引退によるコンテンツの死を防ぐためにも
私が「アプリコット・レグルス*1」という2.5次元アーティストを追いかけている中で、心配なニュースが入ってきた。
「BanG Dream!」(以下、バンドリ)の今井リサ役の遠藤ゆりかさんが芸能界を引退するという報せだ。
この報せを受けて、2.5次元コンテンツが今後どうあるべきか考えた。
それは、キャスト1人とキャラ1人が密接に関わる状態からの脱却である。
(歌唱担当制については扱わないので、こちらの記事を参照してほしい。
2.5次元キャラが死ぬ衝撃
2.5次元コンテンツ・バンドリとは
バンドリは、バンド活動に励む少女たちを主人公にしたメディアミックスで、アニメやゲーム、マンガ、小説、ライブなどを展開している。
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遠藤さんが演じる今井リサは、ライバルバンド「Roselia」(ロゼリア)のベース担当であり、ライブでは遠藤さんが実際にベースを演奏する*2。
各種イベントやネット配信にも出演しており、まさに〈今井リサ=遠藤ゆりか〉という状態になっている。
キャストの成長とそのリセット
ベースを演奏していると書いたが、遠藤さん自体はこのコンテンツを通じて初めてベースに触れたそう。
リサもまた、ほぼ初心者という設定だった。
そのような意味でも、リサはキャストとともに成長してきた。
声優が遠藤さんではなくなることで、これまでファンとの間に紡(つむ)がれてきた今井リサの物語とイメージは根本から変わってしまうことになる。
もし、遠藤さんの代わりに新キャストが入ったとしても、そこにこれまでファンが愛してきた今井リサはいない。
それはまるで、死んだペットの猫の代わりに、同じ品種の同じ図体(ずうたい)の猫を連れてくるかのようなものだ。
キャラは消せない
2.5次元コンテンツで危惧すべきこと
ここまで遠藤ゆりかさんの引退について説明したわけだが、一般的な話に移りたい。
キャストがいなくなったとき、2.5次元の魅力が突如として牙を剥く。
キャラ1人にキャスト1人の状態では、キャストが変わるだけで全てが変わってしまう恐れすらある。
消えるキャラにはストーリーが必要
2.5次元コンテンツでは、キャストがいなくなったキャラを消すことは考えづらい。
もちろん、普通のバンドやアイドルなら、Aが脱退してBが新加入したということは考えられる。
しかし、2次元や2.5次元ではそれは難しい。いなくなることについても、前後のストーリーが求められるからだ。
脱退したキャラの扱い
強いていうなら、『NARUTO』の第七班は、はたけカカシとうちはサスケが脱退して、ヤマトとサイが加入している。
だが、キャラとしてカカシやサスケが死んだわけではないので、その後もしっかり登場している。
これは、いなくなるというストーリーをうまく活かした2次元作品である。
一方で、かつて、キャストが失踪したキャラを、死亡扱いにして退場させた特撮ドラマがあった。
急に話を変えるわけにもいかず、苦肉の策だったのだろう。今の2.5次元作品でそれをやっても、誰も受け入れないはずだ。
このように、2.5次元では、キャラが1人いなくなっても平然とコンテンツを続けることが難しい。
今はグッズもたくさんあるので、キャラが1人いなくなったら、売り上げに大打撃を与えるに違いない。
キャストが変わると魂が抜ける
キャラを消すことが難しいとすれば、キャラをそのままにして、キャストを交代させることになるだろう。
その場合、キャストありきで2.5次元キャラを作っていると大変なことになる。
例えば、筆者が今推している2.5次元アイドル「アプリコット・レグルス」の篠宮明佳里(CV.富永美杜)は、食べるのが大好きで、味覚が優れている。
ウェブ配信では、目隠しして水の種類を当てるなどの企画をやっていた。
それから、ある2.5次元キャラは出身地がキャストと同じになり、郷土を愛するという属性が加えられていた。
キャストと同化したキャラというリスク
そのほかのコンテンツでも、「キャストが◯◯だから、キャラも◯◯という設定にした」というものがあると思う。
本人の特徴なので、ものすごくリアリティがあるはずだ。
でも、その設定はキャストが変わってしまったら、通用しなくなる。
万が一キャストが変わったら、そのキャストはうわべだけで「私は◯◯」と言うことになるだろう。
本当にそれでよいのだろうか?
キャストが変わったらキャラが死ぬような作品にするのは、好ましいとはいいがたい。
そもそも過労になりやすい
企業によくある、代わりがきかないから休めないという状況は、2.5次元にもあると思う。
例えば、アニメや普通の舞台であれば、キャストの病気やけが、あるいは妊娠によって、代役を立てる場合がある。
だが、2.5次元では、ライブやウェブ配信など、キャスト本人に依存する部分が多いため、代わりが利かない。
歌唱担当と声優を別にしたり、舞台を別のキャスト・ダブルキャストにしたりするなどの対策はあるが、声優本人がやることに価値をおく作品も多い。
人気声優は掛け持ちが多い
俳優ならば、撮影中・稽古中は少数の作品に集中していると思う。
でも、声優はいくつもの作品を掛け持ちしながら、その上で個人のアーティスト活動などもしている。
こんな状況なら、過労で体調を崩してもおかしくはない。
企業でいうところの、「担当が1人しかいないので辞められると困る」状況は是正していかなければならない。
まとめ:持続可能な2.5次元を
ここまでの話をまとめると、以下のようになる。
- キャラとキャストの成長がセットになっているのは魅力的だが、キャストがいなくなれば、キャラは死んだも同然になる。
- (今の状態では)キャストがいなくなった際、キャラを急に消したり、キャストを交代したりすることは難しい。
- キャスト(特に声優)への負担は増えているが、代わりがきかないので休めない。そのため、負担の分散が求められる。
スタッフ・キャストみんなで作る作品に
つまり、上に書いたように、1人のキャラと1人のキャストがシンクロするのではなく、1人のキャラをたくさんの人で作り上げていくべきだと私は言いたい。
そうすれば、キャストが過労で引退するということも防げるし、1人ぐらいキャストが変わっても、作品に与える影響も少なくなる。
男性が主役の2.5次元コンテンツでは、すでにそうなっているものも多いが、女性が主役のものでも、同様にやってほしいところである。
私はこれまで2.5次元を絶賛する記事をいくつか書いてきたが、体調不良を理由にキャストが引退するとのことで、衝撃を受けている。
ハイクオリティでファンが楽しめる作品を作るためにも、運営側は対策をしてほしい。