『劇場版アイカツスターズ』は同性愛ではない!
※かなり踏み込んだ内容なので、劇場版を未見の方は記事を読まずに、お近くの上映館まで。
- 虹野ゆめの恋愛対象に男性が含まれる以上、ゆめは同性愛者とは言えない。友愛であって、恋愛・性愛ではない。
- 大人の都合で動くのではなく、自分の気持ちを尊重することが大事。
- 友達には素直な気持ちで接しよう。
『劇場版アイカツスターズ!』の内容に関して、百合だとか、同性愛だとかいう流言がネットに飛び交っている。
そもそも、『アイカツスターズ!』は、『アイカツ!』との差別化として、同世代の少年アイドルを登場させている。
恋愛対象として意識させつつも、彼らはトップアイドルM4として、主人公たちを導いている。
そのメンバーである結城すばるは、主人公・虹野ゆめを「ゆでタコ」と呼んで、ちょっかいを出しているが、ゆめもそれに反発し、赤面している*1。
これを見て、お似合いだと周りが冷やかす場面もあり、異性愛の要素があることは間違いない。
一方、ゆめと桜庭ローラが互いに素直になれない場面がある。
そんな2人の関係は、一緒にステージに立ちたいという思いがある、仲のいいライバル関係だ*2。
もちろん、現状のシステムでは、ゆめとローラが2人ともS4になることはできず、いずれ本格的に争うことになる。
ローラは、ゆめと仲良くしたい気持ちとS4選考レースのトップに立ちたい気持ちの間で揺れ、自分の本当の気持ちに反することをゆめに言ってしまった。
このような内容を鑑みると、『劇場版アイカツスターズ!』は虹野ゆめと桜庭ローラの友情をめぐる物語であると言える。
友愛
ゆめとローラは恋愛しているわけではなく、同性の友達として互いに感情を向けているのだ。
普通の中学生の友達関係でも、友達が自分にかまってくれなかったり、他のグループの子と仲良くしたりしていると、嫉妬をすることがあると思う。
2人組を組むというどこにでもあるシチュエーションは、嫉妬を自然に生み出す。
組みたい子が別の子と組もうとしていた時に怒ったり悲しんだりするのは、中学生ぐらいであれば、自然に起こる感情である。
とはいえ、同性同士であるゆめとローラが手をつなぐシーンが、露骨にあったではないかという指摘もあるかもしれない。
だが、同性が手をつなぐことが恋愛につながるとは限らない。
スポーツ大会で、対戦する選手同士・表彰台に立つ選手同士が抱き合うシーンがあるが、互いを性的に、あるいは恋愛対象として意識して愛しているわけではない。
それに、壊れたネックレス*3をブレスレットに作り変えた描写がある。
手をつなぐシーンを複数回見せているのは、ブレスレットを見せつけることで友達関係の復旧を強調する狙いがあると考えられる。
同性同士が互いを想うことや手をつなぐことが100%恋愛・同性愛になるとは限らないはずだ。よく考えてほしい。
自分の意思の大切さ
ローラは、自分の意思を捻じ曲げて、香澄真昼をパートナーにしようとした。
だが、自分の気持ちは大切にすべきだ。
ローラは諸星学園長から次期S4候補の育成計画を示され、真昼と組むように命令されていた。
もちろん、諸星学園長にとっては身体に負担をかける特殊能力を持つゆめを守るためなのだが、ローラは納得がいかなかった。
ゆめが白鳥ひめと組むというプランを示されていたローラは、ゆめがひめのことで頭がいっぱいであることに嫉妬して、真昼と組むことにしたのだった。
しかし、真昼とレッスンをしている最中に、無意識にゆめと接する時の行動が表れてしまい、自分の気持ちを押さえつけていたことにローラは気がついた。
このとき、ローラは大人にとって都合のいいプランに乗っかってしまっていた。
真昼はモデルとして優れているだけでなく、発声もそれなりにいい。
パートナーとして申し分なかった。
歌組トップであるローラと釣り合う存在であり、2人でならトップに立てると思ってしまった。
これは、本来は、子どもの気持ちを無視した大人の都合によるプランである。
もちろん、エリート同士が組めば理論上は最強ユニットになるが、2人がパートナーとしてやっていけるかはわからない。
大事なのは、優秀な人材を生み出すための戦略ではなくて、セルフプロデュースによって高みに上ることだ。
このように、大人の事情ではなく、自分を高めてくれる最適のパートナーと組むことが重要なのだ。
素直な気持ち
友達には素直な気持ちで接することが大事だ。
もちろん、一時的な感情で、思ってもいないことを言ってしまうことだってある。
ローラは、真昼と組むことを望んでいなかったはずだ。
それから、いくら友達であっても言ってはいけないことがある。
その基準は親しさによるところも大きいと思う。
今回はローラが学園長に真昼と組むよう言われたことを隠してしまっていた。
ゆめもゆめで、友達の前で他の友達(もしくは先輩)の話ばかりをすると、その友達が嫉妬するのは当たり前だ。
ゆめがローラと一緒に頂点を目指したいという気持ちをあそこできちんと示せていれば、あのような事態にはならなかった。
ローラがつい、ゆめと接する時の言動をしてしまった際、真昼はローラに素直な気持ちを伝え、そして、ユニットのメンバーの重要性を説いた。
真昼は本編で、夜空との確執を解消し、2人でステージに立ったという経験がある。
劇中で一番素直な気持ちの大切さをわかっている1人で、その経験からローラを導いた。
M4もまた、喧嘩するほど仲がいいということをローラに教えていた。
すばるに関しては、ゆめに、アイドルとして素行に注意すべきだと言っていたが、矛盾はしないはずだ。
多かれ少なかれ、自分が自然体で居られるユニットの方が、戦略的に作られたユニットよりも輝けるだろう。
「POPCORN DREAMING」の歌詞にもあったが、その方が心理的な負担が少なくなり、充足感も増えるはずだ。
S4ではないユニットになろう!
見てきたように、『劇場版アイカツスターズ!』は大人の事情に流されずに、友達には自分の素直な気持ちを伝えようというメッセージを包含していた。
この映画は、友達が他の友達のことに言及しすぎて嫉妬してしまうというどこにでもある中学生の光景を切り取った映画で、壊れてしまった友情が修復する様子をネックレスという象徴的なアイテムを使って表現していた。
桜庭ローラは、次期S4候補として、香澄真昼と組むよう、諸星ヒカル学園長に言われた。
あのような状況において、白鳥ひめのことしか頭にない虹野ゆめに対してカッとなり、真昼と組むと言ってしまった。
しかし、素直な気持ちで友達に接することは大切で、素直な気持ちで居られるユニットの方が能力重視のユニットより優れている。
ゆめとローラの素直で居られるユニットこそが優勝することができたのだ。
映画の中でも言及されていたが、S4は4人のユニットだ。
それに能力重視である。現時点でアイドルは5人いて、S4のレースの中で2人が脱落してしまう*4。
これを防ぐためには、S4ではない別のユニットを作る必要がある。みんなが自然体で居られるユニットが作られることを願っている。