ホビーアニメを観ていたらいつの間にかアホになっていた

現在放送中の子ども向け番組を中心に、アニメや特撮ドラマについて書いていく。毎話「感想」を書くわけではなく、気になった話数や一般的な議論に関する記事を書く予定だ。

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2016年秋アニメは中国アニメが目白押し 中国アニメってどうなの?

中国アニメの躍進

今期の深夜アニメは、中国に関連する作品が多い。中でも、『アイドルメモリーズ』は、アイドル作品が乱立する日本のアニメ市場にCGライブシーンを携えて、野心的に飛び込んできた挑戦作だ。主人公の名前が林薇薇(リン・ヴィヴィ)ということからもわかる通り、メインキャラの中に中国人と日本人を混在させ、交流させている*1

 

スタッフも同様で、日本人スタッフも多く関わっているが、中心的なメンバーには中国人スタッフもいる。中国ならではのトレーニングシーンもあり、アニメ終了後に放送される独創的な実写パートがチャームポイントになっている。このように、『アイドルメモリーズ』は日中共同制作という利点を生かし、独特の作品を作り上げている。

 

もちろん、今作以外にも魅力的な中国産アニメは存在する。今期は中国産アニメが目白押しで、筆者も驚愕している。まさに躍進してきたという印象だ。日本のアニメと異なる独特の雰囲気こそあるが、作品自体は舌の肥えた日本人でも満足できるものになってきている。中国産アニメは、日本の影響を受けつつも、着実に成長しているのだ。

 

 

日本人スタッフの起用

まず、日本に輸入されている中国アニメの多くには、日本人スタッフが関わっている。プロデューサーや作画スタッフなどに中国人が含まれていることが多く、作品の中に後述するような中国のエッセンスを感じることができる。だが、全てがMADE IN CHINAというわけではない。脚本などに日本人を起用することで、放送するのに恥ずかしくない出来になっていて、物語を楽しむことができる。アニメの本場になりつつある日本のスタッフを投入することで、作品のクオリティを担保しているというわけだ*2


ちなみに、脚本を日本人にする最大のメリットは、翻訳で台詞回しがおかしくならないことである。最近では上手くなってきたが、海外産アニメでは、翻訳によって意味や表現が失われてしまうこともある。元が英語のアメリカ産アニメ『レゴネックスナイツ』では、アメリカの有名人をモチーフにしたへっぽこチームのメンバーの名前が、全く関係ない日本語のダジャレのような名前に変わってしまっていた。騎馬戦が得意な槍使いジャウスティング・ビーバー(Jousting Bieber)は、ヒーハーという別物のキャラクターになっている*3

 

同じく英語脚本の『獣旋バトルモンスーノ』でも、「ミルク無しのシリアルはカラカラ」という意味不明の言葉が登場したことがある。最初から日本語にすることで、こうしたロスト・イン・トランスレーションを防ぐことができる。もちろん、日本語と中国語は文化圏が近いため、翻訳時に意味が失われることは少ないはずだ。

 

日本作品の模倣

中国産アニメでは、日本作品を意識した設定や描写がある。例えば、日本で放送されていないアニメ版『巴啦啦小魔仙(バララシャオモーシェン)』は、中国版プリキュアとして日本のサブカル界隈で広く知れ渡っている。このように、中国アニメ界隈は日本で人気のモチーフを分析して中国で模倣作を作るというある種のリバースエンジニアリングを行なっている。

 

他にも模倣の例はある。『トレインヒーロー』という作品では、意志を持ってロボットに変形する新幹線がレスキュー活動を行う。見た目が「超特急ヒカリアン」そっくりということで話題になったが、内容は、列車網が発達した未来の地球で列車型ロボットが上記のような活動を行うというトレインヒーロー独自のものになっている。ストーリーもCGもハイクオリティであり、決してパクリだらけの駄作というわけではない。

 

実写パートや再放送

中国の製作会社には、1年間週1回30分のアニメ番組を作る体力・資金力がない場合が多い。例えば、『ナノ・インベーダーズ』は30分番組を1年間放送したものの、放送枠がBSのみで(配信なし)、かつ作画のクオリティが満足いくものではなかった。前述の『トレインヒーロー』は、ハイクオリティのCGの代償として、同一の主題歌をオープニングとエンディングで2回放送し*4、ミニコーナーを挟まざるを得なくなっている。しかし、日本のアニメ業界にまだまだ及ばない中国アニメは、むしろこのミニコーナーによってクオリティを高めている。


