ホビーアニメを観ていたらいつの間にかアホになっていた

現在放送中の子ども向け番組を中心に、アニメや特撮ドラマについて書いていく。毎話「感想」を書くわけではなく、気になった話数や一般的な議論に関する記事を書く予定だ。

スポンサーリンク

『宇宙戦隊キュウレンジャー』第1話 東映の「身の丈にあった」挑戦

壮大な物語は総動員の総力戦?

宇宙戦隊キュウレンジャーが初回放送を迎えた。異例ずくめの今作はあまりのスケールの大きさに、東映に実現可能なのか心配されたが、東映は無理のない範囲ですごいものを持ってきた。東映は今、これまで培ってきたテクニック、これまで作ってきた造形物、これまで作ってきた人脈……あらゆるものを使って、無理をせずに壮大な物語を作っている。第1話はそんな東映の心意気を感じさせる回だった。

 

[rakuten:jism:11633414:detail]

 

 

 

宇宙戦隊キュウレンジャーとは

88星座系を牛耳る「宇宙幕府ジャークマター」。そのレジスタンスである「リベリオン」の先鋭部隊が「宇宙戦隊キュウレンジャー」である。キュウレンジャーは星座の力が込められたアイテム「キュータマ」を使い、ジャークマターに立ち向かう。

 

第1話「宇宙一のスーパースター」

第1話では、シシレッドとなるラッキー及びオオカミブルーとなるガルを中心にストーリーが展開する。

 

ラッキーな出会い

ラッキーは宇宙航行中に惑星クロトスに不時着した。その頃、キュウレンジャーの3人がジャークマターと交戦しており、ラッキーが敵陣に不時着したことで形勢が逆転する形となった。みんなの宇宙を支配しようとするジャークマターに怒りを覚えたラッキーは戦闘員インダベーを生身で殴打した。


ラッキーはキュウレンジャーと知り合い、キュウレンジャーになるために、キュータマを探す旅に出る。しかし、その折、惑星ジャグジャグに墜落し、オオカミ男ガルに襲われてしまった。ラッキーはそれを見かねたキュウレンジャーに救われるが、ガルがキュータマを持っていることに気づいていた。

 

戦士の資質

ガルにキュウレンジャーになるよう迫るキュウレンジャー。だが、ガルは立ち向かう勇気を失っており、キュータマは反応しなかった。ガルの仲間は全員ジャークマターにやられており、ジャークマターに立ち向かうのは愚かだと思ったからだ。ガルは話を聞いたラッキーと衝突した。ラッキーはキュウレンジャーになり、ガルと一緒に戦う仲間になると約束した。だが、その時キュウレンジャーはまたしてもジャークマターの襲撃を受けてしまう。

 

運が努力に応えるとき

ジャークマターは、見せしめのためにラッキーを宇宙空間に放り出す。ラッキーの皮膚は凍り始め、もはや絶体絶命と思われた。でも、ラッキーは諦めなかった。そこにしし座流星群が降り注ぎ、シシキュータマが出現した。そのままラッキーはシシレッドに変身し、ジャークマターに応戦する。


宇宙船オリオン号がジャークマターの襲撃を受けると、カメレオングリーン達はキューボイジャーを出現させ、宇宙空間に飛び出していく。シシレッドは変身コントローラー・セイザブラスターの使い方を知らないが、運良くシシボイジャーを出現させる。シシボイジャーは運良くカメレオンボイジャー・カジキボイジャーと合体する。

 

ガルの決意

その頃、1人で地上の軍団に立ち向かっているオウシブラックはピンチになっていた。ガルは一族を滅ぼされた恨みとジャークマターへの恐れでいたばさみになるが、ラッキーの言葉を思い出し、ジャークマターと戦う決意を固める。オオカミブルーに変身し、オウシブラックとともに地上のジャークマターを倒した。そして、キューボイジャーに乗ってシシレッド達と合流。5体合体のキュウレンオーとなった。見事惑星ジャグジャグを救ったキュウレンジャーは残りの4人を探すため、新たな旅に出るのだった。

 

ゴーカイジャーとの差別化

私としては、放送前は『海賊戦隊ゴーカイジャー』とのネタ被りが懸念された。とは言っても、ゴーカイジャーが放送されたのはついこの間ではなく、6年前だ。結局のところ、ゴーカイジャーとは似ても似つかない仕上がりになっている。

