Vシネマ付属の収集アイテム 手抜き? 続編への可能性?
テレビドラマ『仮面ライダージオウ』が最終回を迎え、Vシネマ『仮面ライダージオウ NEXT TIME ゲイツ、マジェスティ』の発売が決定した。
今作では、「仮面ライダーゲイツ」が「仮面ライダーゲイツマジェスティ」に変身する。
変身アイテム「ゲイツマジェスティ ライドウォッチ」が付属する限定版も販売される。
ゲイツマジェスティ ライドウォッチは、仮面ライダージオウの「グランドジオウ ライドウォッチ」とよく似ている。
実は子ども向けのおもちゃでは、既存のアイテムの色や素材を変えて、新商品として販売することがある。
これは「リデコ」(あるいは「リカラー」)と呼ばれている。
手抜きにも思えるが、今のおもちゃ業界にとっては重要な資金源である。
この記事では、リデコについて説明する。
リデコのメリット
発売のハードルを下げる
例えば、リデコ商品には、発売のハードルが下がるというメリットがある。
今回のような本編終了後の企画では、おもちゃが売れる勝算がない。
おもちゃを売るためには、できるだけ低コストにする必要がある。
一部の金型やデザインを流用すれば、1からデザインするより費用がかからない*1。
スーパー戦隊の夏映画では、毎年新規メカ・ロボが発売される。
映画の目玉にはなるが、テレビドラマ本編にはほとんど登場せず、活躍の場が限られる。
そのため、夏映画のロボはたいてい、本編ロボのリデコ・リカラーである。
視聴率ではなく販売実績が利益につながる販促番組。
おもちゃメーカーとしては、是非おもちゃを出したいようだ。
サブキャラクターにパワーアップを与える
メインキャラクターよりも、サブキャラクターが好きな人もいる。
そういう人たちにとって悩ましいのが、パワーアップした姿を与えられないことである。
なりきり玩具を扱う子ども向け番組では、パワーアップ用のおもちゃが発売される。
最強の姿などでは、通常の収集アイテムよりも豪華な仕様のものが多い。
販売促進の都合上、発売の時期や書き入れ時には、パワーアップしたキャラクターが活躍する。
一方で、キャラクターの数が多いシリーズでは、基本の姿しかもらえないキャラクターもいる。
そのような場合、リデコ玩具は救済になる。
(おもちゃ会社にとっても、ビジネスの機会が増える。)
『仮面ライダー鎧武』では、サブライダーの1人「仮面ライダーナックル」がリデコ玩具を使った新フォームを与えられている。
「アイカツスターズ!」でも、メインキャラクターとおそろいの、色違いのドレスを与えられたサブキャラがいた。
コンテンツの可能性を広げる
『仮面ライダー鎧武』は、スピンオフ作品とリデコ玩具の販売で成功したシリーズのひとつだ。
放送終了後、4作品(DVDソフトに2話ずつ収録)のVシネマが作られた。
いずれも新作のリデコ玩具が発売されている。
2019年には、仮面ライダー初の舞台作品も上演された。
ここでも、サブライダーの新しい姿(鎧武の色違い)が発表され、フィギュアが発売されている。
このように、リデコ玩具が作られれば、新たなスピンオフ作品が作られる。
コンテンツの可能性が広がっていく。
通常1年で終わってしまう特撮ドラマシリーズ。
だが、リデコ玩具があれば、次の作品が放送開始してからも前の作品を楽しめる*2。
リデコ商品はビジネスのチャンスを増やしている。
本来はパワーアップの予定がなかったサブキャラクターが活躍できる。
新たなパワーアップによって、続編が作れる。
リデコの問題
色・形を変えただけ? 手抜き?
そうしたメリットがあるものの、よいことづくしではない。
リデコへの批判はたびたび起こる。
例えば、仮面ライダーゴーストの武器「サングラスラッシャー」は色を変えられて、2号ライダーの武器として再販されている。
そのように本編中に登場し、一般発売されるおもちゃでリデコをすると、手抜きとみなされることも多い。
だが、リデコ玩具は色を変えただけではない。
音声も新録されている場合がある。
仮面ライダーの変身ベルトのリデコでは、既存の収集アイテムを認識させたときの音声が変わったりする。
(英語だったものが日本語になるなど。)
逆に、リデコにあたってサウンド機能を省略しているものも存在する。
そうしたものは擁護のしようがない。
保護者が完全新作商品だと思う可能性も
とはいえ、音声が変わっているにしても、売り方が不親切な感は拭えない。
アニメや特撮ドラマを真面目に見ていない保護者は、商品がリデコであると気づかない可能性がある。
保護者はまったくの新作商品だと思っているかもしれない。
ご丁寧に「リデコ商品です」と書いてあるものは少ないので、消費者を騙している感が否めない。
発売済み商品と類似している場合は、それを明記すべきではないか?
キャラクターA仕様・キャラクターB仕様として、並べて販売することはできないのか?
「改造されたのでもう出ない」論争
リデコが産んでしまった問題のひとつに、「スーツが改造されてしまった」とする根拠のないウワサがある。
特撮ドラマシリーズでは、予算の節約のため、既存のスーツを改造して再活用する場合がある。
形は似ているが、共通の型を使っているだけのものもある。
しかし、スーツの形が似ていることがファンの憶測を呼び、「◯◯のスーツは改造されたので、もう出ない」という未確定の情報が広まってしまう。
仮面ライダージオウの最終回、歴代ライダーの最強フォームが並び立つ中で、「仮面ライダー鎧武」だけ基本のフォームチェンジだった。
このことから、鎧武の最強フォームが改造されてもうないというウワサが広まっている。
先日の舞台『仮面ライダー斬月』で、鎧武の最強フォームの色違いのものが出たことから着想したようだ。
公式からは改造された旨の記事は出ていないので、改造されたとは断定できない。
リデコは手抜きとみなされることも多いが、音声が異なるなどの工夫が凝らされたものもある。
リデコと明記しないのは、商品をよく知らない人にとって不親切である。
色変え商品にともなって、既存の特撮ヒーローのスーツが改造されたのではないかというウワサが、ファンの間で広まる場合がある。
キャラクター玩具のこれからのために
少子高齢化と可処分所得の減少のダブルパンチ。
そうした中でキャラクタービジネスを続けるためには、商品の種類を増やし、マニアにも訴えかける必要がある。
リデコはこれまで以上に重要になっていくだろう。
今後の苦戦が予想されるおもちゃ業界。
手抜き・かさ増しと批判するのではなく、少しでも多くの新型商品が出せるよう、買い支えていくことが重要ではないか?