住んでいる海の中に行こうとする中、自分は行かないといいます。しかし、気になって後から追っていく途中、迷子になって危険地帯に入ってしまいます。マーメイドフェアリルのあこやに助けられますが、お友達がいなければ大変なことになっていました。リルリルはお友達は大切だと教えてくれます。
性の目覚め
最近は性の目覚めというテーマが多くなってきた気がします。メッセージとしては、学校におしゃれをしてきてはいけません、男の子と女の子は一緒に仲良く暮らしましょうというものがありました。1つ目は、スミレのフラワーフェアリル・すみれとテントウムシのバグスフェアリル・レディが美容室を開き、フェアリルのトレードマークを脱ぎ捨ててイメチェンしてしまい、フェアリルの誇りを忘れていると咎められる回です。この回では、フェアリルのトレードマークを残しながらオシャレをするという答えを出しますが、オシャレは時と場合を考えましょうという結論に辿り着きます。
次に印象的なのは、ヒマワリのフラワーフェアリル・ひまわりとタンポポのフラワーフェアリル・ダンテの関係です。ひまわりはお日様と運動が大好きなフェアリルで、変身学の授業では、男の子(ダンテ)に変身しました。ひまわりとダンテは、日常生活で「ライバル関係」にありました。しかし、だんだんダンテは、ひまわりを異性として意識し始めます。周りの男の子たちは女の子が好きなダンテを不思議な目で見ます。ひまわりもまだ、ダンテを異性として見ていません。しかし、ダンスの授業で2人の絆が発揮され、先生に褒められました。民放の子ども向けアニメでここまで思春期の恋愛を明確に描いたものはあまりないのではないでしょうか?ひまわりとダンテの関係に今後も目が離せません。
でも、一番の衝撃は、レオン先生だと思います。レオン先生はカメレオンのレジェンドフェアリルで、フェアリルに変身学を教えます。特徴的なのは、レオンの性別が明らかでないことです。大きな乳房があるにもかかわらず、声は高い男声です。女性のファッションに変身したかと思えば、男装した女性のファッションにも変身します。でも、レオン先生に対して「オカマ」とか「気持ち悪い」というフェアリルは存在しません。美しく変身するレオン先生をみんな凄いと思っています。登場の次の回では、イケメンジョフェアリル*1の少年達に美しさを叩き込もうとしますが、女の子達は美しくなったイケメンジョフェアリルを怖がって逃げてしまいます。なので、少し普通のフェアリルとズレた部分はあるようです。
ビッグヒューマル(人間界)への憧れ
りっぷはビッグヒューマルに憧れています。でも、あの大きな生き物がヒューマルと呼ばれる存在であることを知り、ビッグヒューマルの危険性も先生達に教えられます。好奇心は身を誤るというテーマのお話も多くあり、好奇心からりっぷ達が失敗をして、お友達がフォローするというお話もあります。例えば、りっぷが魔法の授業であの大きな生き物をイメージして、巨大な怪物を召喚してしまった回では、クラスメイトのすみれとひまわりがりっぷをフォローしました。別のお話では、りっぷが漫画家を目指すスズランのフラワーフェアリル・すずとらんと一緒に、見たことのない漫画を探しに、レジェンドフェアリル*2以外立ち入り禁止の場所に入ろうとします。しかし、3人はお化けに襲われて、大変な目に遭います。背伸びをしすぎると怖い目に遭うと教えてくれるエピソードでした。果たして、りっぷが見たあの大きな生き物(ヒューマル・花村望)は安全なのかも気になるところです。
サンリオだからできる?
『リルリルフェアリル〜妖精のドア〜』は、他の玩具販促アニメに類を見ない教育的なアニメです。友情パワーで敵を倒すのではなく、友達の大切さを子どもに教えます。女の子だけを活躍させるのではなく、男の子との絡みもしっかり描くし、人のジェンダーが男と女だけではないことを(肯定的に)教えます。人間(現実世界で言うところの知らない大人)についていくのは危険だし、面白そうだからと立ち入り禁止の場所に行くと大変なことになる、ということも教えてくれました。教育が販促に先立つというのは、キャラクタービジネスを行っているサンリオならではかもしれません。でも、今後もこうした教育的な番組が増え続けることを願っています。
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