ホビーアニメを観ていたらいつの間にかアホになっていた

現在放送中の子ども向け番組を中心に、アニメや特撮ドラマについて書いていく。毎話「感想」を書くわけではなく、気になった話数や一般的な議論に関する記事を書く予定だ。

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『かみさまみならいヒミツのここたま』第39〜40話ここたまランド編が神すぎたのでまとめる:その1

ただの遊園地じゃない! 夢の詰まったここたまランド

『かみさまみならいヒミツのここたま』第39〜40話は、「ここたまランド」というただの販促物を感動に変えた名エピソードである。ここたま第39〜40話はここたまランドという新玩具を販促するために用意された回で、こころとのぞみが遊園地に行き、迷子の子を助けたという経験から遊園地という場所に意義に気づき、2人で力を合わせてここたまランドを作るという内容になっている。遊園地といえば、子どもにとっての楽しい思い出の象徴とも言える場所だが、一方で、そこには楽しくない思い出も少なからず絡んでいる。両親の仕事の都合でなかなか学校行事に来てもらえなかったのぞみにとって、遊園地が唯一とも言える家族の楽しい思い出だった。その上、現状のぞみはハッピーハンターという「仕事」に執着しており、人間の友達がいない。そんなのぞみを気遣うビビットと、こころを気遣うのぞみの様子が描かれているのが、この第39話〜40話なのだ。

 

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第39話「ハッピーハンター、遊園地へ行く!」

第39話は、のぞみとこころが遊園地に行って遊び、その途中、迷子の子を助けるという話だ。内容は以下の通りである。


福引で遊園地・あおぞらんどのペアチケットを手に入れたのぞみ。あおぞらんどは昔、家族3人で行った思い出の場所である。チケットの期限は明日まで。しかし、のぞみはハッピーハンターを休むわけにはいかないと、遊園地に行くことを躊躇していた。そんな時、ジャーナリストの仕事で忙しいはずの母がたまたま帰宅していた。遊園地に誘おうとするのぞみだったが、母は、明日は朝が早いのでのぞみを起こさずに出て行くという。期待が外れてしまったが、のぞみはお仕事頑張ってねと声をかけた。


翌日、ビビットとふたりで遊園地に行こうとしていたのぞみは、その道すがら、こころとばったり遭遇する。どこに行くのか訊かれて遊園地に行く、福引で当たっただけだとクールに対応するのぞみだったが、こころが連れているここたま達は未知の存在を耳にし、騒いでしまった。のぞみの契約するここたま・ビビットも「使ってあげなきゃチケットがかわいそうだ」と、のぞみを説得した。結果として、こころと一緒に遊園地に行くことになった。


遊園地には、少年・航太(以下、コウタ)とその母も来ていた。好きな乗り物に乗っていいという母に対し、コウタは嫌そうな表情でうんと返した。一方、のぞみとこころはジェットコースターに乗っていた。登っている時から怖がるこころに対し、のぞみは終始けろっとしていた。怖がるどころか、「結構迫力ある」とすら言っていた。楽しいというこころのここたま達に促され、こころは2回乗る羽目になった。その後もこころは怖がりながら、のぞみは楽しみながら様々な乗り物に乗っていた。のぞみ曰く、「怖がっていたらハッピーハンターなんて務まらない」ということだ。


さて、ラキたま達がお化け屋敷に行きたいと言い出したが、のぞみは休憩したい、ハッピーハンターの仕事をしなければ、と嘯く。しかし、ゲラチョに図星を指され、お化けが怖いということがバレてしまう。茶化されて怒るのぞみだったが、一同は笑っていた。その頃、のぞみ達がいるベンチの周辺をコウタ親子が横切っていた。コウタは父が仕事で来られなかったことを怒り、駄々をこね、走り去って行った。

 

「いいの!私、お父さんのお仕事大好きだもん!」

一方、のぞみ達は観覧車に乗っていた。はしゃぐここたま達を見て、こころは、みんな*1も連れてくればよかったなと思っていた。観覧車から景色を眺めて感動するモグタンを見て、のぞみは家族3人で遊園地に行った時の自分と重ね合わせた。相棒のビビットも、初めて来た遊園地を楽しんでいたようである。


その時、先ほどコウタが逃げ去ったことを受け、迷子のアナウンスが入った。困っている人がいると、探し始めるこころ達だったが、不幸にも、コウタはお化け屋敷に逃げ込んでしまう。のぞみ達はお化けに恐怖しながらコウタを探し、見つけた。コウタの父はレストランで働いていて、いつも忙しく、学校行事にいつも来られなかったのだという。その話を聞き、再びのぞみは、過去の自分と重ね合わせた。幸い運動会に来られることになった母だったが、父は来ることができない。それを聞いたのぞみは落ち込んだが、お父さんの仕事が大好きだ、お父さんの分も応援して、と笑顔で返したのだった。

 

「お父さんのお仕事を大切にする気持ち、わかってあげなきゃ!」

コウタも似たような状況にあり、お父さんとジェットコースターに乗る約束をしたのに、と泣き出してしまった。それを見たのぞみは、しゃがんでコウタと同じ目線に立ち、お父さんのことが好きであれば、お父さんのお仕事を大切にする気持ちをわかってあげなければならないと声をかけた。コウタは泣き止んだが、こころはコウタの父のことをなんとかしてあげたいと思っていた。こころは、ここたまの力を使って、コウタの父を遊園地に来させることができないかと提案するのだった。


