ホビーアニメを観ていたらいつの間にかアホになっていた

現在放送中の子ども向け番組を中心に、アニメや特撮ドラマについて書いていく。毎話「感想」を書くわけではなく、気になった話数や一般的な議論に関する記事を書く予定だ。

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『アニメディア10月号』「アイカツスターズ!の音楽を考える」を受けてのリアクション

『アイカツスターズ!』の音楽制作陣のお仕事とは?

『アニメディア10月号』*1には、『アイカツスターズ!』の楽曲を手がけるonetrapの小林健代表取締役のインタビューが掲載されていた。具体的な内容にはできるだけ踏み込まず、そこから着想を得て色々と考えていきたい。そもそもこの記事は、半分が作詞・作曲時の工夫、半分が音楽制作の体制や制作時のテーマについて触れている。下半分はいわゆる業界研究に役立つ内容になっているかもしれない。それを踏まえつつ、本題に入っていく。

 

 

[rakuten:book:18151079:detail]

 

音楽家って作詞・作曲するだけじゃないの?

アニメやドラマあるいは映画の世界で軽視されがちなのは、音楽の製作陣の存在だ。特に、主題歌を歌うアーティストが「原作も読まずに関係ない曲を提供したのではないか」とか言われることはままある。もちろんこうしたケースは実際にあるのかもしれないが、一方で楽曲を作り込んでいる作品は作り込んでいるのだ。特に、『アイカツスターズ!』(ランティス、ワントラップ)は企業ぐるみのタイアップなので、アニメ側の製作陣とのつながりが強いようだ。劇場版『KING OF PRISM by PrettyRhythm』(以下、キンプリ)(エイベックス)は個別の作詞家・作曲家にお願いしているようだが、クリエイターはスタッフからいくつか注文を受けた上で、楽曲を作っているようだ。クリエイターは自分勝手に音楽を作っているのではない。クリエイターは、作品全体や曲を聴いてくれる人のことを考えて楽曲を作っているのだ。

 

以下、特に注釈がない限り、『KING OF PRISM by PrettyRhythm』の話題は以下の本の69-71ページを引用元とする。

[rakuten:book:17920461:detail]

 

クリエイターはクライアントに従う

クリエイターの仕事は、クライアントの要件に従って、楽曲を作ることだ。前述の通り、クリエイターは好き勝手に楽曲を作るわけではない。楽曲に与えられた背景や物語の毛色・進捗状況に合わせて、作詞・作曲・編曲するのである。スタッフからの細かい注文を受けて楽曲を作り、それに従って作った上で、初めてクリエイターのオリジナリティーが付け加えられる。クライアントの期待を超える成果物というものは、このオリジナリティーにかかっているのだろう。しかし、オリジナリティーしかなくまったく要望からかけ離れているものは、当然期待外れとして却下される。音楽クリエイターには、クライアントの要望に応えるという最低限の義務があるのだ。

 

配慮とオリジナリティー

クリエイターは楽曲の置かれるべき状況に合わせ、楽曲を作る。楽曲には、使う時間・場所と意図がある。それを意識して楽曲を作らなければ、楽曲が文脈から浮いてしまい、活きてこないのだ。例えば、海辺で恋人同士が抱き合うシーンにX JAPANの「紅」が使われていたら、ムードをぶち壊してしまうだろう。そこに使うよう意図して作られた楽曲でなければ、うまくフィットしないのである。


そのようにして作った楽曲にオリジナリティーを与えるのは、クリエイターの配慮である。例えば、キンプリの主題歌である『ドラマチックLOVE』の作曲・編曲をしたYuさんは、中学生の恋愛をイメージした曲というオーダーに対して、「切なさ」と「希望」というテーマを追加した。おそらくただ眩しいだけでは楽曲としての魅力が半減していたし、映画を観た人の心に残らなかっただろう。『アイカツスターズ!』も独自の配慮で、楽曲や作品の価値を高めているようで、印象に残る曲やシーンも多い。作品の印象を強くしているのは、実は音楽クリエイターなのかもしれない。

 

楽曲と文脈

では、配慮をするために必要な要素とはなんだろうか?配慮をするためには、文脈が必要である。よくアニメやドラマのタイアップアーティストが、原作や脚本を読ませてもらったとインタビューで答えている。作品のタイトルや基本設定だけでは間違った方向に空想が広まってしまう可能性があるし、何も知らない状態で作れば、どんなにいい曲であっても作品に合わない。でも、文脈を読み取ることで、どのような楽曲にすればよいのかわかるのだ。例えば、特撮ドラマの挿入歌であれば、どのような姿のヒーローがどのような戦法で戦う時の楽曲かを知ることで、楽曲の方向性は定まる。炎にも情熱の炎と優しく包み込む炎がある。まさか優しく包み込む炎の戦士に情熱的なサウンドを割り当てれば、場違いにもほどがあるだろう。逆に、文脈を理解して「オーダーにはなかったが、このようなヒーローなのでこのような曲調にした」というのであれば、期待を超えた楽曲になるはずだ。配慮というものは、文脈を理解して初めてできるのだ。

 

意図に合わせて楽器を変える

今回のアニメージュの記事でも同様のことが書かれているが、編曲者は使う楽器によって世界観を作っているらしい。キンプリのYuさんも、切なさと希望を表現するために、より表情が豊かな生の楽器を使用したと言っていた。これにより、切ない別れの後に待つ希望の出会いを表現したそうだ。まさにキンプリの文脈に合致していて、素晴らしい楽曲である。


アニメやドラマの主題歌は所詮タイアップとみなされ、劇伴も空気に徹することが多い。だが、そこには、クリエイターの試行錯誤と配慮があるのだ。

*1:38ページ。次ページには、虹野ゆめと桜庭ローラのピンナップあり。

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