お気持ちをなかなか表明しない3年生
『ラブライブ!サンシャイン!!』もとうとう第6話だ。これまで、2年生の高海千歌・桜内梨子、1年生の黒澤ルビィ・国木田花丸・津島善子らがお気持ちを表明してきた。1-2年生が揃った今、スクールアイドルにトラウマを持つ3年生3人がどのようにお気持ちを表明していくかが問われている。
3年生は小原鞠莉、黒澤ダイヤ、松浦果南の3人だ。鞠莉は浦の星女学院の高校生理事長、黒澤ダイヤは同じく生徒会長、松浦果南は現在休学中で、父のダイビングショップを手伝っている。鞠莉は千歌達のスクールアイドル活動を応援しており、部活動の最低人数に満たないスクールアイドル部に試練を課し、達成させることでこれを承認した。ダイヤは千歌達のスクールアイドル活動に反対しており、千歌が生半可な想いと知識でスクールアイドルをやろうとしていることをよく思っていなかった。妹のルビィがスクールアイドルをやることに反対はしていないようだ。果南は一歩引いたところにおり、千歌達のスクールアイドル活動について明確な評価は下していない。3人に共通することは、自分達がスクールアイドルをやりたいという気持ちを隠しているということだ。この3人がスクールアイドルに対してお気持ちを表明していかなければ、浦の星女学院スクールアイドル部Aqoursは完成しないだろう。この記事では、3人のここ最近の動向をまとめた。
- 小原鞠莉は欧米人らしく見えて、実はとても日本人的に交渉している。
- 黒澤ルビィはプライドが高く、自分がスクールアイドルになることを躊躇している。
- 松浦果南はスクールアイドルから身を引いている。
小原鞠莉
小原鞠莉は、スクールアイドル復活のため、日本人的に交渉を進めている。鞠莉は統廃合による廃校を阻止するため、理事長になったことを示唆していた。3話からずっとスクールアイドルを「復活させるため」各所に根回しをしており、前述の通り、千歌達に体育館を埋めたらスクールアイドル部を承認するという試練(=チャンス)を与えた。この時の鞠莉の意図は厳しい試練を与えて千歌達を叩き潰すことではなく、積極的にスクールアイドルを承認することだ。鞠莉はノリノリで理事長印を押していた。新しいことに積極的な姿勢を見ると、西洋人的に感じるかもしれない。現在、あらゆるところでポケモンGOが規制されているのを見れば、日本人は新しいものを嫌うということにも納得がいくだろう。
このように、鞠莉は大いなる計画を遂行しているように見えるが、一方、実は割と日本的に行動しているようにも見える。国際政治経済学では有名な話だが、西洋の企業は法律や紙面上の契約を重視するのに対して、東洋の企業は慣習や相手との関係性を重視する。鞠莉がダイヤや果南、Aqoursに根回ししているところを見ると、鞠莉は非常に日本的に思えるのだ。それから、鞠莉は交渉相手に対して「スクールアイドルやろうよ」などと直接的な表現はなるべくしないようにしている。天皇陛下のお気持ち表明に関するニュースで、海外のテレビ局の特派員が、日本人は気持ちを直接的に表すことを嫌うなどと言っていたが、まさにその状態だ。実際、真剣な話をするときはわざとらしく外国人風に話すのをやめて、間接的な表現をしている。鞠莉がやっているそれこそが日本人らしい交渉術なのであろう。
黒澤ダイヤ
ダイヤはスクールアイドルが好きな気持ちを抑え込んで、スクールアイドルになることから逃げている。ダイヤはスクールアイドルが嫌いになった風を装っているが、本当は大好きだ。2話では、千歌にμ’sに関するクイズを出している。4話の回想でも、妹と一緒に雑誌を読んでいる様子が描かれていて、エリーチカが好きであると明言している。妹のルビィが、自分(ルビィ)の好きなスクールアイドル活動をすることは結局認めているが、5話で破廉恥な動画をネットに公開したときはとても怒った。それは妹のルビィに破廉恥な真似をさせたことに対してではなく、あからさまな人気取りの動画を上げて、ランクを上げようとしたことに対してだった。ダイヤはスクールアイドルに対して高い理想や信仰を持っていて、自分のプライドも高い。そのことがダイヤを「より一層」ステージから遠ざけているのではないだろうか?
もちろん、本当はスクールアイドルがやりたい。第6話にて体育館のステージで踊っていたのは、紛れもなく、アイドルの踊りだった。プリズムの煌めきすら感じられた*1。彼女はreluctant(忌避している)ではなく、hesitant(躊躇している)なのだ。妹がスクールアイドルに打ち込んでいる様子は肯定的に受け止めているが、失敗させたくはない。後述の回想からわかる通り、ダイヤ達は過去にスクールアイドル活動に失敗しているらしい。ダイヤの立ち位置は朝ドラのお母さんといえばわかりやすいのかもしれない。いずれにしても、ダイヤは自分がスクールアイドルになることを躊躇していたのだ。
松浦果南
果南は今、遠い場所にいて、スクールアイドルに触れてすらいない。事前情報を知らないと、モブキャラかと思うほど、物語から遠い存在だった。4話の階段ダッシュのシーンでは、中腹で息を切らすAqoursの前に、息ひとつ切らしていない果南が現れた。そもそも、Aqoursが階段を駆け上っているのは、階段を駆け登れないぐらいではライブができないと思ったからだ。果南は階段ダッシュが日課だと言っている。これは、果南がアイドルに未練があることをほのめかしている。ただし、千歌達がラブライブに出場するために階段を上っていることを釈明すると、果南はあまり興味のないふりをして「頑張りなよ」と言っていた。アイドルのために走っていることを周りに悟らせないようにしているのだ。
休学していることも、躊躇して一歩引いている果南の姿勢を象徴している。鞠莉に促されてこれから復学するようだが、その交渉の過程にて、果南はとても悲しそうだった。6話では、鞠莉に果南の力が欲しいと言われ、果南は涙を流していた*2。4話の同様のシーンも、髪が潮風に揺れ、潮騒・海鳥の悲鳴が聞こえるなど、非常に悲しげなシーンだった。そして、ダイヤの回想シーンも印象的だ。ダイヤと鞠莉と3人でステージに立ち、歓声を浴びるのだが、果南が振り返った時に何かがあったようである。観客が一人もいないならその衝撃がわかる気がするが、歓声があったのでそれ以外の何かがあったのだろう。このシーンの謎は来週明らかになるのだろうか?話を戻すと、果南はスクールアイドルの現実から離れるために、学校から身を引いているのだ。これまでも梨子や善子に再起を促している千歌だが、千歌が親しい果南にどう対応するかが期待される。
以上のように、浦の星女学院にはお気持ちを表明していない3人の3年生がいた。これまでも散々指摘してきたが、アイドルアニメは自分の尊厳を高めるためのアニメだと思うので、この3人にも自分を主張して欲しいと思う。