ホビーアニメを観ていたらいつの間にかアホになっていた

現在放送中の子ども向け番組を中心に、アニメや特撮ドラマについて書いていく。毎話「感想」を書くわけではなく、気になった話数や一般的な議論に関する記事を書く予定だ。

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【仮面ライダーゼロワン】人工知能の倫理で評価が二分?

ヒューマギアの暴走 背景にある人間の悪意

仮面ライダーゼロワンが賛否両論を巻き起こしている。

 

悪意を持った人工知能(AI)がAI搭載ロボット・ヒューマギアを操り、人類を襲う。

AIを扱う企業の社長である主人公は、ヒューマギアの可能性を信じ、悪意あるAIや人間に立ち向かう。

 

この番組では、脚本の粗よりもキャラクターの倫理観が批判の対象になっている。

仮面ライダーシリーズでこのような議論を巻き起こすのはめずらしい。

一体何が起こっているのか?

 

 

 

 

主な4陣営

今作では、陣営によってAIの見方が違う。

それぞれの見解や行動を整理する。

 

飛電インテリジェンス:主人公陣営

仮面ライダーゼロワン/飛電或人が社長を務めるIT企業。

ヒューマギアを開発・生産・販売している。

 

過去にヒューマギアの暴走事件を起こしており、先代社長の死をきっかけにそれが再発しはじめる。

或人はヒューマギアの可能性を信じ、暴走したヒューマギアに立ち向かう。

 

飛電の評判は落ちたが、滅亡迅雷.netの討伐をきっかけに持ち直したように見えた。

 

エイムズ(AIMS):AIを規制

人工知能特別法に基づき、AIの違法な利用を取り締まる。

 

隊長の不破諫/仮面ライダーバルカンは過去の暴走事件の被害者で、ヒューマギアを憎んでいる。

ただ、ヒューマギアに救われた経験もあり、2つの感情の間で揺れている。


滅亡迅雷.netの討伐後は、リーダーの「滅」を捕虜とした。

不破は滅から更なる同胞のことを聞き、その討伐に燃える。

 

一方、ZAIAから出向していた技術顧問の刃唯阿/仮面ライダーバルキリーは任を解かれ、復職する。

 

ZAIAエンタープライズ:人類は優れている

AIを扱う企業の日本支社。

人間の能力を高めるAIデバイス「ザイアスペック」を開発・生産・販売する。

 

社長の天津垓/仮面ライダーサウザーはヒューマギアに否定的な見解を示す。

人間はAIより優れていると信じ、或人に人間対ヒューマギアの対決を挑む。

飛電の先代社長とも因縁があったようだ。

 

天津は1000%が口癖で、利益を重視し、非効率を嫌う。

自社および自分の利益のためなら手段を選ばない。

或人を含め、多方面に圧力をかける。

 

刃唯阿は天津の右腕となり、飛電への妨害活動も行っている。

ヒューマギアを賢く利用するというポジションを取っており、天津とは考えが異なる。

 

滅亡迅雷.net:悪意あるAI

人類の滅亡を目論むテロリスト集団。

マザーAI「アーク」から悪意ある命令を受け取り、世の中のヒューマギアを暴走させていた。

滅/仮面ライダー滅、迅/仮面ライダー迅らを中心とし、暴走事件の合った旧実験都市に潜伏していた。

 

人間陣営との決戦後に壊滅したかと思われたが、今度はテロリストが直接手引しなくても暴走するようになった。

さらに、フードを被った謎の人物がザイアスペックをつけた人間を暴走させはじめた。

滅はその人物を同胞と呼ぶ。

 

AIの扱い方が未来すぎる

以上、4つの陣営の思惑が交錯する今作。

作中でのAIの扱われ方が独特で、今の時代とはかけ離れている。

よい意味にせよ、悪い意味にせよ、視聴者はそれに違和感を覚えているようだ。

 

AIに命はない バックアップできる

暴走し、怪人化したヒューマギアは仮面ライダーが破壊する。

だが、ヒューマギアに命はないので、バックアップから復元できる*1

 

中には、機密保持のため、バックアップができないものもある。

それ以外はためらいなく生き返らせて、学習をやり直す。

なんなら同じ姿・能力のものを複数作ることも可能である。

 

そうした異様な倫理観が、ヒューマギアに人間の生命観を当てはめている人には受け入れがたいようだ。

 