 

ゴーカイジャーといえば、大きなガレオン船型の宇宙船に乗った宇宙海賊たちが地球に眠る宇宙最大のお宝を見つけるため、地球のスーパー戦隊の力を受け継いで戦う番組であった。メンバーは全員人間型で、舞台はあくまで地球である。ゴーカイジャーの敵は宇宙を支配し、数年前に地球を襲撃していた宇宙帝国ザンギャックであった。ザンギャックはゴーカイジャーに懸賞金をかけ、地球侵略と並行して打倒を狙っている。


つまり、ゴーカイジャーと共通する点は、

  • すでに敵の動きが活発化している。
  • 戦隊が宇宙の支配者から狙われている。
  • 初期メンバーに地球人がいない。

である。一方で、以下のような違いもある

 

宇宙を旅する

今回の舞台は地球ではなく、宇宙全体である。ゴーカイジャーは地球を守るスーパー戦隊の心を何も知らない部外者が学ぶという物語だったので、必然的に舞台が地球に限られた。しかし、今回は宇宙の支配者から星を解放していくという物語なので、宇宙全体を舞台にしている。こうした旅のメソッドは『烈車戦隊トッキュウジャー』で培ったノウハウがあり、無理なくできそうだ。ちなみに、1話を観る限りでは、宇宙感を表すためにヘルヘイムの植物(仮面ライダー鎧武)が再利用されている。ハリウッド並のCGがなくても、宇宙は再現可能なのだ。

 

小型メカの活躍

キュウレンジャーでは、ゴーカイガレオンのような大型メカではなく、キューボイジャーという小型メカが活躍する。1話の段階では、キュウレンジャーが母艦であるオリオン号から移動するためにキューボイジャーが使われており*1、敵戦闘機との戦闘にもこれが用いられている。ゴーカイジャーは主力商品であるゴーカイガレオン自体を基地としていたが、オリオン号は今のところ玩具化されていない。ボイジャーを主力商品とすることで、大きな宇宙を動き回るというキュウレンジャーの独自色が明示できていると思う。

 

メンバーが揃っていない

キュウレンジャーの物語はメンバーを揃えるところから始まる。ゴーカイジャーでは1話から全員が揃っていて、個別回で馴れ初めが説明された。玩具の販促の都合上、5人で始めるのは必然だったのだろう。

 

そもそも1話で戦隊が完成しないのはいつぶりだろうか。『炎神戦隊ゴーオンジャー』では、2種類ある変身アイテムと合体ロボの販促の都合上、2話でグリーンとブラックが加入するようになっていた。今回も9人もいる戦隊のメンバーを1話で全員紹介するのは難しく、しかもプロモーション的にも不都合なため、このような形になっているのだろう。

 

人間型ではないメンバーがいる

キュウレンジャーには、地球人と同様の姿を持っていないメンバーがいる。一方のゴーカイジャーは全員地球人と同じ姿であった。今でこそトッキュウジャーのザラムやジュウオウジャーのジューマンがいるが、当時はそうした怪人態は存在していなかったのだ。だが、6年後のキュウレンジャーでは、約半数が着ぐるみから変身する戦士になった。


とはいえ、スーパー戦隊としてはすでに着ぐるみから変身する戦士の前例がある。以前は「番外戦士」*2として、ロボット生命体などが変身せずに戦うケースがあった。『特捜戦隊デカレンジャー』の番外戦士・デカマスターは着ぐるみから着ぐるみという新しい変身の仕方を打ち出した。2012年の『特命戦隊ゴーバスターズ』でアンドロイドからスーツに変身するスタッグバスター(追加戦士)が現れてからは、怪人が人間に擬態したという設定の正義の戦士も出てくるようになっていった。


その結果が今回の9人戦隊だ。最近の特撮界隈では、こうした着ぐるみ戦士に人気声優が声を当てる傾向があり、今回も中井和哉さん、大塚明夫さんなどが参加している。「若手俳優じゃないなんてケチだ」とは思わずに、人気声優が演じる豪華な戦士を応援してほしい。


少し話はそれるが、キュウレンジャーは9人もいるということでこれまでにない色構成になっている。これまでほぼ追加戦士でしか登場しなかった橙・金・銀が初期メンバーの色で登場している他、レギュラーメンバーとしては初めて女性グリーンが採用された*3。お兄さんイエローという新機軸にも踏み出しており、メンバー構成は非常に挑戦的だ。

