話題沸騰の楽曲 Dreaming bird
『アイカツスターズ!』の”Dreaming bird”という曲が話題になっている。複雑なリズムとコード進行、難しい譜割りが話題になっているようだが、私は音楽の専門家ではないので、そこには言及するまい。そもそも、ファンがこの曲を再考するきっかけになったのは、先週放送された『アイカツスターズ!』第39話「四ツ星学園、危機一髪!?」である。この回でDreaming birdを使ったCGライブパートが放送され、注目を集めたのだろう。
この回は、自分一人で壁を乗り越えてきたと思っている少女が、実は自分は周りから支えられているのだということに気づかされるというお話。この回を通すことで、Dreaming birdの見え方も変わってくる。この記事では、この回を振り返りつつ、Dreaming birdについても考えていきたい。
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第39話「四ツ星学園、危機一髮!?」
学園の経営危機を救うため、新ブランドのデザイナーを決めるコンテストに出場することになった白銀リリィ*1。同級生らに応援され、下級生からもリリィをサポートしたいと言われる。しかし、リリィは、私は(ドレス作りで)誰からも力を借りたことがないと、協力を拒絶する。
「これは私の夢。誰にも頼らず、自らの手で掴み取る。」
宣言通り、リリィは1人でコンテスト番組「TV WINNER」に出演し、好成績を収めていった。ところが、リリィは1日目の収録後、調子を崩してしまう。休めば大丈夫だと言うが、2日目になっても体調は改善しなかった。体調の優れぬままオーディションに参加するリリィだったが、意識が朦朧とし、ついに倒れてしまった。ここでリリィの夢は潰えたように思われた。
だが、そこに下級生のゆめとローラが現われる。2人はいつもより良いパフォーマンスをするリリィを見て、長くは続かないと思い、必要な物資を持って会場にやってきたのだ。こうして、リリィは見事オーディションに合格することができた。
2週間後、リリィがプロデュースするブランド「Gothic Victoria (ゴシック・ヴィクトリア)」の1号店が開店した。「自らの手で掴み取った夢」と喜ぶリリィだったが、オーナーのピロシェンコはそうではないと言う。店内には友人達の手でブランドモチーフの青薔薇が飾られ、ディスプレイがコーディネートされ、綺麗に掃除されていた。リリィは多くの人に支えられ、ここまで来ることができたのだ。
大事なことに気づかされたリリィは、お披露目ステージに立つ。曲はこれまでと同じ「Dreaming Bird」。だが、ファッションショーステージだったこれまでと違い、ランウェイがなくなり、「鳥かご」の中でのパフォーマンスになっている。これまでよりも、鳥かごから飛び立つ鳥が強調して描かれていた。
そんなステージを終えたある日、リリィはロシアの店舗のオープンイベントへ旅立つ。ゆめはリリィに問う。せっかく自分のブランドができたのに、なぜプレミアムレアドレス(最上級ドレス)を着ないのか。リリィの答えは、S4*2になるまで着ないということだ。自分のブランドを持った今、自分のブランドのプレミアムレアドレスを着るのがリリィの新たな夢になった。S4決定戦で戦うことを誓い、リリィはロシアへと立った。
ライバルを思いやる心
この回では、仲間を思いやり、仲間の夢のために尽力する子どもたちの様子が描かれていた。リリィの熱を気にかける有莉とミキ、それからリリィの元へ行くゆめとローラの活躍*3は友達でありライバルという『アイカツスターズ!』の登場人物の関係をよく表していたと思う。ゆずの登場が少なめだったのは、登場させるとゆずとリリィの関係だけで完結してしまうためだろう。
仲間の助け
一方で、「あなたは病弱なので、人の助けなしでは何をすることもできない」という解釈もできる。
健常者が色々な人に支えられているという話であれば、そういう話として素直に受け止められる。だが、病弱な少女にそれをやらせると、「自分一人では何もできないんだ」という話になりかねない。
まさに、リリィが仲間の助けを拒んでいたのも、そういう感情から来る行動だろう。こうやって、かなり危ない綱渡りをしているというのがこの話の印象だ。デリケートな話題なので、それなりの配慮が必要である。例えば、骨折のような後天的なハンディキャップであればよかったのではないだろうか?
Dreaming birdとリリィの巣立ち
Dreaming birdーこの歌の主人公はハンディキャップを負い、自由を制限されている。何もできないことを嘆くばかりで、何もしようとしていなかった。だが、心に傷を負う「あなた」のことを思い出す。主人公は、たとえハンディキャップを負っていても、自分の全力を振り絞り、「あなた」を癒すために歌うことを決意する。
それを考慮して今回のエピソードを振り返ると、Dreaming birdの歌詞には存在しなかった、仲間の存在が明らかになっていることがわかる。「鳥カゴ」から飛び立つ(×歌う)には、仲間の存在が必要不可欠だというわけだ。
現に、リリィは最後にロシアへと飛び立っている。Dreaming bird自体は孤独な歌だが、その歌声によって多くの人が心を動かされ、「小鳥」に協力するようになったと言えるのではないだろうか? 全てを自分の手でできないのは残念かもしれない。だが、仲間がいるからこそ叶う夢だってあるのだ。そして、もちろん、その仲間ができたのは、自分自身のおかげである。
余談:正統派モブと主人公の劣化コピーは負ける
余談ではあるが、今回初登場のモブ「森きらり」の出身校は「サンライト学院」だった。明らかに『アイカツ!』のスターライト学園を意識したネーミングだ。彼女はピロシェンコの出身地のロシアと日本をつなぐ「日ロ合作コーデ」をデザインして、見事落選した*4。
この手の番組でたまに出てくるのだが、私はこうしたモブを「正統派モブ」とか「主人公の劣化コピー」と呼んでいる。綺麗事ばかりを言ったり、夢を語っていたりする人物がかませ犬のように敗れていく様は快感で(こういうことを言うと多方面から怒られそうだが)、見ていて逆にすっきりする。このような敗北を「正統派モブの法則」と呼ぶことにしよう。『ベイブレードバースト』や『バトルスピリッツ烈火魂』にも同様のキャラクターが出てくるので、暇があればチェックしてほしい。