第20話「情熱とプライド!」
今回はいわゆる販促上のノルマではないドラマ回だった。
アイカツシステム一切なしの撮影で、運転の合成シーンを除いて、ほとんど本物で撮影している。大物俳優西太陽が主演する映画「ボディバード」に西のボディガードのバード役で出演することになった如月ツバサだったが、西は陰湿にツバサをいじめた。どうせ大人の都合でねじ込まれたアイドルなんだから、アイドルらしくしろというのだ。
ところが、スタントマンが急遽出演できなくなったことで事態が急変する。ツバサは生身で崖を飛び降り、走らなければいけなくなった。アイドル生命を危険に晒す行為だというスタッフに対して、ツバサはやりますと言った。とは言うものの、崖は本当に怖かった。だが、決断をして崖を飛んだツバサは土煙の中から現れた。西は思わず、「どうしてそこまで」と台本と異なる台詞を言うが、ツバサは全てを賭けていると答えるのだった。
この回は、如月ツバサの女優魂をテーマにしていたようだが、裏には別のテーマがありそうだ。『アイカツ!』では芸能界の裏事情をそのままストーリーに入れ込んだ回があったが、この回は、それに類する。ドラマ回・ドラマオーディション回と違い、場面設定は撮影所だった。もちろん、ドラマ回やドラマオーディション回は撮影現場で行われるのだが、今回はドラマのストーリーの内容にあまり切り込んでいなかったので、それらとは別物であった。そのため、撮影現場の様子が詳細に描かれていた。
『アイカツ!』で言えば、第90話「ひらめく☆未来ガール」に近いかもしれない。あの回は、ミュージックビデオを撮影する霧矢あおいに星宮いちごが差し入れをする様子が描かれていて、ミュージックビデオの撮影の段取りや現場の様子が紹介されていた。今回は、映画の撮影現場の様子というわけだ。そうした現場の裏事情というのが今回のサブテーマであると考えられる。
スタントとアクション
スタントのシーンでは、ツバサの本気を見ることができた。たしかに、世の中、アクションがNGの俳優(女優)もいる。でも、いいアクション監督や先輩が現場にいれば、できると言う場合もある。今回の場合は本来ワイヤーがあったり、事前の訓練があったりするところをぶっつけ本番・ワイヤーなしで一発撮りしている。それだけツバサの女優魂が強かったということだろう。ちなみに、冒頭の運転シーンではトラックの荷台を使っていたが、これはよくあるらしい。数年前の『ライオンのごきげんよう』で仮面ライダーに出演していた俳優がそれについて話していたのを覚えている。これはもちろん、免許を持っていない法定年齢以下の俳優に運転をさせられないということもあるが、嘘をついた方が綺麗な絵を撮れる(&作れる)ということもあると思う。
撮影現場見学のルールとマナー
今回、撮影見学のルールとマナーがいくつか紹介されていた。今回はそもそも、虹野ゆめ達が映画の撮影現場に忍び込むという最悪のやり方をしており、本来であれば謝罪では済まない。一般人に対してであれば、スタッフは何の撮影をしているかまでは教えてくれるのだろうが、彼女達はあくまで事務所所属のタレントである。正規のルートを通していないので、非常にまずい。俳優の卵ともあれば十分配慮すべきはずであり、ツバサの言っていたことではないが、確実にスタッフに迷惑がかかる。今回、ゆめ達は昼食を準備しておらず、S4の炊き出しでなければ相当迷惑がかかっていたはずだ。
撮影中に音を立てないことは、新人声優の苦労話にもよく登場することだが、ドラマや映画の撮影現場でもそれは同じだ。映像作品の場合、外野が映らないようにする配慮も求められる。これは個人的な付け足しだが、荷物にも配慮すべきだと思う。野外ロケに大荷物で来てしまうと、荷物の置き場に困るし、置いた荷物が映ってしまう危険がある。大切なことは、自分が「いない」環境を作ることだ。
アイドルのドラマ出演
アイドルのドラマ出演は、たしかに、事務所の権力でねじ込まれてというケースが多いと思う。しかし、中には本当に演技ができたり、演技の才能があったりする人もいる。アイドルの時はお花畑のようなキャラクターなのに、役に入るとお花畑を荒らす野獣のようになる人だっているはずだ。話題の連続ドラマで主演を務めている共演者のことを(演技力を含め)よく知らない西は、本当にプロなのか疑いたくなる。
今回、西はそのドラマに出てきたアイドルに辛辣な言葉をかけるわけだが、これは『アイカツ!』のときにはなかった要素だ。スタッフが全員イエスマンで、登場人物もだいたいアイドルだったので、何も言われなかった。強いて挙げるとすれば、神谷しおんの「モノマネには負けない」ぐらいだっただろうか。そうした社会の厳しさをきちんと示すところは、前シリーズとの大きな違いだ。
今回は、映像の撮影現場の裏事情といったところがサブテーマにあった。ゆめのやり方には感心しないが、普段一般人が触れることのない映画の撮影現場の事情が(過度に!?)リアルに描かれていたと思う。次からはきちんとプロセスを踏んで撮影所を見学してほしい。