仲間に支えられ成長するゆめ
『アイカツスターズ!』第35-36話では、虹野ゆめが不思議な力に対する恐怖を乗り越え、成長する様子を描いた。学園長の理不尽な要求に耐え、ゆめは同じ能力を持つ白鳥ひめやライバルの桜庭ローラ、そして、同じ能力をもつ伝説のアイドル・雪乃ほたるらの協力を得て、逆境を乗り越えた。それぞれの想いが錯綜する中、ゆめは大切なことに気づかされるのだった。
第35話「選ばれし星たち」
不思議な力によって声を失うかもしれないという恐怖に囚われたゆめは、ひめに助けを求めた。ひめは実力を伸ばすことで不思議な力に頼らないようになったというが、ゆめは恐怖に囚われて泣くばかりだ。そんな中、諸星学園長はゆめをある場所に連れ出した。ゆめをひめのライブに出演させようというのだ。学園長はゆめの才能を潰さずに開花させたいのだが、ゆめは悲観的な妄想からステージに立てずにいる。
そんなゆめに対しひめは、ゆめの好きな秋のプレミアムドレスのカードを渡した。ひめもゆめの気に入っていた冬のプレミアムドレスを着てライブに臨んだ。結果として、本番のステージではゆめの力は発動しなかった。ステージとしては成功だったが、ゆめが一人でステージに立つことについては不安が募るばかりだった。
第36話「虹の向こうへ」
今度はホールのオープン記念ライブに、ゆめの出演が決まった。学園長は、このライブで90%の観客満足度が得られなければゆめを退学にするという。前回のライブが終わり、ひとまずの笑顔を見せていたゆめだったが、本当は不安だった。ネガティブな妄想に囚われてレッスンが身に入らないゆめの前にひめが現れ、喉に効くドリンクとハンドマッサージを施した。ひめは学園長の姉・諸星ほたるのフラワーショップを紹介し、ゆめにお祝いの花を選んでほしいという学園長からの伝言を伝えた。
ほたるは、ひめが自分と同じ力に目覚めたと知ったとき、力に頼っていてはいけないとヒカル(学園長)に伝えた張本人だった。ほたる本人は四ツ星学園の黎明期を支えた一人で、四ツ星学園の知名度を上げるために全力を尽くしていた。そんな中で力に頼りすぎてしまい、歌声を失ったのだという。ヒカルも含め、周りはアイドルとしてのほたるを信頼していた。にもかかわらず、彼女は自分を信じてやれなかったことを、後悔しているようだ。
ほたるから重要なアドバイスを受けたゆめは、自分の力を伸ばすため、仲間たちから色々な力を吸収した。ゆめは周りの信頼を得て、自分に自信を持つことができた。ゆめは自ら不思議な力を打ち破り、それ以上の輝きを放った。学園長は、もうゆめの声が失われることはないと、胸をなでおろすのだった。
人物たちの想いと動向
虹野ゆめ
ゆめは過酷な運命を背負わされたヒロインとして、客体的に描かれている。しかし、次第に自分のやるべきことに気づきはじめ、主体的になっていく。特に、36話の途中までは声を失う恐怖にばかり囚われ、ネガティブな妄想ばかりしている。普段であれば楽しい妄想や失敗しながらも笑える妄想が多いのだが、この2回に限っては本当にネガティブで笑えない妄想になっていた。しかも、普段は元気で食いしん坊なのに、食事を残したり、突然泣き出したりするなど情緒がかなり不安定になっていた。つまり、ゆめは自らの中に救い(自分を支えるもの)がない状態になっていた。
しかし、ほたるの助言を受け、ゆめは一歩前進する。もともと天才型ではないゆめは友人たちから知恵を借り、あるいはチューターになってもらい、観客が満足できるステージをできるよう努力した。結果として、力を使わなくても最高のステージをすることができた。つまり、ゆめの可能性を引き出したのは彼女を取り巻く人々だった。このように、声を失う恐怖に対して怯えるしかなかったゆめは、この2回で恐怖に打ち勝ち、成長したのだった。
白鳥ひめ
ひめは以前から自負していた導く者としての使命を全うする。ひめは諸星が学園長の子落としをしていることを理解しておらず、理不尽にゆめの可能性を潰しているものだと思っていたようだ。ただし、たとえ獅子の子落としであってもゆめに苦行を課すことを許していない。ひめが何度学園長に口答えしてきたことか……。今回も、35話・36話両方で学園長に強気の態度で向かって行った。
