親の仇とベイバトルで分かり合えるか?
今回の話は、ベイブレードバースト胸糞悪いエピソードぶっちぎりのトップと言って過言ではないだろう。イギリスのクラブチーム・ロイヤルズで活躍するガゼム・マダール(タイ出身)は、BCソルのシスコ・カーライルに個人的な恨みがあった。そうとは知らないBCソルは、連敗による遅れを挽回し、ワールドリーグに出場するため、最後の戦いに挑む。
今回はバトルアニメとしては王道だが、ベイブレードバーストとしては後味の悪い回である。
あらすじ
フランス・パリブレーダーズとの試合中に何者かの鋭い視線を感じたシスコ。その正体は、かつてシスコにベイを壊されたガゼムだった。当時のガゼムはとても弱かったが、道場破りのシスコにチームと自分のベイを侮辱された怒りから、無謀な戦いを挑んでしまう。その戦いで死んだ父の形見を壊されてしまった*1。
怒るガゼムに対し、個人的な恨みに関係なく正々堂々戦えと諭しに行く蒼井バルト。事情を知らないバルトは火に油を注いでしまったようだ。ロイヤルズはファーストブレーダーにガゼムを出すことを予告し、シスコも第一バトルに出ることを約束する。しかし、ムエタイのキックのように飛びかかってくる「マキシマム・ガルーダ」の攻撃は強力で、シスコの「クライス・サタン」はバースト(分解)してしまう。
試合は平行線を辿り、とうとう決着の第5バトルに突入した。シスコは直前のガゼムVSバルトのカードでガゼムのシュートの攻略法を思いつき、ぶっつけ本番で実践する。上空から飛びかかってくるガゼムの攻撃を、クライス・サタンの側面のローラーで受け流したのだ。シスコは次こそは壊すと宣言し、スタジアムにはガゼムの慟哭が響き渡った。
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全体的にギスギスしている2年目
以前も書いたが、『ベイブレードバーストゴッド』は主人公に対して敵が多すぎる。主人公の在籍するチームBCソルにおいても、半分ぐらいが主人公に味方しておらず、バルトの活躍に嫉妬して脱退するメンバーも出るほどとなっている。
エースだったフリー・デラホーヤがチームを抜けた後はどんどんギスギスしていく。ブレインでもあったフリーがいなくなったことから、チームは堕落。バルトたちに連敗の責任が押し付けられる。バルトたちが日本人の友人がいる別のチームに移るという噂が立つなど、よく思われていないことが身に沁みてわかる。
ついに出てきた親の仇
パリブレーダーズとのバトルで連敗をストップさせた喜びも束の間、ついにバースト史上最大級のライバル、親の形見を壊された人が出てきてしまった。これまでも弟の笑顔のために反則をするブレーダーが出てきたが、親の形見を壊されるという心臓を抉られるような経験をしたのは彼だけだ。
彼が壊されたのが親の形見だということを伝える人が誰もいないので、チームメイトのアーサー・ロレンス以外、「大好きなベイを壊されたことを根に持っている人」ぐらいにしか思っていない。彼は負けたことをすごく悔しがる人でしかないのだ。
今回は「ベイバトルは全力で戦った方が楽しい」というフォローもないので、本当に悔しいまま終わっていて、すごく胸糞悪い。ワールドリーグでリベンジするのだと思うが、個人的な因縁をこれほど引っ張るのも、バーストでは珍しい。
絶対悪がいない意味
ベイブレードバーストのよさは、絶対悪がいないことにある。だが、その意味は徐々に変わってきている。最初はベイバトルを通じて悩みを振り切るということが多かったが、ごくたまに、ベイブレードでは解決できない問題が出てきていた(シュウの故障、犬介の転校など)。
そんな中で、親の仇という和解困難な悪が出てきてしまう。その彼が主人公サイドにいるという事実には、目を覆いたくなる。もちろん子どもの舌も肥えているので、シリアスが増えていることには納得できる。だが、爽快感が消えているのが惜しいところだ。ベイバトルを通じて青春の爽やかな部分を描くのがベイブレードバーストではなかったのか?
青春の光と陰
逆に言えば、プリティーリズムのように青春の光と陰を描いている作品を好む人にとっては、すごく面白い展開になっている。たしかに暗い内容もあるのだが、だからこそ明るい部分が際立つと考えることもできる。バルトとBCソルメンバーとの関係、フリーとの関係を含め、長い目で見守りたい。
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*1:『バースト』のベイは分解されやすい構造になっているが、ガゼムのベイは文字通り破壊されている。