高みを目指す者に仲間は必要か?
この回では、熱血漢のお調子者・タイガーが、冷静沈着な幼馴染・ローズと再会する。仲間と群れるタイガーと一匹狼のローズ、2人が再び相見える時、物語は予想外の方向へと動き出す。
第20話「タイガーはつらいよ」
ローズとの再会
エース一行は森で休んでいた。チャロは手に入れたソウルアーマーをエースに自慢し、タイガーとタマゾーはカブトムシを採集していた。タイガーのあまりの能天気さに、チャロは呆れていた。そんな一行の前に、タイガーの幼馴染・ローズが現れた。ローズはレッドカーバンクルというモンスターを探しにやってきたのだが、タイガーは見栄を張り、自分もレッドカーバンクルを探しにきたと言い張った。2人はどちらが早くレッドカーバンクルを見つけられるか、競争することになった。
タイガーとローズの過去
そんな2人は、かつてガイザーで一緒に修行していた。野生のアグドラールに道を塞がれたとき、ローズは逃げず、強さを見せることでアグドラールを仲間にした。だが、タイガーはアグドラールにやられっぱなしで、終いには仲間になってくれと頼み込んでいた。ローズがドロップをタイガーの元に引き寄せると、タイガーはそのドロップを使ってアグドラールを仲間にした。タイガーは我が物顔で喜んでいた。
その夜、タイガーとローズは離別した。タイガーは2人でなら龍喚士のてっぺんを目指せると言っていたが、ローズはそれをよく思っていなかった。ローズはタイガーに、ひとりで行くと告げた。タイガーは2人の方が楽しいに決まっていると言ったが、ローズは「楽しいだけじゃ強くはなれない」と返した。ローズは、「てっぺんで会いましょう」と言い残し、霧の中へ消えていった。
レッドクルルの捕獲
レッドクルルはレッドカーバンクルの進化前の姿である。レッドクルルは集団攻撃が得意で、タイガーは苦戦した。だが、チャロが作戦を考えてくれ、エースがドロップを継ぎ足してくれた。おかげで、レッドクルルを捕まえることができた。チャロの頭脳とエースの力があっての勝利だった。
ローズとの合流
ローズを見つけると、タイガーはレッドクルルを一緒に捕まえてくれた仲間のことを楽しそうに話し始めた。それを聞くローズは、つまらなさそうだった。
「タイガー、あなたは何も変わってない」
タイガーにはギルド龍喚士の称号も、ソウルアーマーもあった。だが、ローズはタイガーの変化を認めてはくれなかった。ローズはタイガーに勝負を挑んだ。エンテツのソウルアーマーをクロスオンし、アグドラールをリリースしたタイガー。タイガーは本気のつもりだった。一方、ローズはアグドラールが進化したフレアドラールをリリースした。ローズの本気は、アグドラールを一撃で仕留めた。
タイガーは続けてレッドクルルを出したが、「レッドクルルは1匹じゃ何もできない」。ローズは1匹では弱いレッドクルルをタイガーに重ね合わせた。ローズはその場を立ち去り、タイガーはその場に立ち尽くした。
タイガーの決断
タイガーはこの後、エースやチャロと別れることを決意した。ローズと戦った夜、タイガーは上の空で、ローズに言われたことをずっと考えていた。仲間たちは楽しそうに、次どこに行くのかを考えていたが、タイガーはそのこと以外考えられなかった。その晩、タイガーは眠れなかった。
翌朝、タイガーの表情は優れなかった。チャロはようやくタイガーの異変に気付いたが、タイガーの行く先は決まっていた。チャロはタイガーの選択に納得がいかなかった。目的地は同じなのに、なぜ違う道を行くのかが理解できなかった。一人ひとり行く道が違うことを理解できなかった。エースはタイガーの決断を受け入れたが、やはりチャロは納得がいっていなかった。