人間の醜さ VS 心を持ったAI

ヒューマギアを柔軟に扱う人もいるが、人間より劣った存在とか、仕事を奪う敵とみなす人もいる。

 

或人もお笑い芸人ヒューマギアに仕事を奪われた1人だ。

でも、ヒューマギアをぞんざいに扱ったり、暴力をふるったりする人には心を痛めている。

AIが浸透した社会という設定だが、それでもAIに理解を示さない生活者は多い*2

 

そうした人間の悪意に触れ、暴走するヒューマギアもいる。

むしろ、人間に寄り添う仕事をしていく中で、人間の心に近いアルゴリズム*3を獲得したヒューマギアもいる。

人間が忘れた芸術の価値を、ヒューマギアはAIなりに理解しているという場面もあった。

 

ゼロワンは、人間の醜さが如実に表れた作風になっている。

 

抑えられない悪意

そもそも、ヒューマギアの母体となるAIは天津によって、悪意をラーニングさせられていた。

その結果、ヒューマギアは暴走するようになった。

彼は人間の中に悪意があると信じ、ヒューマギアに学習させるべきだと開発者(或人の祖父)に進言していた。

 

一見すると、天津のほうが正しい。

しかし、「悪意を持ったヒューマギアは暴走するので、人間より劣っている」という天津の論理の穴は劇中でも示唆されている。


悪意ある人間はおり、番組でも描写してきた。

ザイアスペックをつけた人間は暴走しているし、つけていない人間も強い悪意を見せている。

天津はとりわけ悪意にあふれており、ヒューマギアの欠陥を証明するためなら手段をいとわない。

 

逆に、暴走プログラムに抵抗したヒューマギアもいる。

悪意を抑えつけるためのプログラム―理性―に欠陥が見つかるのは、人間もヒューマギアも同じという感がある。

 

暴走AI 人間で代替できないジレンマ

バックアップがあるのに、なぜヒューマギアを守るのか?

暴走するとわかっていても、人間を使わないのはなぜか?

ひとつには、ヒューマギアが労働市場にとって、重要なリソースだからということがいえる。

 

大変都合の悪いことに、この世界の日本ではヒューマギアの利用が必要不可欠になっている。

後継者のいない事業者や急な増員が必要になった職場などでも、ヒューマギアが使われる。

人間の能力を高める努力も大切だが、今は融通のきく労働力が求められている。

 

今、人間の悪意に触れたヒューマギアが暴走している。

すぐ代わりの人間を配置できるかといえば、答えはNOだ。

ヒューマギアが暴走したら破壊し、作り直すほかない。

 

でも、ゼロワンの世界では同じ能力を持ったヒューマギアを量産できる。

ヒューマギアは、故障したら働けなくなる人間とは違う。

(破壊されたらされたで、損失がある。ヒューマギアを守るのは自然な行動である。)

 

逆に言えば、反ヒューマギア派はヒューマギアのありがたみを理解していないということだ。

危険だとわかっていても、使い続けなければこの世界は回らないのに。

 

力を正しく使う 仮面ライダーのテーマ

「力を正しく使う」

これは平成ライダー以降で強調されてきたテーマだ。

 

仮面ライダーゼロワンに当てはめるとすれば、ヒューマギアの利用だろうか?

否、それ以上に、自分の悪意や理性を制御するというのも重視されている。

ヒューマギアと人間の対立を通じて、この番組はそういうことを伝えたいのではないか?

 

お仕事対決編は、フォームチェンジの販促があった1クール目(1話完結)に比べ、テンポがゆっくりになっている。

また、敵であるサウザーの勝ちばかりでイライラするかもしれない。

 

だからこそ、作者からの問いに向き合ってほしい。

あなたはAIについて、人間について、どう思うだろうか?

*1:初期は、復元した機体に初心者マークを表示する演出もあった。視聴者の中には「これまでの彼・彼女はもういないのだ」と、切なさを感じ取った人もいるようだ。

*2:AIを受け入れるのと理解を示すのは微妙にニュアンスが違う。或人はAIを受け入れているが、機能などの理解が至っていない部分がある。また、ヒューマギアを都合のよいロボットとしか思っていない登場人物もいる。

*3:人間の利益追求をサポートする一方で、プログラムされた内容と関係ない感情は理解できないようだ。顧客の笑顔を追求するヒューマギアは、売上重視の競争を理解できていなかった。

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