意外なヒットをした注目コンテンツ「SHOW BY ROCK!!」とは
SHOW BY ROCK!!は「ミューモン」と呼ばれるマスコットキャラクターが「MIDICITY」と呼ばれる架空の街でバンド活動をしているという設定で展開されるキャラクターコンテンツである。一部の主要バンドは、オリジナル性の高いキャラクターに声優が声を当てているが、アーティストのタイアップがあるバンドでは、そのアーティストをイメージしたキャラクターになっている。そうしたキャラクターを元に、ソーシャルゲームやアニメ、グッズ展開をしているのが、SHOW BY ROCK!!というコンテンツだ。この記事では、その中でもアニメ『SHOW BY ROCK!!』の持つ意外性に迫りたい。
『SHOW BY ROCK!!』第1期
ギターの才能がありながらも自分に自信が持てず、軽音楽部に入部できない少女・聖川詩杏は、ある夜、異世界「サウンドワールド」の「MIDICITY」に飛ばされてしまう。詩杏は猫の「ミューモン」シアンとなり、伝説のギター「ストロベリーハート」を携え、悪しき「ダークモンスター」に勇敢に立ち向かった。その姿を見た音楽事務所社長・有栖川メイプルは、シアンをスカウトする。シアンは正体を隠して事務所に所属し、新メンバーとしてロックパンド「プラズマジカ」に加入するのだった。プラズマジカのメンバー・レトリー、チュチュ、モアと絆を紡ぎ、自信をつけたシアン。しかし、ブードゥー館で開かれるグレイトフルロックフェスを目指す彼女達の前には、ライバル事務所やダークモンスターの魔の手が迫っていた。シアンはサウンドワールドを救うことができるのか?プラズマジカはトップに君臨することができるのか?彼女達の友情の行方は?そして、詩杏は軽音楽部に入部することができるのだろうか?
大人向けなのに男女混合のアニメ
『SHOW BY ROCK!!』は男女のバランスが異常に良い。普通、深夜アニメは、1人の男性キャラクターの前に女性キャラクターが集まる、あるいはその逆のハーレム物や、専ら男性キャラクターもしくは女性キャラクターしか出てこない作品だと思う。しかし、『SHOW BY ROCK!!』は、女性キャラクターが主人公でありながら、(女性キャラクターの人数に劣るながらも)男性キャラクターも多数登場する。この作品にはCGパートがあるが、男性キャラクターのCGも登場する。準主役級のバンド「シンガンクリムゾンズ」には2曲用意されていて*1、戦闘シーンもある。男性キャラクターがいる影響で、腐女子や男性声優ファンの女性の人気も強く、ジェンダーニュートラルな作品というイメージが強い。
もちろん、だからと言って男性が楽しめない作品であるわけでは決してない。物語の主軸は女性キャラであり、脇役の女性バンドも2つ登場する。アイドルバンド「クリティクリスタ」は敵の傘下にある今作の救われる方のヒロインで、和風バンド「徒然なる操り霧幻庵」は戦う方のヒロインだ。推せる女性キャラクターは他にもおり、男性でも安心して観られる作品なのだ。
サンリオなのに深夜アニメ
このアニメには、ややセクシーな格好をしたキャラクターも出てくるが、SHOW BY ROCK!!はサンリオのIP(知的財産)である。しかし、それだから意外というわけではない。動物風のマスコットの姿から人間のような姿になるというのは、SHOW BY ROCK!!から始まり、『ジュエルペットマジカルチェンジ』でも行われた。今は、『リルリルフェアリル〜妖精のドア〜』でフェアリルチェンジが行われている。それはさておき、今や人間に変身するマスコットというのは、サンリオの中では珍しくないのだ。
それどころか、サンリオは深夜アニメに進出している。もちろん、サンリオの主要IPであるハローキティやポムポムプリンは多くの大人に愛されていて、アニメだから、キャラクターだから、子ども向けというわけではなくなっている。大人の女性向けに特化したキャラクター商品を見たこともあるだろう。そうしたサンリオのキャラクターの中でも、SHOW BY ROCK!!は、課金制のソーシャルゲーム、大人が参加する同人イベントへの出展、声優をゲストに呼ぶニコ生など、かなり挑戦的な展開をしている。でも、急にそういった展開を始めたわけではなくて、サンリオキャラクターの大人への支持が背景にあることは留意されたい。
深夜のCGなのにクオリティが高い
たしかに、人間より頭身が低いし、楽器を弾いているのでダンスもしない。だが、CGのクオリティの高さは指摘せずにはいられないだろう。近年の特撮映画のCG決着でうんざり、がっかりする中で、SHOW BY ROCK!!のCGはかなり綺麗でなめらかだ。アニメ中で主要キャラクターのミューモン体はすべてCGで描かれている。エンディングでは、CGのプラズマジカが楽器を弾いている。もちろん、単純な動きをするだけではなくて、ダークモンスターとの戦闘シーンもある。攻撃のエフェクト等もしっかりしていて、ゴールデンタイムに放送しないのが勿体無いぐらいだった*2。深夜なのに紙芝居じゃないというのはかなりポイントが高いはずだ。
このように、SHOW BY ROCK!!はジェンダーの中立性、挑戦的なIP展開、放送時間帯にそぐわない先進的なCGという意味で、意外性溢れるコンテンツだった。筆者は恥ずかしながら、まだ放送中の『SHOW BY ROCK!!しょ〜と!!』に目を通していないが、そちらもぜひチェックしていただきたい。私もチェックする。