ネットの闇とウィルスの恐ろしさ
『アプモン』第6話は、前回登場の花嵐エリにフォーカスしながら、レビューサイトの闇やデータを消去するウィルスの恐ろしさについて言及した。ハイテク化した社会の闇を面白おかしく描く『アプモン』の魅力が溢れた回だった。
第6話「最高のグルメレポート!グルメアプリ・ペロリモン!」
食レポの仕事を初体験したエリだったが、食感をうまく伝えることができず、失敗してしまう。「おいしい」という直接的な言葉……明らかにおいしいものに対して使うものではない比喩……そのレポートは新海ハルの素人目にも上手い、美味しそうとは思えなかった。エリはマネージャーから「ペロリモンさん」のグルメアプリを使うよう勧められるが、実は「ペロリモン」というアプモンが製作・管理・運営するアプリであることが判明した。
エリはペロリモンを自宅に連れて帰り、アプリアライズすることを条件にコツを教えてもらおうとする。だが、ペロリモンはエリが作るたこ焼きの見た目の不味さに怒って、出て行ってしまう。実は、ペロリモンはネットの海からグルメレビューのデータを「食べる」ことで、何が美味しそうな料理なのか学習していたのだ。ペロリモンが出て行ってしばらくすると、都内で大規模なデータ消失事件が発生し、ペロリモンのサイトのデータも消えてしまう。
エリは、怒ったペロリモンがデータを無差別に食べているのではないかと疑っていた。ところが、ARフィールドに入ると「ゴミモン」という別のアプモンがおり、ペロリモンもグルメレビューのデータを消去されていた。被害者のペロリモンとアプリンクしてゴミモンを倒そうとしたが、偶然にもドカモンとペロリモンはアプ合体が可能な組み合わせだった。
アプ合体によって誕生したドスコモンはゴミモンを瞬殺し、浄化した。(ゴミモンはセブンコードアプモンだった。) 気を取り直してペロリモンにたこ焼きを食べさせようとするエリだったが、やはりお世辞にも美味しそうとは言えない見た目だった。食べてみると、やはりまずいという言葉しか出なかった。
レビューサイトの闇と人工知能の可能性
今回登場したペロリモンは、アプリアライズ(実体化)していないので、これまで食べ物を食べたことがなかった。にもかかわらず、料理の見た目や食感を巧みに表現していた。これは、データの蓄積によって自動生成したレビューだった。このケースは次の2つの可能性を示している。
未使用者によるテキトーなレビュー
まず、ペロリモンの存在は、商品を実際に購入・使用していない人による悪質なレビューの存在を示唆している。つまり、あたかも使用したかもように見せかけ、叩く目的で商品をレビューしたり、逆に、出品者に都合のよいレビューを書いたりする人が存在するのだ。こうした悪質なレビューは、ユーザーにとって迷惑でしかない。
人工知能によるレビューとサジェスト
人工知能が進化すれば、料理のレビューを自動的に生成したり、好みに合う料理をサジェスト(提案)したりすることができる。例えば、既存の文章を参考にして別の文章を作成する技術はすでにあるようだ*1。さらに、好みに合う料理やレストランを提案する技術もすでに存在しており、一般化するのも時間の問題のようだ*2。
データ消失ウィルス
恐怖!データを消去・窃盗・破壊するPCウイルスとは?|Logitec データ復旧技術センター
データを消失させるウィルスはすでに存在している。もちろん、データを復旧する手段は色々あるが、まだまだ認知が進んでいないようだ。筆者も、ある時データが消えてしまう経験をした。ウィルスに感染したわけではなかったが、大きな害を被った。
パスワードを掛けた外付けハードディスクが読み込めなくなり、一部の友人には迷惑を掛けてしまった。たしかにデータ復旧ソフト自体は市販されているが、誰もが手軽にデータ復旧を行えるわけではない。日頃からデータのバックアップ先をいくつか用意しておくなど、賢い対策がユーザーには求められている。
ICTも賢く ユーザーも賢く
ネットやコンピュータには悪意や悪意なき害が溢れている。もちろん、高度化したパソコンやスマートフォンは便利だが、ユーザーもそれに合わせて賢くならなければならない。たしかにアプモンの被害描写はコミカルだが、中には笑えないものがたくさんある。筆者を含む20代前半はパソコンやインターネットの怖さを酸っぱく教えられてきた世代だが、今お子様とアプモンを見ている20代後半から30代の親御さんにもぜひ、そういったことをお子様に教えていただきたい。