新しい価値はあるか? あの感動に執着していないか?
2017年に稼働を終了したリズムゲーム筐体「プリパラ」が復活し、稼働している。
プリパラシリーズの5周年に合わせたリバイバルだ。
これは確信があっての復活であり、他の作品は真似すべきではない。
長期シリーズによるファン獲得
「プリパラシリーズ」と表記したが、実際には「プリティーシリーズ」という表現が多用される。
このシリーズは、2010年の「プリティーリズム・ミニスカート」から始まった。
現行シリーズの「キラッとプリ☆チャン」は好評稼働中だが、それに並行してプリパラがリバイバルした。
プリティーシリーズには独自のオフィシャルショップが存在している。
展開が終了した筐体も、そこでのみ遊ぶことができた。
でも、終わったはずの筐体に更新があるというのは、今回が初めてだ。
一見、「懐古厨のワガママに答えた」形に思えるが、そうではない。
シリーズ全体が好きなファンも多くいると判断したようだ。
プリ☆チャンと連動する要素もあるらしく、両方を遊ぶ層をターゲットにしているものと思われる。
毛色の違う各シリーズ
どちらも、ライブや衣装のコーディネートを通じて、「いいね」を集める。
だが、ゲームシステムや世界観が異なる。
プリパラは非現実的な世界を舞台にしたサイエンス・ファンタジーだ。
妖精をマネージャーにしたり、世界を管理する女神がいたりする。
それから、食べ物を大胆にあしらったコーデが話題になった。
一方、プリチャンはリアルな世界で、動画配信をする。
動画配信を通じて、人間関係や個人の問題を解決していく。
多少のオーバーテクノロジーはあるが、プリパラのようなファンタジーな設定はない。
プリティーリズム:リアルな世界・ファンタジー
2作の前身にあたるプリティーリズムは、フィギュアスケートをモチーフにしている。
スケートをめぐって大人の陰謀が渦巻くなど、毛色が違う。
変身に宝石風のアイテムを使う点も特徴的だ。
スコアの単位も、いいねではなく「カラット」になっている。
コーデは現実のファッションを意識したものも多い。
決め手は新たな可能性
そもそも、プリティーシリーズは度々、過去作のライブパートを使用した映画を公開してきた。
現行作品で過去作のキャラクターを別名キャラとして登場させるなど、シリーズ全体を好きになってもらえるよう努力もしていた。
キャラクターグッズ展開においても、その傾向は強い。
しかも、プリパラは放送が終了したはずなのに、新曲を携えてライブ(リアルイベント)をしている。
プリチャンとの合同イベントも、プリティーリズムとプリパラの合同よりも多く開催している。
脇役だったはずの男性ユニット「WITH」は単独ライブもやっており、人気は衰えていない。
そうした背景があり、「リバイバルをすれば、現行作品も盛り上がるだろう」という判断を下したのだろう。
プリパラのリバイバルは、旧作を復活させることによる相乗効果を狙っている。
逆に言えば、新たな可能性がないのであれば、他のコンテンツはプリパラを真似すべきではない。
プリパラはシリーズ全体のファンを狙って、リバイバルを仕掛けた。
展開終了後もライブや新曲があるなど、人気は絶えない。
新たな可能性を睨んでのことであり、他のコンテンツは安易に追従すべきではない。
新機軸を打ち出せなかったリバイバル作品たち
キッズ向けホビー・ゲームはよくリバイバルする。
しかし、定着するのはごく一部だ。
懐古趣味に走り、新規ファンの開拓に失敗し、失速していく。
新機軸でリバイバルしたものの、それが受け入れられずに、旧作の機軸に戻ってしまう作品もある。
旧作へのリスペクトは大切だが、新しい風を一切排除するとそのコンテンツに将来はない。
新機軸の意味:時代の変化を受け入れる
リバイバル元になった作品には、当時大ヒットを記録したものもあるだろう。
でも、それは「当時」の話だ。
ヒットの要因は、時代を超えた普遍的な価値かもしれないし、その時代特有の価値かもしれない。
それを検証せずに、当時の作品を当時のままお出しするのは、失敗のもとである。
新たな可能性のないリバイバルに将来はない。
フルモデルチェンジしたおもちゃ&旧デザイン風の商品
再始動にあたり、おもちゃを新しくしているシリーズもある。
大ヒットした旧モデルにとらわれず、今売れるデザインに改変している。
中には、旧デザインを意識したおもちゃを売る会社もある。
でも、新デザインのものと戦わせられる、組み換え遊びができるなど互換性を持たせていたりする。
おうちの方が旧デザインの世代であれば、お子様と一緒に楽しむことも可能だ。
旧デザイン風の商品から新シリーズに入ってくれる人も、少しぐらいいるだろう。
そのような勝算があるのなら、旧デザイン風おもちゃの発売を検討してもよいとは思う。
新デザインに文句を言う人もいるが、どうせ買わないので無視しても構わない。
新作と移植版:新規開拓と旧作ファン
過去のゲームのリバイバル作品について。
再び脚光を浴びたいだけであれば、旧作ゲームの移植でもよいはずだ。
各家庭用ゲーム機やスマホには、旧作ゲームが遊べるソフトがある。
そういうものを発売すれば、再び遊んでもらえるだろう。
新たなゲームを作る場合は新たな価値の提示や、現在の技術で作る意味があったほうがよい。
中には、キャラを変えただけで、旧作の焼き直しになっている作品も存在する。
旧作ファンの一部にはウケるかもしれないが、新規ファンは手に取らないだろう。
リメイク版:新作の顔で店頭に並べよ
最新のゲーム機でリメイクする場合についても同じである*1。
あるシリーズでは旧作のリメイクの際に、最新作で出てきた要素を付け足している。
そうすれば、完全新作のゲームと見劣りしない。
ゲームバランスが大きく変わっていて、旧作を遊んでいた人も新鮮な気持ちで楽しめた。
ただし、旧作を遊んでいない人は「あの感動」の再来を待ち望んでいない。
古い価値を再び提示しても、新規開拓は望めない。
新たなファンがほしいのであれば、まったく新しいゲームの顔をして店頭に並ぶしかない。
その時代だからこそ受け入れられた商品と、時代を超えて受け入れられる商品がある。
リバイバル時にデザインを一新する商品もある。
旧モデルを意識した商品は、うまい売り方をしないと新規ファンを開拓できない。
リバイバルという名の墓荒らしに注意
リバイバルに失敗した一部のコンテンツが、ファンから「墓荒らし」と呼ばれている。
旧作の価値も表現できていないし、新しい価値の付加にも失敗している。
それどころかファンは、故人を踏みにじられた遺族のように怒っている。
当時のファンがキャストを務めていることも多く、そちらの心的被害は大きい。
「アニバーサリーだから復活させよう」
「低迷期だから人気作に頼ろう」
そうした甘い考えが事故につながる。
安易なリバイバルはせず、原作にリスペクトを示してほしい。
その上で新たな価値を提示できるのがベストだ。
*1:新規ファンが遊びやすいように、敵が弱くなっているリメイク作品もある。これに怒っている旧来のファンは新規開拓の邪魔になるので、無視したほうがよいだろう。