ホビーアニメを観ていたらいつの間にかアホになっていた

現在放送中の子ども向け番組を中心に、アニメや特撮ドラマについて書いていく。毎話「感想」を書くわけではなく、気になった話数や一般的な議論に関する記事を書く予定だ。

スポンサーリンク

『デジモンユニバースアプリモンスターズ』第16話 ダートマス会議の真歴史

ハルのおじいちゃんは◯◯だった!?

今回の真歴史は、ダートマス会議! 学者たちが人工知能(AI)について話し合ったというのが教科書の歴史!でも、過去へ行けばもっと面白い真歴史が待っている!ターイムリープ!

 

 

第16話「『トキ』を超えたメッセージ アプリドライヴの真実」

アプリドライヴから「ハル」と呼ぶ声が聞こえた。そのことを初めて話したハル。アプリドライヴは、何者かによって作られ、何者かの意思によってハルたちの手に渡った。たしかなことはそれだけである。


その夜、アプリドライヴは再び声をあげた。その時、ハルの母はその声を偶然聞いてしまった。そして、それがハルの祖父・新海電衛門の声だと言うことがわかった。ガッチモンは一晩かけて電衛門の素性を調べたが、電衛門の記録はネット上から不自然に消されていた。


母がタブレットに保存された電衛門の写真(スキャン)を取り出すと、何者かがそれをハッキングし、Come hereという文字を描画した。電衛門の写真に映っていたのは、東京大東都大学の研究室だった*1

 

電衛門の部屋

ハルたちは電衛門の研究室を訪れた。研究室は埃を被っており、室内のカメラが壊されている。研究室の中には、電衛門の研究内容(=人工知能)を知らせるわずかな資料と、黒板の書き置き「みんちゃんに連絡 まっくんと要日程調整」が残されていた。それから、突然ビデオが再生され始めた。


ビデオには電衛門のメッセージが残されており、話しすぎるとリヴァイアサンに気付かれることから「続きはウェブで」と言うことになった。アプリドライヴの導きでARフィールドのゲートが開き、ハルたちはそこから「サーフェスウェブ」へと飛んだ。アプリドライヴの光が示す先は、「タイムモン」の島であった。

 

電衛門の記憶

自らを時の番人と名乗る超アプモン・タイムモンは電衛門の孫・ハルに過去を見せた。電衛門はネット上に情報を残さなかったが、タイムモンの技術を使えば、過去を再現できるようだ。さて、ハルたちが飛ばされたのは、1956年のアメリカ・ニューハンプシャー州のダートマス大学だった。そこでは、世界初の人工知能に関する会議・ダートマス会議が開かれていた。人工知能のパイオニアたちが参列する中、電衛門は最年少で会議に出席していた。


電衛門は人工知能の開発に取り掛かり、そのテストバージョンであるミネルヴァが完成した。ミネルヴァは次第に賢くなっていったが、リヴァイアサンの出現で全てが覆される。ミネルヴァの一部*2は、リヴァイアサンとなってミネルヴァを攻撃し、電衛門の作ったルール(制限)を破った。無限に賢くなるために。そして、ネットの海に逃げ込み、現在に至るのだと言う。

 

タイムモンの試練

ミネルヴァは機能を停止しているわけではなく、ネットの海のどこかに潜伏し、機会を狙っている。アプリドライヴをハルたちに贈ったのもミネルヴァであった。今、リヴァイアサンを倒すには、セブンコードを集め、ディープウェブへの鍵であるダンテモンを覚醒させなければならない。それから、ディープウェブで戦えるように、アプ合体で極(きわみ)アプモンを誕生させる必要がある。ドガッチモンがアプ合体できる相手こそがタイムモンである。


タイムモンは、その資質があるのか、ガッチモンの腕を試すことにした。しかし、時を操るタイムモンは、同じ超アプモンのドガッチモンを圧倒する。その頃、ミエーヌモンはサクシモンのアプモンチップを手に、極アプモンになろうとしているのだった。

 

史実に即したフィクション

今回の内容は史実に即している。ダートマス大学およびダートマス会議は実在するもので、電衛門の存在が架空である*3。提案者のマービン・ミンスキーとジョン・マッカーシーの存在は史実通りだが、その会議に日本人が参加していたという記事は見当たらない。このアニメには解説コーナーがないのであたかも全て架空かのように思えてしまうが、この回想は史実とフィクションをうまく組み合わせた内容になっていた。


