『プリティーリズム・ディアマイフューチャー』(以下、ディアマイフューチャー)は、日本と韓国の少女達の国境を越えた友情を描いた物語だ。1年目の『プリティーリズム・オーロラドリーム』(以下、オーロラドリーム) 50話のショーを目の当たりにした主人公達によって、スタァの座は正統に継承したと思われた。しかし、ディアマイフューチャーは他の2作品に比べて人気がないというのがファンの実感だと思う。主人公が合わないという人や作画が合わないという人もいるし、韓流のゴリ押しにうんざりしたという人もいるだろう。でも、これらの指摘には曖昧な部分や間違った部分も含まれている。そうしたディアマイフューチャーが嫌いな理由の数々について検討していきたい。
女児向けなのにホビーアニメのノリ
ディアマイフューチャーは、まるで小学生男子向けのホビーアニメのような作品だった。もちろん、ディアマイフューチャーは女児向けアーケードゲームが原作のはずである。だが、論理的ではない行動をとる熱血主人公と寡黙でクールなライバル(+口うるさい小悪党系ライバル!?)という構造は、まさにホビーアニメの主人公とライバルの関係である。
実際のところ、気合いで乗り切る主人公・上葉みあと、主人公よりも強いが、あと一歩踏み出せないライバル・ヘインは劇中で幾度となく対比されている。終盤には敵の陰謀にも立ち向かっており、女児アニメを求めていた大人の視聴者にとっては期待外れだったかもしれない。
これにタツノコプロのスピリッツが加わるのだから、うるさくてたまったものではないだろう。だが、ホビーアニメのノリを懐かしがるファンも多い。いずれにせよ、女児向けアニメの優しい世界ではないので、ホビーアニメのノリで脱落者が出たことは否定できない。
韓国要素への誤解
2012年当時、韓国へのヘイトスピーチの最盛期であったため、韓国要素に嫌悪感を抱く人もいたようである。だが、視聴者に韓国の文化に親しむよう強要するような作品ではない。韓国を思わせるモチーフは料理や言語などの最低限の文化に抑えている。登場人物が使う韓国語の単語*1に対して解説が入るものの、それ以外には視聴者に文化を露骨に教え込むシーンはほとんどない。
逆に韓国人のキャラが日本の文化に触れて感動するなどの描写もない。あからさまな日本家屋が出てきたのは1回だけである。たしかにK-POPアーティストとのタイアップはあるが、アニメ本編ではプリズムショーに使う挿入歌という扱いであり、K-POPを礼賛するような描写もない*2。エンディングでは実写MVが流れるが、アイドルの曲に対して実写PVを流すのはオーロラドリームからずっと同じだ。このように、ディアマイフューチャーは韓流ゴリ押しアニメではない。
曲がずっと同じ
これは釈明のしようがないだろう。24話まで「You May Dream*3」「Dear My Future〜未来の自分へ〜*4」「my transform*5」「チェキ☆ラブ*6」の4曲(実質3曲。1ユニットにつき1曲のみ*7 )だけで回していた。ジャンプや衣装の内容が変わったり、PURETTYの場合は当番回によってセンターが変わったりする演出があったが、それでも単調さは否定のしようがない。
3クール目からはキャストが歌う主題歌と挿入歌が登場するが、実は、キャラソンが後半2クールに集中している*8。製作側の事情を知らない視聴者としては、出せるなら早く出せよと言いたいところかもしれない。こういった部分での反省が『プリティーリズム・レインボーライブ*9』や『プリパラ*10』に活かされていることには留意してほしい。
『プリティーリズム・ディアマイフューチャー』は、女児アニメという枠では語れない類稀なる作品であり、まだまだ語りつくせない部分がある。もし、悪い噂だけを聞いてディアマイフューチャーを避けている人がいたら、あなたにいっちばーんになって導いてもらいたい。
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*1:特に、親友を意味する「チョルチン」。
*2:劇中でK-POPであると明言されていない。
*3:オーロラドリームの前期オープニングだが、アレンジが異なる。使われる回数は少ない。
*4:1クール目のオープニングテーマで、Prizmmy☆のプリズムショーの曲として、2クール目まで使用される。歌うのは声優ではなく、メインキャラクターのモデルとなった子役アイドルのPrizmmy☆。
*5:1クール目のエンディングテーマ。1クール目終盤からは、Prizmmy☆のプリズムショーにおける技「ミラクルアイドルウェイクアップ」にて、挿入歌がこの曲に差し替えられる。同じく歌唱はリアルのPrizmmy☆。
*6:リアルのPURETTYが歌唱する2クール目エンディングテーマ。1クール目終盤から先行登場する。PURETTYの曲が入ったプリズムショーは権利の関係上、映画やベスト集などに一切登場しない。
*7:特にPrizmmy☆は毎回のようにプリズムショーがあったので、大人の視聴者は飽きてしまったかもしれない。
*8:先輩キャラのMARsとせれのん with Kにも新曲が用意されている。前半2クールを8曲で回している。
*9:ソロショーが多かったので、同じ曲を繰り返す展開は初期のマイソングがない頃にしか存在しないはずだ。
*10:毎回のように衣装が変わっている。ただし、対決ライブが単調になってしまうところはあまり修正されていないようだ。