タイガーはローズの言っていたのと同じことをチャロに伝えた。そして、もっと楽しい俺になってくるとチャロに言い聞かせた。最後は、タイガーらしく話を茶化して終わらせた。納得したタマゾーはタイガーに喝を入れて、反対方向へと飛んで言った。エースとチャロもタマゾーに導かれながら、反対方向へと歩いていった。チャロはこれまでの日々を思い出し、涙を流していた。
「おめえら、てっぺんとるぜ!」
タイガーの声が響き渡ると、チャロは涙を拭き、「おー!」と掛け声をあげた。
友情と強さの関係
この回のテーマは、強さのために友情を捨てるべきか、である。おそらく、答えはNOだ。少年アニメである以上、(ジャンプ系ではないのだが、) 友情は勝利するはずである。だから、「1人だから強い」という方向には多分、持っていかないだろう。考えられる主な方向性は、次の3つだ。まず、仲間と一緒にいる方が、強い力を発揮できる。次に、1人でいるからこそ、仲間との絆が強まる。最後に、1人でいたとしても、仲間の存在からは逃れられない。どの方向性でもこのエピソードは解釈できる。
団結する力
仲間が団結すれば、強い力が発揮できる。たしかにレッドクルルは単体では弱いかもしれない。だが、仲間がいれば、その力は10倍にも20倍にもなる。それはタイガーたちも同じで、チャロが作戦を考え、エースがサポートし、タイガーが攻撃するというチームワークでレッドクルルを捕まえた。これは1人ではできないことであり、仲間がいてこそできる*1。もちろん、一人ひとりが優れた長所を持っていなければならないが、たとえ弱くても、仲間となら困難を打開できるのだ。
心の繋がり
遠く離れていても、心は繋がっている。ローズの態度は主に2通りに解釈できるのだが、そのうちのひとつがこの考え方だ。ローズは「強くなろう。強くなって、てっぺんで会いましょう」と言っていたが、タイガーのことを想っているからこそ、タイガーと別れたのであって、今もタイガーのことを見捨ててはいない。離れているからこそ互いを思いやることができ、互いの絆が深まる。
「会いましょう」ということは同じゴールにたどり着きたいわけだし、タイガーだって「おめえら、てっぺんとるぜ!」と言っている。「俺がてっぺんとるぜ!」でも、「おめえら、てっぺんとれよ!」でもない。結局はみんなで同じゴールを目指しているというわけだ。この考え方で言えば、タイガーはてっぺんで待っているのだろう。
断ち切れない絆
ひとりで強くなっているつもりだったのに、実際はタイガーのことばかり考えている。これがローズの態度の2つ目の解釈だ。ローズは仲間と一緒では成長できないと想っていたが、結局タイガーのことを想っていた。人はひとりでは生きていけないわけで、ローズは本能的に仲間を求めている。そして、強いパートナーを求めている。
タイガーはレッドカーバンクルを探しに来ただとか、強くなっただとか見栄を張っているように見えたが、見栄を張っているのは、ローズも同じだ。結局タイガーに救いを求めている。ローズが真に強くなるためには、タイガーという存在が不可欠なのだ。
結局、友情というものからは逃れられない。物理的に別れたとしても、心は繋がっている。彼らは仲間との絆を胸に、成長していくほかないだろう。次回は総集編だが、その次の回からどのような展開をするのか楽しみだ。
余談:ローズ役は下地紫野さん
ローズを演じたのは、『アイカツ!』の大空あかりを演じた下地紫野さんだ。スタッフの一部が共通しているので、その繋がりだと思うが、あまりにえぐいというか、あくどいというか……。あかりは仲間と一緒にアイカツをしてきたわけで、仲間と一緒に高みにたどり着いた。(もちろん、スターライトクイーンになったのはあかりだけだが。) そんな役を演じた人にこんなことを言わせるとはなんということだ。それから、「こんなものなの!」と言っていたのも印象に残った。果たしてこれは、SHINING LINEなのだろうか……?(苦笑)
*1:龍喚士試験を突破できたのも、3人が団結したから。