異世界の視点から現代社会を描く
テレビ東京番組のパロディ回
激しいバトルの最中、もっとも盛り上がっているときに、その回は放送された。改編期のため、番外編・総集編は必要だったのだろう。
突然挿入されたギャグ回は、NARUTOシリーズの番外編を超える衝撃だった。
アニメ『パズドラクロス』の制作が追いついておらず、急きょ、ランキング番組を放送するという設定で、キャラクターたちが暴走する。
ランキングで「ドラゴーザ島」の名物を紹介する方式は、アド街ック天国さながら。半分はおふざけのようなものだが、半分はしっかり総集編として機能していた。
その中で、小ネタとして、タマゾーとデビが語尾を忘れたり、タマゾー役の金田朋子さんとチャロ役の寺崎裕香さんがママになったことに触れたりしている。
ソニアが5体いる(5つ子である)ことを利用して、10月クールの新アニメ『おそ松さん』の宣伝をすることも怠っていない。
現在のグランドバトルカップ編でもそれなりにギャグは挟んでいただけに、なぜこのタイミングでギャグ回をやったのかは、よくわからない。
男主人公のCGダンス
パズドラクロスのエンディングアニメはいつもダンスをさせる。放送開始時は走るなどしていても、徐々にダンスに変えていく。
それはいわゆる手描きアニメが基本で、これまでコンピューターグラフィックス(CG)は使っていなかった。しかし、9月の放送から3DCGに変わっていった。
いわゆる男児向けアニメのエンディングでCGダンスをやるのは珍しい。ロボットにCGダンスをさせた『超速変形ジャイロゼッター』(シリーズ構成が同じ)からは5年もたっている。
『妖怪ウォッチ』よりは小規模だが、『パズドラクロス』らしく爪痕を残せているのではないだろうか?
パズドラクロスの真面目な部分
パズドラクロスは奇抜なだけのアニメではない。「竜人」「人間」「モンスター」の3つの種族をめぐる衝突を描いており、移民問題や核軍縮など、今の社会でも重要なテーマを扱っている。
その点については過去の記事を参照してもらいたい。
さて、パズドラクロスの今のテーマを一言でまとめるとすれば、「取り返しのつかない暴走」に尽きる。
力に酔いしれたマジョリティが、マイノリティを邪魔者と解釈して攻撃する。それはまるで、現実の移民問題やヘイトクライムと同じだ。
このトピックに関連して、最近の『パズドラクロス』の展開を紹介する。
闇アポカリプスの力
かつてドラゴーザ島を滅亡の危機に陥れた最凶のモンスター・闇アポカリプス。力を求めていたモルガンは、復活した闇アポカリプスの力に飲まれ、無敵の龍喚士となる。
モルガンは覆面をつけて、「グランドバトルカップ」に出場。行方不明になっていた闇の古老・ダフネスだと誤認させるほどの力を発揮し、龍喚士たちを痛めつけた。
最後は「ドラゴンのツノ」を外されて力を失うが、チャロが闇アポカリプスに関する情報を持ってこなければ、エース(主人公)は命を落としていただろう。
原始化
5クール目ではランスが光の古老・ジェストの命を受け、「原始化の秘密」を探る。その中で「星の欠片」を手に入れたランスは凶暴化。「原始化」し、竜人の真の姿である怪物と化してしまう。
「レイライン」が刺激され、大規模なドロップインパクトが発生し、世界は滅亡の危機に陥る。ジェストの行動に怒りを抑えられない火の古老・エルドラも原始化してしまい、取り返しのつかないことになった。
竜人たちの暴走
原始化の力に心酔しきった竜人たちはジェストの過激な主張に賛同して人間を攻撃する。彼らはテロ組織・ドミニオンのとりこになってしまった。
一方、主人公*1たち人間や100%竜人ではない龍喚士はジェストに立ち向かい、暴走するランス(エースのライバルであり友人)を救おうとする。しかし、モンスターを奪われた人間たちは竜人に歯が立たず、逃げるしかなかった。
現実でも、移民が国を作り上げた事実が捻じ曲げられて、先住民族が横柄な態度をとったりする。だから、これは物語の中だけの話ではない。
タブレット端末が出てくる世界観なので、異世界であっても極めて現実に近いといえよう。
現代社会を描いたアニメ
パズドラクロスは、よい意味でも悪い意味でも、現代社会を描いたアニメだ。だから、総集編で現実世界のパロディをやったことは間違いではなかった。
でも、番外編だけをネタにするのではなく、シリアスな部分にも目を向けてほしい。それこそがわれわれ人間が注目すべき部分である。
『パズドラクロス』は、あにてれやニコニコ動画にて毎週木曜日12:00-配信中。テレビ東京の本放送は毎週月曜日18:25-で、BSジャパン(全国)は同じ週の水曜日5:29-放送している。
DVDソフトなども発売されているので、要チェックだ。
*1:主人公・エースは竜人を祖母に持つミックス(75%人間)。竜人の英雄の子孫である。