『アイカツスターズ!』第23話「ツンドラの歌姫、降臨!」
自分の個性を見つけたい虹野ゆめは、四ツ星学園の七つのラッキーに願掛けしようとするが、どうしても7つ目のラッキー「ツンドラの歌姫」が見つからない。幹部の桂ミキと芦田有莉によれば、ツンドラの歌姫は休学中だという。一方、二階堂ゆずは、自分のイベントにとあるゲストを呼ぼうとしていた……
個性とは何か?
今回の販促としての本筋は白銀リリィのキャラクター紹介である。一方で、虹野ゆめ達と全く接点のないリリィを交流させる手段として、七つのラッキー探しというサブストーリーが用意された。しかし、物語視点で考えると、七つのラッキーの方が本旨であるように思える。幹部たちはリリィを強烈な個性の持ち主と言っていたが、これにより、今回のキーワードが個性であることが鮮明になり、リリィが個性を説明する手段であることがわかった。リリィの紹介は、趣旨ではなく、手段だったのだ。つまり、第23話は、個性とはなんたるかを中心に話が展開されていた。
白銀リリィの個性
白銀リリィは、病弱な文学少女として描かれている。療養のために休学していたが、今回、幼馴染の二階堂ゆずからのラブコールを受け、イベントに参加した。病弱だから気弱というわけではなく、芯は強い。中途半端なステージは見せたくないらしく、突然ステージに立つことはためらっていた。一方で、話す言葉は赤毛のアンなどの文学や、偉人の言葉の引用が中心で、自分自身の言葉は少ない。歌手にとって大事なことは、自分の言葉でメッセージを伝えることだと思うが、リリィが自分の言葉をあまり使っていないことが気にかかる。
いずれにせよ、人間としての精神自体は強いようだ。ゆずのストレッチを手伝う一方、自分は心のストレッチ・精神統一をしていた。どうやら、肉体的なゆずとは正反対で*1、精神が卓越しているらしい。病床で本をたくさん読むことで、精神が鍛えられたのだろう。リリィは病弱ながらも、文学を通じて強い精神を獲得していたのだ。
キャッチフレーズと個性
キャッチフレーズはそれ自体が個性なのではなく、個性から自然と生まれるものである。それから、個性は願掛けしても出てくるわけではない*2。ブレインストーミングなど、見つける努力をすることはできるが、運よく見つかるというものでもない。
ツンドラの歌姫は、凍えるようなオーラ*3から来ているもので、ツンドラの歌姫になりたいと思ったから凍えるようなオーラが出るようになったわけではない。オーラは個性が表面化したものであるから、彼女には吹雪のような力強さがあるのだろう。個性とは、所属のことでも役割のことでもない。自分特有の性質のことであり、キャッチフレーズから先に考えても意味がないわけだ。
個性=奇抜さ?
自分特有というと、『アイカツ!』の藤堂ユリカの吸血鬼キャラや、紅林珠璃のラテン系キャラが思い浮かぶが、そういうことではない。ユリカの場合は、キャラ作りに手を抜かないことが個性だし、珠璃の場合は、女優業に情熱を燃やすことこそが個性だ。キャッチフレーズがついたアイドルを見ればわかるが、奇抜な「個性」を持っているわけではない。「美しき刃」紫吹蘭はステージ上で刃を振り回さないし、「ステージに咲く氷の華」氷上スミレはステージ上で氷の華にならない。蘭は厳しく真剣にアイカツに取り組む姿勢がその呼び名になったわけだし、スミレは氷の華のように美しいからステージに咲く氷の華なのだ。奇抜なキャラ作りと個性は別の話なのである。
虹野ゆめの個性
ゆめは、自分が没個性であることを気にしていた。だが、ゆめは決して没個性ではない。ゆめはこれまで、憧れの白鳥ひめを目指して努力してきた。夢へ向かって突き進んできたではないか。それこそが立派な個性になりうる。もちろん、夢が行き過ぎると、彼女の「個性」である妄想癖になってしまうのだが、それと個性とは区別したい。ゆめが本当に没個性になるのは、憧れであるひめを失ったときだと思う。ひめがS4を引退したとき、あるいは自分がひめを超えたとき、ゆめは夢を失う。そのときは新たな夢を見つけられるかが個性の喪失から逃れるヒントになる。
ちなみに、『アイカツスターズ!』のアニメ版公式サイトのキャラクター紹介には、全メインキャラの暫定のキャッチフレーズが載っている。ゆめは「キュートな正統派アイドル」となっていて、今のところ、個性がにじみ出るものになっていない。このキャッチフレーズが変更になるのかはわからないが、ゆめが個性を見つけられる日が楽しみだ。
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