地球滅亡後の世界:必死に生きる移住者を描く
四足歩行のロボットが活躍するテレビアニメシリーズ『ゾイド』の最新作が放送されている。
『ゾイドワイルドZERO』では、主人公の少年がゾイドとともに、冒険を繰り広げる。
何作も放送されているシリーズで、『ゾイドワイルド』(2018)の前日譚に当たるが、見ていない方でも楽しめる内容となっている。
現に、私は世代ではないが、楽しんで視聴している。
この作品は「ポストアポカリプスもの」であり、作品世界の複雑な背景と、健気に生きる人物たちの姿が特徴的である。
以下、この作品の魅力を、本編の内容に触れすぎないように紹介していく。
ゾイドワイルドZEROの世界観
21世紀、地球に未確認生命体「ゾイド」が発生し、滅亡した。
滅亡を前に宇宙へ逃避した人類は地球に再移住する。
その後、ゾイドを使った戦争が始まる。
主人公の少年は運び屋をする傍ら、廃墟の中からジャンク品を発掘して暮らしていた。
そんなある日、主人公は廃墟で「帝国軍」に追われている少女を保護する。
汎用型のゾイドを持つ主人公は、帝国軍の軍事用ゾイドに苦戦する。
はたして主人公は少女を守り抜けるのか?
謎の少女の正体とは?
ポストアポカリプス:地球滅亡後の世界を描く
ゾイドワイルドZEROは、「ポストアポカリプスもの」と呼ばれるジャンルの作品だ。
ポストは後、アポカリプスは終末や大災害を意味する。
つまり、人類や地球が滅亡した後の世界を描く。
「ディストピアもの」と混同されることも多いが、まったく違う。
ディストピアは暗黒郷と訳され、システムによって人々が不幸になっている都市を意味する。
これを取り入れた作品としては『フレッシュプリキュア』が有名である。
対して、ポストアポカリプスは滅亡後の世界で必死に生きる人々の様子を描くことが多い。
今作でも、食料や生活用具の確保など、生きるのに精一杯な人々の様子をリアルに描写している。
『ケムリクサ』もポストアポカリプスものである。
ポストアポカリプスとは:
「滅亡」の「後」を描く作品。
ディストピア(暗黒郷)とは異なる。
生活必需品を探しながら、必死に生きる人々が特徴的。
ジャンク品の発掘・改造
ゾイドワイルドZEROの世界では、文明崩壊前のジャンク品が重要な意味を持つ。
ジャンク品を改造したり、換金・交換したりすることで生活が成り立っている。
ジャンク品を食料と交換する描写もあった。
ただし、ジャンク品の発掘は簡単ではない。
廃墟には野生のゾイドもおり、(資源があるため)戦略上の重要拠点でもある。
発掘活動は戦闘などの危険が伴う。
そして、登場人物が使うゾイドも発掘されたものが多い。
主人公のゾイドも自分で発掘し、復元したものである。
ゾイドの化石も、戦略的に重要な資源と考えられているようだ。
ゾイドワイルドZEROの世界において、発掘は経済や軍事活動の要である。
地球の大気に耐えられない「第1世代」
今作は世界観の設定がしっかりしている。
中でも、ゾイドの侵攻から現在に至るまでの背景はよく練られている。
例えば、主人公たちは今の地球の大気に順応している。
一方で、「第1世代」と呼ばれる高齢者は特殊なマスクをつけないと生活できない。
第1世代は地球への移住を計画した人々であり、重要人物が多くいる。
マスク=怪しいという前提で番組を見てほしい。
考古学者の存在:地球の歴史はわからない
地球滅亡以前を記述した書物はほとんど存在しない。
そのため、歴史学者ではなく考古学者が過去を研究している。
主人公は考古学者の息子であり、滅亡以前の地球に関する知識がある。
その他にも地球の過去を知る人物がおり、考古学的な知識が戦闘に活かされる場面もある。
なお、ポストアポカリプスものでは、文字が失われている場合がある。
今作では文字が読めないなどの描写がなく、文字が失われたかどうかはわからない。
主人公:地球滅亡を反省する第三勢力
今作には、大きく分けて3つの陣営がある。
主人公、帝国軍、共和国軍だ。
帝国軍と共和国軍は戦争状態にあるが、主人公はどちらにも属さない。
強いていえば共和国軍の味方だが、所属しているわけではない。
また、帝国軍は主人公の目的達成の障害であって、倒すべき敵とは認識していない。
主人公陣営はむしろ、ゾイドや自然を傷めつける人類に批判的な立場をとっている。
特に帝国軍は、ゾイドの精神を無理やり支配しているため、思想的には相入れない。
とはいえ、ポケモンのサトシがロケット団のアジトに乗り込まないように、彼らも帝国軍を倒そうとはしない。
地球や第二の母星が滅亡したのも、人類が自然やゾイドと調和できなかったことに原因がある。
主人公ら第三勢力は、そのことを胸に刻み込んでいる。
ロボット以外の描写にも注目を!
ロボットのおもちゃの販促として放送されることが多いロボットアニメ。
しかし、注目すべきはロボットだけではない。
戦いが発生した背景や歴史を、しっかり描写している作品も多い。
また、各陣営や人物同士の衝突がさまざまなドラマを産んでいる。
もちろん、かっこいいロボットも手にとってほしいが、ストーリーの考察などで盛り上がるのもよいと思う。
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