コウタに聞いて辿り着いたのは、看板に鳴き声を発する牛の飾りがあるステーキレストランだった。コウタの父は、臨時で欠勤したアルバイトの穴を埋めるため、店長としてシフトに入っていたのだった。何も考えがなかったこころだったが、周辺にいるラグビー選手や力士の姿を見たこころ達は、ビビットの魔法で食欲をかきたてることを思いつくのだった。ラキたまも協力し、見事大量の客をレストランに入れることができた。その結果、メインの食材である牛肉が品切れし、レストランは臨時閉店した。

 

「遊園地、作っちゃお!」

夕方、遊園地のカフェには、コウタ親子がいた。コウタはジュースのストローをジュルジュルとさせ、退屈そうに、父が来るのを待っていた。母は大好きなジェットコースターに乗ることを勧め、お父さんとはまた今度来ればいいと、コウタを宥めた。その時、コウタの父はやってきた。コウタは父とジェットコースターに乗った。ハッピースターが生まれ、ハッピーハンターの仕事が終わるのだった。その後も、残り時間いっぱい、こころ達は遊園地を楽しんだ。


すっかり日が暮れ、のぞみ達は感想を言い合いながら帰宅の途についていた。モグタンも「毎日行きたいグウ」と言っていた。こころは再びみんなも連れて行ってあげたかったなと思った。ビビットもまた来たいと言っていて、もっと気軽に遊園地に行けたらいいねということになった。そして、「遊園地、作っちゃお!」という結論を出し、次回に続く。


この回が優れているのは、玩具販促とストーリーの絶妙なリンク、普遍的な問題の提起、桜井のぞみという人物の掘り下げによるところが大きい。

 

玩具販促とストーリーの絶妙なリンク

ここたまランドという玩具は、こころとのぞみが迷子の子を助けるというストーリーを通すことで、ただの販促物ではなくなった。このエピソードでは、のぞみのハッピースター集めという子どもらしさから程遠い営みが、家族と疎遠ののぞみが幼少期の家族との思い出に想いを馳せるという行為につながった。のぞみにとって、ひいては子どもにとって、遊園地はかけがえのない思い出である。もちろん、家族や大切な人と過ごす時間は楽しい。そうした論理展開の末、遊園地は子どもの夢が詰まった場所なのだという結論が示唆された。普通であれば、ここたまランドはここたまのストーリーと一切関係がない。しかし、のぞみの境遇を明かし、こころと仲良くなる過程を入れることで、それまで単なるソフビ人形の入れ物だったここたまランドが、こころとのぞみとここたまの夢の詰まった遊園地になった。

 

普遍的な社会問題の提起

このエピソードは、夫婦共働き家庭における子どもの愛着の欠如という普遍的な問題を効果的に切り取っていた。迷子になった少年・コウタに関しては、父だけが働いていることを示唆されていた。しかし、のぞみの場合、両親は夫婦共働きで、ほぼ母子家庭に近い状況だった。母はジャーナリストという勤務時間が変動的な仕事に就いており、父は冒険家なので家にはほとんどいなかった。そうなれば、親から受ける愛着はコウタ以上に限定的で、コウタの境遇を理解するのに十分な環境があったと考えることができる。のぞみは極端な例だが、両親からの愛が限定的な子どものモデルとして見れば十分だ。


いずれにせよ、のぞみが遊園地を、極めて限定された家族の思い出のひとつとして意識していたことは、このエピソードで明確に示されていた。のぞみは母に遊園地へ連れて行ってもらえないことを認識し、ひとりで遊園地に行こうとしていたのだ。こころと遭遇したのぞみは、ここたま達に促され、こころと一緒に遊園地に行くことになるのだが、こころがいなければ、おそらく遊園地はつまらないものになっていただろう。友達がいたから遊園地が楽しめ、困難も乗り越えられたのだ。逆に言えば、のぞみには友達と呼べる存在がいなかった。心を許せる友達がいない転校生の少女の代表としてのぞみがいるわけだ。

 

人物の掘り下げ

このエピソードは、遊園地を媒介に、桜井のぞみという人物を巧妙に掘り下げていた。前述の通り、のぞみには、家族の思い出がほとんどなく、転校によって友達もいなかった。ビビットとの契約を満了するため、ひとりで、自身がハッピーハンターと称する職業及び活動を遂行していた。その秘密の活動をするには、のぞみの境遇はちょうどいいものだった。しかし、のぞみの心の健康が保たれていたかといえば、そうではないだろう。だから、ビビットはこころとの仲を取り持とうとしたのだ。そういった内容を詰め込んだのが第39話だった。

しかも、それが遊園地という存在1つのみを通して表現されている。遊園地に連れて行ってくれないのぞみの母、同じここたま契約者・こころ、似たような境遇にある少年・コウタ、仕事が入り遊園地に行けなくなったコウタの父という風に、遊園地を媒介して人間関係が展開されていく。そして、個々の人物との関係を通して、問題がひとつひとつ提起されていった。遊園地というアイテム1つだけでそういった内容をすべて表現したのは、凄いことだと思う。


今回は39話のみを取り上げたが、次はのぞみとこころがここたまランドを作る40話についてまとめる。

*1:連れてきたのは、ラキたま、メロリー、ゲラチョ、モグタンのみ。

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