ランスとデビの絆
『パズドラクロス』第18話は、パズドラクロスにしては感動させる内容だった。この回では、ランスとデビの過去が20分ほぼフル尺で語られた。何もかもがネタバレになってしまうので、「続きを読む」から進んでいただくか、ブラウザの戻るボタンなどで戻っていただきたい。
『パズドラクロス』第18話「闇に輝く誓い」
幼少期のランスはホームレス
夜、謎の男が川にたまドラの卵を流した。一方、みすぼらしい格好の少年ランスが街の中を走っていく。橋の下で浮浪者に金を乞われるが、ランスは持っていなかった。住処についたランスは、懐からナシンゴの実と、飲める綺麗な水を入れた瓶を取り出す。のちの説明で、ナシンゴを採るには山をひとつ越える必要があると判明するので、ナシンゴの実は盗んできたものだと思われる。
両親がドロップインパクトで死んだランスは、一人でホームレス生活をしていた。龍喚士の間に生まれた子のようで、ドロップを見て、触ることができる。そんなランスの前に、たまドラの卵が流れてきた。
ランスとデビの出会い
温めなければと思っていると、まもなく卵が孵化した。紫の光とともに誕生したのは、黒いたまドラだった。最初は動きがおぼつかなかったが、水とナシンゴを与えると元気に動き、喋り出した。大切な実を食べてしまったことを反省してか、食べ物を探し始めるが、近くには食べられるものは何もなかった。
デビの献身
翌朝、そこにたまドラはいなかった。たまドラは市場でナシンゴを見つけるが、店主にナシンゴを買うにはお金が必要で、野生のナシンゴは山をひとつ越えた先にしか自生していないと言われた。たまドラは山を飛び越えようとするが、失敗する。しかし、偶然、ストリートミュージシャンを発見し、一緒に踊ることにした。
数日後、おひねりのお金が貯まり、たまドラはランスのためにナシンゴをたくさん買った。ランスはたまドラに感謝の気持ちを述べ、デビという名前もつけた。デビはミュージシャン達から感謝する人には様をつけるものだと教えられたので、「デビ様」と呼ぶデビ、と言った。デビはミュージシャンから借りてきたハサミで、長かったランスの髪を切った。
ランスとデビの別れ
ランスは成長し、かくかくしかじかでドロップを使う修行をしていた。ランスは怯えている野生のモンスターにもドロップを与えるような優しい子だった。デビはやはり、踊りでおひねりを稼いでいた。しかし、飛んで帰る途中、森にナシンゴを落としてしまう。デビは拾いにいってしまうのだが、落ちた先ではドロップインパクトが起こっていた。
必死の思いでコンボを繋げたランスはドロップインパクトを一瞬で収束させ、闇の古老ダフネスに目をつけられた。ランスは力を使ってしまってぐったりしていたが、そのまま古老に連れて行かれ、デビは取り残された。デビはストリートチルドレンであるランスのたまドラとは考え難いと判断されたのだ。デビには、ランスが両親からもらって大切にしていた、木箱*1の中にある帽子と服を取りに行くことも、ランスに会うことも許されなかった。
ランスとデビの再会
時は過ぎ、デビはグレてギャングの首領になっていた。そこに成長したランスが現れ、ギャングを討伐した(ここでオープニング挿入歌)。しかし、ランスは闇の古老から命じられ、デビを直属のアシスタントにするため、迎えにきたのである。デビはランスに感謝し、ランス様と呼ぶようになるのだった。次回、闇の古老に呼ばれたデビは、ある任務を遂行する。
ランスとデビに対する印象の変化
この話数を一言で表すと、「ランスとデビに対する印象の変化」という言葉に尽きるだろう。これまでランスとデビは、「強いが、いけ好かない奴ら」という描写をされていて、デビがランス様を大好きという断片的な情報しか提示されてこなかった。しかし、それがこの回で変化する。
デビは身寄りのないランスを支えてきたが、事故をきっかけに引き剥がされてしまう。だが、亡くなった両親とは対照的に、感動的な再会を果たした。不遇な幼少期と離れ離れになった過去という事実が明かされたことで、ランスとデビの株がうなぎのぼりになった。
「ランス様」
ランス様という呼称の理由が明らかになったことも、この回の感動的な要素だ。これまで、デビはあたかも「ランス様の忠実な部下」のようだった。しかし、「様」というのは、上の立場にある者への敬意ではなく、感謝の気持ちを表す言葉だった。こうした経緯が明らかになることで、視聴者もランス様と呼びたくなってくる。ランスがデビ様を迎えにきてくれたことで、ランスはランス様に変わり、2人の関係が双方向になったシーンは非常に感動的だった。
非情な竜人、純粋な子ども
感動と同時に湧き上がるのは、ランスがシビアになった理由である。あんなに可愛らしくて優しかったランスがこんなに冷たくなっているのは、古老に育てられたからだろうか? これまで、竜人は人間に比べて人情に欠けるというような描写をされてきた。だが、このエピソードを考慮すると、実は竜人社会という環境が彼らをそうさせているのではないかと、想像を掻き立てられる。唐突ではあるが、ランスとエースの間に友情が築かれ始めている。人間との関係の中で、彼が変わっていく様子が描かれることを期待したい。
*1:坂本千夏さんはしゃがれた声で演じられているので聞き取りづらいが、木箱だった。