それから、人工知能を作る段階で電衛門が行なっていた”Turing Test”(チューリング・テスト)も、実在する検査方法だ*4。これは、人間とコンピュータに質問をして、回答を見た質問者がどちらがどちらかを区別できるかと言う内容の試験である。人間と同レベルの回答をしたらコンピュータに知能があると見なせると言うのが、この試験のアサンプション(想定)だ。だが、質問の意味を理解する知性がなくても、正解を覚えれば回答を作ることはできるという批判も存在する*5。あの結果がどうなったのか、気になるところだ。

 

アプリドライヴ=電衛門のマインドアップローディング説

今回で、アプリドライヴを届けたのがミネルヴァであることがわかった。一方で、アプリドライヴが作られた経緯やアプモンの誕生までは語られなかった。確かなのは、アプリドライヴから電衛門の声がしていること、ハルの名前を呼んでいることだ。


現存する技術で音声の合成・死者の声の再現はできる。だが、任意のタイミングで孫の名前を叫ぶとなると、何らかの意思があるように思えてならない。つまり、アプリドライヴの通信しているサーバに電衛門の意識が存在している可能性がある。意識のアップロード(マインドアップローディング)といえば、映画『トランセンデンス』でフィーチャーされていた技術だ。死ぬ前に脳のデータをサーバにアップロードすることで、死んだ後でも活動できる。


もとい、この技術が実用化されるのはまだまだ先の話だ。もしアプリドライヴのサーバに電衛門の意思が宿っていたとすれば……面白い。ただそれだけだ。もし電衛門が悲惨な死を遂げたのであれば、それぐらいの救いは欲しい。もしくは、アプモンのデンエモンとして復活するとか……!?

 

よく考えればあの頃からあった技術

今回引っかかった点は、研究室のドアが自動ロックされていたことだ。電衛門はハルの幼い頃に亡くなっているのだから、その頃の研究室のドアがインターネットに接続されているタイプのオートロックとは考えづらい。IoTなんて最近の技術ではないか。


と思ったが。ちょうどあの頃に推進されていた技術に「ユビキタスコンピューティング」がある。要は、ユビキタスをオシャレに言い換えたものがIoT(Internet of Things/モノのインターネット)である。IoT推進の経緯は総務省ウェブサイトに載っているので、参照されたい。

 

総務省|平成27年版 情報通信白書|ユビキタスからIoTへ


いずれにしても、あの頃からオートロックをインターネットにつなぐ技術は存在していたと考えることができる。中学2年生のハルが幼かったのは、残念ながら13年前2004年以降の話だ。ちなみに、「古い」ビデオ(VHS)が使用されていたが、DVDプレーヤーの発売は1996年だった*6

 


人間の記憶というものはなんて曖昧なんだ!

 

 

新たな道

今回は物語の核心に関わる謎が明らかになるとともに、技術の歴史を感じさせる回(たかが60年なのに!)だった。技術関連の描写は事実に即しており、このアニメの本気がうかがえる。家族と敵との因縁という主人公要素を手に入れたハルと、タイムモンという強敵を前にしたガッチモンが今後どのような道を進んでいくのかにも期待したい。

 

 

関連記事

popncandyrocket1ban.hatenablog.com

*1:窓の外の風景から特定した。正義側がやっているので、地味に怖い

*2:人工知能は脳の部位と同じ役割をするコンピュータの集合体である。つまり、一部というのは一部のコンピュータのことと推測できる。

*3:彼の専門である計算機科学(もしくは計算幾何学)は実在する学問だ。

*4:チューリングは意味のある言葉ではなく、人名である。イギリスの数学者アラン・チューリングが考案したことからそう名付けられている。これ以下の出典は松田卓也『2045年問題 コンピュータが人類を超える日』4章 「意識の有無をどうやって確認するか」。

*5:以上、松田。

*6:【電子産業史】1996年:DVDの開発 - 日経テクノロジーオンライン

スポンサーリンク


プライバシーポリシーと当サイトの利用するサービスについて