一方で、ゆめの中に不安が残ったまま臨んだ35話のライブでは、ゆめを楽にしてやれず、無力感に苛まれた。これは、次の回のゆめに「ひめ特製はちみつジンジャードリンク」を飲ませ、ハンドマッサージをするシーンに繋がっている。特製ドリンクはゆめが喉を痛めてレコーディングができなかったときにひめが飲ませたもので、ハンドマッサージはひめが気象病でぐったりしているときにゆめがしてくれたことだ。
ひめはひめトレに代表されるように、できることからコツコツやっていく人なので、自分なりにできることをしたのだろう。結局、解決に一番貢献したのはほたるなのだが、ひめはひめなりに自分のできることをやっていた。
諸星ヒカル学園長
学園長はゆめを救いたい想いこそあれ、いつも手段が強引である。今回もゆめに難題を課していたが、ひめに対しても似たようなことをしていたようだ。ゆめに対し崖の下から這い上がってくることを期待していたようだが、ほたるが求めていることとは少々異なる。学園長は生徒の実力を引き出すためなら手段を選ばず、ヒール役を買って出る。だが、そのヒールが行き過ぎていて、まるでごくせんの校長のようになっている。ほたる曰く、ヒカルはゆめを信頼し、期待を置いているからこそ退学させると言ったのだそうだ。想いはあっても手段が強引なのが、諸星学園長の悪いところといえよう。
でも、学園長にも人を気遣おうとする意思はある。幼いヒカル少年は姉が不思議な力を持っていることを知っており、力を使いすぎている姉を心配していた。しかし、大人になったヒカルはなかなかその意思を表現することをせず、強硬な手段を取るようになってしまったようだ。すばるに口止めをしたのも、本当は他の人に心配をかけたくないからだろう。結果的にすばるを束縛してしまっているが、今回のほたるとの回想を見る限りでは、優しさ故に口止めをした可能性が高い。このように、諸星学園長はせっかく意志はあるのに、いつもやり方がえげつない。
諸星ほたる(雪乃ほたる)
ほたるは自分の限界を超えられなかった失敗例として描かれた。ひめが孤独に自分を高めることで成功したのに対し、ほたるは自分ひとりで使命を背負いすぎてしまった。その結果、不思議な力に頼ってしまい、歌声を失ったのだ。
学園長自身はほたるが一緒にアイカツする仲間を信頼しきれなかったということを理解できず、ひめを孤独にさせている。だが、ほたる自身はゆめに仲間とともにアイカツすることを望んでいる。これこそが35話で学園長が言っていた、ステージに立つ者同士でないとわからないことだろう。ほたるは失敗したものの立場からゆめにアドバイスをし、ゆめを成功へと導いたのだった。
ところで、ほたるは伝説のアイドルとされているが、実際にはそれほど高尚なものではない。喋っていたらお腹が空く、ことわざを間違えるなど、ゆめと同レベルかそれ以下の知能として表現されている。たしかに歌姫とか伝説のアイドルというと、どうしても高尚なものを想像してしまう。だが、ほたるの人間像をゆめと近いものにすることで、この作品が目指している歌姫像が神聖なものではないことを提示しているようだ。
結城すばる
すばるはゆめを助けたいという気持ちと、学園長からの圧力の間で揺れていた。すばるはこれまでもゆめと話すことをためらい、この話題を避けてきた。だが、35話でゆめが何もないところで泣いているのを目撃してからは躊躇していられなくなった。すばるは36話のライブ当日、ゆめの楽屋に行き、励ましの言葉をかけた。ゆめを酢ダコと呼んでいるのが素直ではないが、すばるなりの照れ隠しなのだろう。次回はゆめと何かありそうだが、関係は進展するのだろうか?
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今回で不思議な力編はひとまず解決したようだ。でも、ここからはS4戦や3年生の卒業が待ち構えている。3月で終わるのか、4月以降も続くのかはわからないが、1年目のクライマックスに向けた展開が楽しみである。
余談だが、冬休みにアニメの無料配信があるようだ。23話の白銀リリィ登場回からのようなので、この際、見返してほしい。