人工知能が人間を超える 可能性と危険性を巡る戦い
令和仮面ライダーシリーズ第1弾『仮面ライダーゼロワン』の制作が発表された。
同作は、主人公の青年が突如AI企業の社長に任命され、仮面ライダーとしても戦うという設定だ。
物語の舞台では、AI(人工知能)ロボットが労働の担い手として、人類と共存している。
しかし、あることからAIが暴走し、人類に襲いかかる。
群雄割拠! 対立する3つの陣営
そんな人類とAIの攻防を描く今作。
すでに3つの陣営が明らかにされており、群雄割拠型のシリーズとなる。
初期は
- 飛電インテリジェンス
- A.I.M.S.
- 滅亡迅雷.net
の3つが衝突する。
1つ目は主人公が社長を務める「飛電インテリジェンス」。
人類の労働を代替するAIロボット「ヒューマギア」を開発している。
主人公が仮面ライダーゼロワンとなって戦う。
2つ目は「A.I.M.S.」といって、AIが暴走しないか監視する組織だ。
開発者側である主人公とは対立する。
「仮面ライダーバルカン」と「仮面ライダーバルキリー」が所属する。
3つ目はテロリスト集団「滅亡迅雷.net」(めつぼうじんらいネット)である。
ヒューマギアを暴走させ、人々を襲わせる。
最初はこの3つだが、平成ライダーでは陣営が増えたり、くっついたり、まったく新しい対立構造になったりする。
しっかり覚えて、混乱しないようにしたい。
飛電インテリジェンス:AIを製造し、暴走を止める。
A.I.M.S.:AIを監視し、暴走を止める。
滅亡迅雷.net:AIを暴走させる。
仮面ライダーバルキリー:史上初! 初期から女性ライダー
仮面ライダーバルキリーは、女性が変身する仮面ライダーだ。
番組開始当初から女性ライダーがいるのは、ライダー史上初めてである。
女性性の主張が控えめなデザイン
日本の女性ヒーローは、女性らしさを盛り込んだデザインが少なくない。
スカートがついていたり、ピンク色だったりするものもある。
そんな中で、仮面ライダーバルキリーは女性の体型でありつつも、オレンジという中性的な色だ。
スカートもついておらず、直近の女性ライダーとは区別されている。
他のライダーと兼用のアイテム
残念ながら、男の子向けの販促番組においては、「女の子向けのおもちゃを出してもどうせ売れない」というのがおもちゃ会社の本音だ。
そのため、男の子と兼用のアイテムにすることが多い。
最近の仮面ライダーでは、変身ベルトに別のアイテムを挿して(認識させて)変身する。
ベルトを共通にし、挿すアイテムだけ変えて、別々のライダーとして扱う。
『仮面ライダーエグゼイド』の「仮面ライダーポッピー」も他のサブライダーのベルトを使い、挿すアイテムだけ変えた。
キービジュアルのバルキリーは、バルカンと同じ武器を使っているように見えるが……
パワーアップアイテムの可能性も?
とはいえ、悪いことばかりではない。
仮面ライダーバルキリーは、初期ライダーだ。
初期ライダーの何が違うかというと、パワーアップアイテムがあるかもしれないということ。
これまでの女性ライダーは、中盤や映画で登場することが多かった。
途中参戦のサブライダーはその姿のまま、終盤へ突入する。
一方で、最近の初期サブライダーは、パワーアップアイテムやフォームチェンジがあることも多い。
「1個だけ出して終わり」ではなさそうだ。
とは言っても、物語の都合上、序盤で退場するライダーも存在する。
だが、人気があるライダーは終盤や劇場版で確実に復活するだろう。
いずれにしても、バルキリーは中盤以降の女性ライダーより活躍できる可能性が高い。
仮面ライダーバルキリーは、初期から登場する初の女性ライダー。
ピンク色やスカートのようなステレオタイプが、デザインから排除されている。
初期からの登場なので、パワーアップアイテムなどの活躍が見込まれる。
モチーフはAIと職業
さて、今作ではAIと職業という2つのモチーフを前面に押し出している。
これからの時代を担う子どもたちにとって、重要なテーマとなる。
AIの暴走:知能が人間以上になったら?
レイ・カーツワイルらは、2045年までにAIの知能が人間以上になることを予測している。
専門的な話はここでは触れない。
「シンギュラリティ」「技術的特異点」「2045年問題」を扱う書籍などで勉強していただきたい。
ところで、AIの知能が人間以上になったら、どうなるだろうか?
今作の飛電インテリジェンスのように、AIが人間のよきパートナーになることを期待する人もいる。
反対に、A.I.M.Sのように、AIが人間の仕事を奪うとか、人間を攻撃するのではないかと考える人もいる。
そして、滅亡迅雷.netのように、AIを使って悪いことをしようとする人もいる。
子どもたちがGoogle HomeやAmazon EchoなどのAIアシスタントと戯れる現代。
この番組は彼らに、AIが持つ可能性と危険性を訴える。
それは、平成ライダーでもしきりに投げかけられている問いでもある。
力とは正義なのか? 悪なのか?
AIという正義と悪が紙一重になるモチーフは、仮面ライダーにぴったりなのかもしれない。
職業というサブモチーフ:子どもへのお仕事紹介・AIとの関係性
今回の会見で、サブモチーフが職業・お仕事であることが明かされている。
(以下、予想なので鵜呑みになさらないように。)
おそらく職業というのは、各回で暴走するヒューマギアのモチーフになっているのだろう。
例年通りであれば、序盤では、各職業の現場で事件を解決していくものと思われる。
上にも書いた通り、AIの恩恵を受ける人、AIに仕事を奪われる人などの対立も描かれるはずだ。
単に子どもに職業を紹介するだけでなく、AIの台頭によってどのような影響を受けるかもわかる。
教育的な内容になることが期待される。
生き物の可能性? 生命倫理にも注目
仮面ライダーゼロワンは、バッタの仮面ライダー。
十数年ぶりの昆虫単独モチーフのライダーとなる。
他のライダーも生き物がモチーフになっているようだ。
生き物ではない無機物のAIロボットは、有機物の仮面ライダーと対比されている。
AIは充電とメンテナンスさえすれば、いくらでも働ける。
給料も休日も必要ない。
でも、それは正しいのだろうか?
脚本を担当する高橋悠也さんは、『仮面ライダーエグゼイド』で既存の常識を超えた新たな生命観を提示している。
生き物とか、生命倫理についても、頭の片隅に置いておいてほしい。
人工知能の可能性と危険性を視聴者に訴えかける。
子どもに職業を紹介するだけでなく、AIの導入で仕事がどう変わるかも教える。
メイン脚本家の前例から考えると、人間がAIを使役する・こき使うことの倫理を問うかもしれない。
伝統を受け継ぐ令和ライダー 新風に期待
令和1発目の仮面ライダー、ゼロワン。
バッタモチーフへの原点回帰をした一方で、女性ライダーを本格的に採用している。
複眼は残しつつも、デザインはこれまでにない色・形に仕上がっている。
ストーリーは、AI(人工知能)と労働の未来にもフォーカスしており、教育・エンターテインメントの両面で楽しめそうだ。
実績のあるスタッフが繰り広げる、常識をひっくり返すようなドラマにも期待が持てる。
伝統や前例も大事だが、これまでにない新しい作品が見られればよいと思う。