『トレインヒーロー』のミニコーナーでは、実在する世界の列車について解説している。もちろん、『トレインヒーロー』は電車が好きな子どもを対象にしている作品だ。こうしたコーナーで本物の電車を紹介することは、子どもを惹きつけるという目的のための手段として、かえって都合が良いのだ。前述の主題歌も、途中から趣向を変えた。最初はカラオケ・バージョンを流しているだけだったが、途中から子どもが主題歌を歌う投稿動画を募集し、番組で放送するようになった。未就学児の子どもの親に番組を意識させる狙いがあったものと思われる。こうしたミニコーナーは、視聴者をより作品の世界観の中に取り込み、あるいは購買意欲を高めるために重要である。


例えば、今回の『アイドルメモリーズ』の実写パートは、番組を振り返るだけでなく、中国語のオタク用語を紹介している*5。実写パートには、メインキャラクターを演じる声優6人が集まり、衣装とメインアイテムの「アイドルリング」を装着して登場している。同じく今期放送の『侍霊演武:将星乱』のニコニコ生放送では、15分しかないアニメを日本語と中国語に分けて放送しているようだ*6

 

こうした放送形態は本来、アニメの配信をしないファン向けのニコニコ生放送や、ファン向けの有料イベントなど、すでに作品に深く入り込んだ人に向けて行うものである。しかし、まだ興味を持っていない人に向けて放送することで、作品への参加度を高めることができる。こうして、中国産アニメは、アニメに足りないクオリティを実写パートで補い、あるいは高めているのだ。

 

中国文化の振興

中国アニメでは、中国文化をモチーフにしている場合がある。例えば、『侍霊演武:将星乱』は、中国史をモチーフにしたアニメである。このアニメでは、主人公が武将のカードを使って戦いながら、失われた歴史の謎に迫っていく。こうした「中国と言えば、これ」というアイコンを押し出していくことで、中国のアニメを印象づけるのが狙いなのかもしれない。他にも、『ナノ・インベーダーズ』は五行説を元にしたエレメントパワーで戦い、相克・相生*7を駆使している。五行説自体は多くの人が知っているが、相生まで踏み込む作品は他にはないと思う。こうした内容も、前述の実写パートと同様、少し為になる中国の情報だと言えよう。


一方、為にはならないが、中国らしさがある設定や描写もある。『アイドルメモリーズ』ではメインキャラの中の2人の名前が中国名である。日本では、中国人名が日本語読みになりがちだが、徹底して中国語読みになっている*8。トレーニングは日本の『アイカツ!』に近いものもある*9が、ペットボトルを2つ積み上げて平均台を渡るなど、中国雑技団を意識した内容もある。もはやアニメは日本産かアメリカ産が中心になっており、「これは中国の作品です」と主張しなければ、中国産だと認知されないのだ。

 

好き嫌いはやめよう!

見てきたように、中国アニメは日本の影響を受けつつも、自身の文化を取り入れながら進化を続けている。前述の通り、クオリティは担保されているので、ぜひ中国産のアニメをご覧いただきたい。そして、この際なので言っておきたい。日本人以外が参加しているからと言って差別するのではなく、しっかり観て受け入れよう。今や外国の作画スタッフは日本のアニメに不可欠になっているのだから、「日本産」アニメを見ても、外国産アニメを見ているのとあまり変わりがないはずだ。

*1:こうした取り組みは、すでに日韓合作の『プリティーリズム・ディアマイフューチャー』がやっているので、初めての快挙というわけではない。同作では、韓国系の声優を起用したり、ライバルユニットのモデル兼主題歌アーティストとして、韓国のアイドルグループを採用したりしている。

*2:逆に、日米合作の『獣旋バトルモンスーノ』では、日本人ではない人が脚本をやっていて、日本の脚本にはないテンポよい展開になっていた。

*3:せめて、ジョウバーという名前にすれば、日本語でも通じたかもしれないのだが。

*4:再放送時は、電車を意識したエンディング主題歌を新しく作っている。

*5:若手の女性声優に中国語講座をやらせることで、中国語は可愛いというイメージを視聴者に植え付けたいのだろう。

*6:https://twitter.com/SOULBUSTER_/status/784183460977971200

*7:エレメントに相性があったり、同じエレメントを2つ合わせると属性が遷移したりする。

*8:ただし、同じく中国名の登場人物がいる『侍霊演武』では日本語読みになっていて、全作品で徹底されているわけではない。一方、中国人名を使用している『Bloodvores』では、中国語読みである。『トレインヒーロー』では、主人公たちトレインの名前が世界の数字になっていて、主人公は赤い新幹線「アール(2)」である。

*9:シリーズ構成の大野木寛氏は、『アイカツ!』に参加していた。

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