 

多彩な個人武器

キュウレンジャーは9人もいるのに、個人武器を持っている。ゴーカイジャーのときは共通武器しかなく、ゴーカイサーベルとゴーカイガンを使った武器の交換アクションが話題になっていた。だが、今回は共通の変身アイテムかつ武器のセイザブラスター、個人武器のキューザウェポンの二段構えになっている。キューザウェポンは共通の持ち手に個別のアタッチメントをつけることで完成する。アクション班としては、こうしたわかりやすい個性があることで殺陣が組みやすいことだろう。また、子どもの側もなりきり遊びの幅が広がり、楽しいと思う。問題は保護者がアタッチメントを買い揃えなければいけないことだが……

 

その他の挑戦

今回、エンディングがかなり挑戦的である。星の上に乗ってダンスをしているように見えるこの映像は、360度カメラで撮って加工したものだそうだ*4。360度カメラについてはNHKのウェブサイトで体験ができる*5。スマートフォンを持っている人は、YouTubeで「360 movie」などと検索すると、360度カメラで撮った動画が見られるようだ*6。対象層の子どもにはVRが推奨されていないため、今回の映像は平面のものにとどまっているが、技術の活用法としてはとても面白い。

 

ヒーローの資格

一応、本編の内容にも触れておこう。今回のテーマはヒーローの資格だった。戦う意志はあるが手段を持たないラッキーと戦う手段はあるが意志を持たないガルが対比されていた。これによって、ラッキーがどんなレッドなのかがわかった。ラッキーは常に自分が幸運であると信じ、運気を掴むためなら努力を惜しまない。そんなレッドだ。占いは信じるが、占いの結果を実現させるのは自分の力だと思っている。だから、不幸に見舞われ、怖気付くガルを叱責したのだ。


仲間、武器、目的


……今、戦うために必要なものは全て揃っている。あとは、本人の意志さえあれば戦える。一方のラッキーはキュータマがないため、戦士としての資格がない。それでも、ラッキーは生身で敵に立ち向かった。それだけ平和を願う心が強いのだろう。ラッキーは全ての宇宙を股にかけた旅人であり、宇宙の和を乱すものが許せないのだ。最終的に、幸運を捕まえるためにあらゆる努力をしたラッキーは、幸運にも戦士の資格を手に入れ、しし座流星群に乗って生還した。ラッキー!

 

歴代最速のゴールド・シルバー

次回、おそらくスーパー戦隊史上最速でゴールドとシルバーが登場する。7人のレギュラー戦士はまだ人類が体験している範囲であるが、どんな未知が待っているかわからない。2話でいきなり7人になって処理が追いつくだろうか? 子どもが覚えきれるだろうか? 不安はいっぱいである。

 

ただし、ひとつだけ確かなことがある。東映公式サイトによれば、クリス・ペプラーさん夫妻の協力でジェットデッキという未来的なスポーツを撮影で使用しているそうだ*7。YouTubeで動画を見たが、非常にエキサイティングなので、期待したい。

 

[rakuten:edion:10395835:detail]

*1:ボイジャーは探査機の名前で、電磁戦隊メガレンジャーのメガボイジャーと轟轟戦隊ボウケンジャーのダイボイジャーもこれにあやかっている。キュウレンジャーは「探査」に出かけているのだ。

*2:基本的にその戦隊の命名の法則から外れている戦士のことを番外戦士と呼ぶ。レギュラーとして戦わない戦士も番外戦士だが、11人もいる獣電戦隊キョウリュウジャーの戦士の線引きは難しいところだ。

*3:『トミカヒーローレスキューファイアー』には緑色のファイアー3がいるが、東映のスーパー戦隊シリーズではない。ちなみに、『レスキューフォース』では、東映のスーパー戦隊との差別化のためか、女性がレッドになっている。

*4:宇宙戦隊キュウレンジャー Space.1 宇宙一のスーパースター | 東映[テレビ]

*5:360°でみるニューススタジオ|NHK VR NEWS

*6:普通のパソコンでは見られない。

*7:宇宙戦隊キュウレンジャー Space.2 いくぜっ!怪盗BN団 | 東映[テレビ]

スポンサーリンク


プライバシーポリシーと当サイトの利用するサービスについて