爆死した作品への追悼の代わりに
新年早々、堅苦しい話で申し訳ないが、ある作品が大爆死しそうだ。
追悼の代わりといってはなんだが、失敗するコンテンツの条件を私なりに挙げてみた。
今後、大型ホールの公演で閑古鳥が鳴かないためにも、ぜひ目を通してほしい。
派生コンテンツがうまくいかない理由
タイトルに挙げた別の媒体というのは、例えば、マンガをアニメ化するとか、アニメをゲーム化するようなことだ。
媒体とは少し違うが、コラボカフェやアイドル声優のコンサートなども含むことにする。
そうした派生コンテンツがなぜかうまくいかない場合がある。
それは、大まかにいえば、次の3つの要因が関係しているのではないだろうか?
- コンテンツの質や雰囲気が顧客に合わない。
- コンテンツ自体が顧客のニーズに合わない。
- 作品の力を過信しすぎている。
以下で詳しく説明していく。
コンテンツの質や雰囲気が顧客に合わない
第一に、せっかくの新作であっても、売り出したい層にマッチする内容でなければ、意味がない。
例えば、同じ作品でも、コンテンツごとに雰囲気が違う場合がある。
シリアスな雰囲気のアニメを観たくないという人もいるようで、楽しい雰囲気のゲーム版だけが売れることもあるらしい。
この例でいえば、アニメの雰囲気が売り出したい層にあっていなかったか、ゲームだけが想定していない層にヒットしたのだろう。
複数のコンテンツを通じてブランドに触れてもらうつもりが、1つのコンテンツだけ売れなかったというのは、とても悲しい結果である。
このように、コンテンツを客層にあう雰囲気にすることは重要だ。
質が低いとマニアは満足しない
既存のブランドを広める上で、マニアの存在はとても重要である。
しかし、マニアもスタッフを養いたくて作品を推しているわけではない。
低クオリティのコンテンツには、マニアは心ひかれないだろう。
もちろん、低クオリティを好むマニアは存在するが、よいものが売れるというこの世の法則を破ることはできないはずだ。
低クオリティ好きのマニアが10人残ったところで、コンテンツは成功しない。
売り手には、「人気作品」であることに胡座(あぐら)をかかず、ハイクオリティの作品を作ることが求められる。
既存の作品であることを強調しながら、既存のファンを軽視するのは、矛盾している。
コンテンツ自体が顧客のニーズに合わない
コンテンツに好き嫌いがあるケースも
第二に、特定のコンテンツを好まないファンもいることを指摘しておかねばならない。
いわゆるクロスメディア作品の売り手にとって、優良な顧客とは、複数のコンテンツに触れてくれる人である。
実際に、作品が好きで複数のコンテンツを買っている人は少なからずいる。
しかし、単一のコンテンツを多く買っているファンがいるのも事実だ。
- アニメの映像ソフトは買ったが、ゲームには「課金」しない。
- ゲームAには「課金」するが、ゲームBはやっていない。
- ゲームには「課金」するが、インドア派なのでライブイベントやコラボカフェには行かない。
という人もたしかに存在する。
そのような人の前では、クロスメディア展開は効果が薄いのかもしれない。
ゲームに影響する商品が作れない
あるいは、アプリゲームに「課金」したいからアイドル声優にはお金を払わない、というファンもいると思う。
そのような人のために、CDにガチャ券をつけるなどしたいのが、商売人だろう。
しかしながら、AppleのApp Storeでは、外部の商品にゲームで使えるシリアルコードをつけるなどの商法が許されていない。
結果として、ゲームにたくさんお金を払いたい人は、他のコンテンツに触れてくれない。
ゲームの最新情報が手に入るイベントや番組など、ゲームに絡めたコンテンツを作るのに、売り手は心を砕いている。
作品の力を過信しすぎている
第三に、「人気作品」のうぬぼれが敗北につながっているケースも散見される。
例えば、「人気作品」のスピンオフとして売り出しているのに、実は知名度がなかったということが考えられる。
そうなれば、当然新規のファンを獲得する必要があるのだが、「人気作品」であるからこその苦労もある。
人気ブランドの名前を看板に掲げているコンテンツは、新規の顧客が入りづらい。
既存のコンテンツを知らないので敷居が高くなるし、知らないコンテンツへの偏見も生じるだろう。
「人気作品」というラベルは、客層を広げるという観点からいえば、呪いでしかない。
全く新しいコンテンツとして展開
さて、そのような作品で新しいファンを獲得するためにはどうすればよいだろうか?
新しいファンを獲得するには、新しい主人公を設定するなどして、全く新しいコンテンツであることを強調するのがよさそうだ。
ある作品では、その作品の世界を知らない新しい主人公を設定して、新規ファンが主人公とともに世界観を学べるようにしていた。
既存ファンを傷つけておらず、むしろ既存ファンが「この作品が気になるなら、この映画がおすすめだよ」といえる内容になっていたと思う。
既存作品に触れない「にわか」ファンが増えてしまう副作用もあったが、ビジネスとしては成功できたはずだ。
絶対に売れる作品はない
ここまで、既存作品から派生したコンテンツの一部がうまくいかない理由について考えてきた。
こうしたコンテンツで失敗する最大の理由は、絶対売れるという慢心ではないかと思う。
既存のファンがいて、「人気作品」の看板があるなら、売れると錯覚してしまっても仕方ない。
でも、実際には、ファンであっても買うとは限らないし、「人気作品」であることがかえって足かせになることも考えられる。
「売れるから何もしなくてよい」のではなく、売れるからこそ、売れるまでの計画をしっかり立ててほしいものだ。