ホビーアニメを観ていたらいつの間にかアホになっていた

現在放送中の子ども向け番組を中心に、アニメや特撮ドラマについて書いていく。毎話「感想」を書くわけではなく、気になった話数や一般的な議論に関する記事を書く予定だ。

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アイカツスターズの闇・白鳥ひめについて

闇を抱えつつ、「光」であり続ける

アイカツスターズの白鳥ひめは『アイカツスターズ!』の主人公・虹野ゆめの憧れの存在である。S4と呼ばれる四ツ星学園のトップアイドルのひとりで、全国的に有名である。

 

youtu.be

 

このビデオは、アニメ『アイカツスターズ!』の宣伝を兼ねてデータカードダス・アイカツスターズの販促をするというもので、アニメでの歌組のレッスンとトレーニングについて触れられている。これは第2話「ふたりはライバル!」の1シーンで、1年生が各組*1を見学する組活動の一環だ。そこで行なわれているのが、白鳥ひめの考案した「ひめトレ」である。ひめトレは日常の何気ない動作をトレーニングに変えるというもので、動画では生徒たちが空気椅子をしながら、苦しそうに紅茶を飲んでいる。しかし、ひめだけは苦しそうな表情を見せずに優雅にそれをこなしている。担当教員の響アンナ曰く、「優雅に見えて恐ろしく厳しい」のが歌組のレッスンである。この動画でも、ひめは「優雅に見える歌組もその笑顔の裏には厳しいレッスンがあります」と言っていて、「優雅さの裏には努力あり」という言葉でまとめている。しかし、白鳥ひめは、この発言が意味する「厳しい」よりもさらに厳しい状況に直面している。彼女は、たとえ体調が悪くても、笑顔でステージに立っているのだ。言うなれば、白鳥ひめはアイドル界や自分自身の闇の部分を自分一人で抱え込む、「光」のキャラクターである。

 

白鳥ひめの光

白鳥ひめは、世間や周囲の人に光の部分しか見せていない。いつもより早起きしたゆめは、ひめが早朝のレッスンやトレーニングをしているところを目撃する。しかし、あたかも笑顔でこなす日課のように描かれていて、忙しいのに偉いという印象を与えた。仕事やレッスンに忙しいはずのひめがスタッフへ手作りの差し入れを用意したというシーンもあり、スタッフ思いなところが肯定的に描かれていたのも印象に残っている。一方で、ゆめを闇へと立ち入らせる学園長への抗議をするシーンもあり、他の生徒をできるだけ学園や社会の闇に晒さないように尽力しているという面もある。白鳥ひめは、普通であれば辛いことを笑顔でこなし、できるだけ周りに闇を見せない「光」の存在である。たしかに、こうした行動は「光」だが、その背景には闇があるのも否定しがたい事実だ。

 

白鳥ひめの闇

白鳥ひめに関する描写は、一見『アイカツ!』1年目の神崎美月をなぞっているだけに思えるが、実は美月以上に闇がある。ひめには、美月における月影ほのか(マネージャー)に当たる存在がいない。自分以外に対してほとんど闇を見せないので、「想像させる闇」が美月以上に強いのだ。第11話「密着!白鳥ひめの一日」では、ひめが気象病であるということが判明した。ひめは、雨が降ると、体調が悪くなる。ひめが楽屋でぐったりしてしまい、一日マネージャーをやっていたゆめはスタッフに、出演中止を申し出ようとした。しかし、ひめはけろっとした表情で立ち上がり、大雨が降りしきる中、体調不良を感じさせない歌唱を見せた。おそらく現実世界には、このような状況で素直に「ひめちゃん偉いね」という大人はなかなかいないだろう。たとえ中学生であっても、体調不良であれば保健室で休ませるし、回復の見込みがない場合は、早退させるのが普通だ。ひめは、その体調不良すらも隠して、周囲に笑顔を振りまいていたのだ。

 

ゆめにこのような行動を見せたのには、第10話で諸星学園長がひめのソロライブを中止し、歌組最下位のゆめのソロライブを開催させたことにも関係している。ゆめの特殊能力に対して、諸星が何かを企んでいることがわかっていたのだ。自らの身を削ってライブをしたゆめにシンパシーを感じたひめは、ゆめに自分の闇を見せ、自分のパーソナルスペースに踏み入ることを許したのではないだろうか*2?白鳥ひめは、管理者こそいないものの、友人を闇に立ち入らせることで、平静を保っていたのだ。

 

アイカツスターズはプリティーリズム?

シリアス要素やアイドルの男キャラが登場したことで、アイカツがプリティーリズムになったと言われているが、常に光(陽)が求められているプリティーリズムとは全く異なる。もしプリティーリズムであれば、辛いことを隠してアイドルをやっているひめは、スペシャルアピールに失敗するはずだ。もちろん、ゆめに実力以上の力を出させているのは、ひめへの憧れである。だが、自分を偽ってまで高みを目指すひめに、心の飛躍はできない。ギャラクティカ無理っしょ*3。アイカツスターズの厳しさは、プリティーリズムとは質が異なるのだ。

 

闇を隠すからこそ際立つ闇

白鳥ひめは、自分や社会の闇を隠すことで、光の存在を演じていた。S4の冠番組は「キラキラするのがお仕事です」だが、白鳥ひめは、24時間365日キラキラしている。我々大人の視聴者はその「光」を見て、闇を想像せずにはいられない。白鳥ひめが女児に人気だという声もあるが、今のひめを理想の大人にしてはならない。番組が終わるまでに、ひめを闇から解放するべきだと思う。お仕事じゃないときはキラキラしなくて良いのだ。

 

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*1:アイカツスターズのシステムとして、宝塚歌劇団のような組制度がある。花の歌組、鳥の劇組、風の舞組、月の美(うつくし)組の4つがあり、いずれかの組のオーディションを受け、合格した者だけが組への所属を許される。各組が歌やドラマ、ダンスやファッションショー(モデル)に特化している。それとは別に、キュート、クール、ポップ、セクシーの属性がアイドルに対してあるが、属性は組とは関係ない。

*2:パーソナルスペースに踏み入ることを許されているS4の二階堂ゆずは、S4の会合でひめが疲労で眠ってしまったのを「お昼寝」と表現している。この時はゆめが同席していて、オブラートに包む必要があると思ったのだろう。

*3:白鳥ひめ役の津田美波さんは、プリティーリズム・ディアマイフューチャーで志々美かりんを演じている。かりんは9人きょうだいの一番上で、面倒見が良く、あらゆることに関して寛容である。

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