意外と規制がゆるい最近の女児向けアニメ
現在、鉄道をテーマにした女性キャラクターのイラストが不適切なのではないかという話題が盛り上がっている。
その中で一定のシェアを占めているのが、「萌え」という文化は大衆向けのイラストと相容れないという意見だ。
なるほど大衆向けのイラストやアニメは規制が進んでいるように思われる。
例えば、『ドラえもん』のしずかちゃんに関する描写がやや穏便な表現になってきているというのも度々話題に上がっている。
だが、女児向けアニメという面で見ると、実は表現の自主規制が緩くなっているようだ。
最近では女性の身体描写の規制が緩和されており、海で平服を着て遊ぶことも減ってきている。
行き過ぎた規制はなくされつつあるのだ。
(2018/8/13 一部文言を書き換え。)
行き過ぎた健全化と逆説的な不健全化
清純を追求した結果、かえって不純になっている作品もあった。
女の子同士の友情を描くはずが、ほとんど男女間の恋愛と変わらなくなっているというのが一例だ。
男女の恋愛は不健全なので、同性同士の踏み込んだ友情を描く。
でも、友達同士ではしないようなことを描写するアニメもあった。
結果として、不純な恋愛になってしまったら本末転倒である。
もちろん、解釈する側が友愛や友情に対して豊富な引き出しを持っていないことも問題だ。
でも、普遍的に問題のある描写なら、はじめから入れないほうがよい。
このように、不健全な描写を規制すると、逆説的に描写やその描写に対する解釈が不健全になってしまう場合がある。
そういった描写は「ないなら、ない」でよいと思う。
自主規制の解除
自主規制を解除することで、自然な表現が増えてきている。
「私服のまま浜辺で遊ぶ」は減少
『ハートキャッチプリキュア!』以降、規制のデパートとなっていたプリキュアシリーズも、最近では自主規制を緩めている。
一時期は私服のまま砂浜で遊び、海では泳がないという謎の夏休みを過ごしていたプリキュア。
『Go!プリンセスプリキュア』で久しぶりに海やプールで泳いだ。
不適切な表現はなく、あくまで海で泳いだり、遊んだりする目的であることを強調した内容であった。
競合アニメは水遊び回に寛容
そもそも、競合する他の女児向けアニメでは、海やプールで遊ぶ回は普通に放送されていた。
しかし、不適切な描写が問題になることはほとんどなかった。
あるとすれば、それは『プリパラ』のエンディング映像だろう。
差し替え画像では、漁船に乗ったキャラクターのサロペットの肩紐が外れているなど、規制に反抗する意図が感じ取れた。
いずれにせよ、水遊び回が広く容認されているというのが現状だ。
身体描写の省略が緩和
同様に、『アイカツ!』では、女性の身体描写が大幅に省略されていた。
これにはおそらくCGモデリングなどの都合もあったのだろうが、リニューアルされた『アイカツスターズ!』では、それが緩和された。
でも、大人向けアイドルアニメと違って、不健全な描写は一切ない。
それが大衆向けと深夜アニメの大きな違いだろう。
もちろん、児童向けアニメの描写が性犯罪者にエサを与えているという意見もあるとは思う。
だが、露骨な描写がない限り、不健全な表現・不適切な消費とみなすのは尚早である。
恋愛と健全性
恋愛描写は適切な理由づけをすることで、健全性を担保している。
子ども向けアニメでは不健全な大人の恋愛は描かれない。
女児向けで正当化されている恋愛は、努力によって成就した愛や、ヒロインや相手の男性の苦難を共に乗り越えたことから生まれる愛である。
少女を助ける男性
この内容については他の記事にも書いてあるので深くは言及しないが、最近では『アイカツスターズ!』*1がその様相を呈している。
主人公の虹野ゆめは、ある特殊能力を使うことで身体や喉に大きな負担がかかってしまう。
いけ好かない男子・結城すばるはそのことを知り、自分にも何かできないか模索している。
これまでの前例からすると、2人の関係は今後、進展すると思われる。
このように苦難の先に成就する恋愛は、視聴者にとって否定しがたく、不満が生まれにくい。
適切な表現をすることで、恋愛は許されるのだ。
男児向けアニメの規制
このように、女児向けアニメにおいては、行きすぎた規制はなくなりつつある。
ちなみに、男児向けアニメでは、「女性キャラクターやそのキャラクターが使う販促アイテムを出さなければ不適切である」という考えがなくなってきている。
現在放送中の『ベイブレードバースト』では、少女でベイブレードをプレイするキャラクターはほぼいない。
つまり、売上につながらない女性キャラクターが排除できるようになったのだ。
ただし、男児向け作品では、ネットショッピングの発達や原作のゲームなどの関係で、女性キャラクターが出しやすくなっている。
利益につながるということさえわかれば、そうしたキャラクターは復活するだろう。
*1:ちなみに、『アイカツ!』では、ある大人の男性が憧れの対象であるという描写はあったが、男女が恋愛に至るという描写はなかった。主人公を取り巻く若い男性は、あくまでアドバイスをする人であり、恋愛には発展しなかった。