『リルリルフェアリル〜妖精のドア〜』第33話
『リルリルフェアリル』第33話は、食べ物をテーマにストーリーが展開された。以前から述べている通り、この作品は児童の教育に力を入れていて、今回もそのような回である。
あらすじ
Aパート「マッシュシスターズの姉妹ゲンカだに」
マッシュカフェの経費のことで喧嘩をしてしまったおしゃれキノコのマッシュシスターズ。長女のノコは自分だけで新メニューを作ろうとするが……
Bパート「トマトにキャロット、どうぞ召し上がれ」
モンシロチョウのバグズフェアリル・シロは、甘いものが大好きで、野菜をまったく食べない。怒ったベジフェアリルのとまととキャロットは、シロに無理やり野菜を食べさせようとする。
〈食育=いい話〉 勝利の方程式
食育に限らず、リルリルフェアリルでは食べ物が絡むと、ストーリーがいい方向に持っていかれがちになる。最近では、第28話のAパートで、美食家のドリアンが美味しいものを出せと要求するという話があった。フェアリルたちは次々と料理を出していくのだが、結局一番美味しいのは、どんなに手の込んだ料理よりも、みんなで食べるおまつさんのおやつだった。それから19話のBパートでは、今回のBパートの実質上の前提である野菜料理対決が行われた。その時、たまたま審査員になってしまった野菜嫌いのひまわりが、野菜料理を食べて野菜の美味しさを知り、野菜嫌いを(ある程度)克服した。食育というのはものを食べていれば確実に経験することで、引き出しが多く、ストーリーが作りやすいのだろう。
今回の教訓
みんなで協力する
集団生活において、料理というものは係を決めて任せるよりも、全員でやった方が早い場合がある。マッシュカフェの場合、妹たちが予算に見合わない提案ばかり出してくることに怒って、姉のノコひとりで新メニューを作ろうとした。でも、ひとりでやっても失敗ばかりで上手くいかない。そもそも、ノコはリーダー気質であって、実労には向かない。彼女の指揮を受ける仲間が必要で、それが妹たちだ。妹たちは失敗するノコを見て、協力の必要性に気付き、姉と和解した。そして、3人で新メニューを作り出し、ヒットさせた。このように、みんなで作った方がより効率よく、より美味しいものが作れるのだ。
食育から離れれば、リーダーの大変さというテーマも考えられる。特に、アニメの制作現場においても予算に見合った内容にする必要がある。女子高生の五城桜監督にとってはとても大変なことだと思う。それは日常の中のあらゆるリーダーシップに関わることである。予算制約線の中でメンバーの要望に応えなければならない。いつでもクリスタルキノコが使えるのであればそれに越したことはないが、現実には、しめじ程度に妥協しなければならないこともある。五城監督自身、プロジェクトメンバーに対してわかってほしいという想いがあるのかもしれない。
作る側の工夫と努力
料理や食材を食べてもらうために必要なのは、作り手の弛まぬ努力である。Bパートでは、野菜を食べることを義務とみなしたベジフェアリルたちが、シロにしつこく迫って、野菜を食べることを強制した。そのやり口は、机の上に野菜を置く、女の子ベジフェアリルが野菜だらけのお弁当を作る、睡眠中に耳元でつぶやいて洗脳するなど、かなり陰湿だ。それでもシロは振り向いてくれず、むしろ軽くトラウマを感じていた。
諦めかけていたベジフェアリルの前に現れたのは、みつばちのフェアリル・みるるがやっているジュースの屋台だった。そこからヒントを得たとまととキャロットは、野菜入りのミックスジュースを作った。すると、シロは喜んでそれを飲んだ。たしかに好き嫌いは良いことではないが、無理に食べさせることはもっと良くないことだ。子どもに嫌いな食べ物を好きになってもらうには、大人の威圧ではなく、子どもの視点に立って考えることが大切なのだ。
食育アニメは、子どもだけでなく、親にも大切なことを教えてくれる。世代を超えたこの普遍的な問題は、多くの人が観る休日のアニメにふさわしい内容なのかもしれない。