リメイクアニメは消化スピードが速い 旧作と違う部分も
平成の人気特撮ドラマ『ウルトラマンティガ』がリメイクされることがわかった。
番組名は『ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA』。
ティガと同じような世界観で、別のウルトラ戦士「ウルトラマントリガー」の活躍を描く。
ただ、近年のウルトラシリーズは基本的に半年の放送である。
ティガをそのままやるとしたら、明らかに尺が足りない。
果たしてティガの魂を描ききることはできるのか?
消化スピードの速いリメイクアニメ
リメイク作品の中には、原作の消化スピードが速いものがある。
現在放送中のアニメ『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』は、同名のマンガを原作としている。
子ども向けとして展開しており、テレビ東京での放送は毎週土曜日あさ9時半〜。
アニメは1991年にも放送したが、都合により1年で打ち切られた。
いまのシリーズは2020年10月スタートで、この記事の執筆時点で半年放送されていた。
驚くべきは、すでに91年版で放送した内容を終えている点だ。
単純に考えれば、2話分を1回の放送で終えている。
「展開を急ぎすぎでは?」という旧アニメファンの声もある。
一方で、テンポよく進むので、見やすいメリットがある。
大幅に省略してストーリー自体を変更
2021年4月からスタートした『シャーマンキング』(毎週木曜日17:55〜テレビ東京系列)。
2001年に放送されたアニメのリメイクとなる。
リメイクと言っても、ストーリーが大幅に変わっているようだ。
第3話までに旧アニメの7話分に相当する内容を終えている。
その中で複数のエピソードを1話に詰め込むため、時系列や因果関係が変わっている。
これに対し、ネットでは「ストーリー上の矛盾が起こるのでは」と懸念の声もある。
ストーリーの整合性については、シリーズ構成の腕を信じるしかない。
完結しているからこそのスピード感
そもそも、これらのシリーズは原作が終わっている。
そのおかげでより整った、スピード感のある展開ができる。
連載当時はアニメをゆっくり進行させたり、引き伸ばしたりする必要があったかもしれない。
だが、今は不要なシーンをカットできる。
最終回から逆算して、ストーリー構成を変えることも可能だ。
あるいは、原作が進行する中で、設定が変わったところもあるだろう。
そうした部分を修正できるのも、原作終了済み作品の強みである。
ウルトラマントリガーにも、そうした柔軟な調整を期待したい。
原作のよさを残すための苦悩
新しい要素を付け加える
ティガの魂を受け継ぐウルトラマントリガー。
ただし、おもちゃなどで当時と違う部分がある。
執筆当時に公開されていた情報では、ティガにはない武器の登場がわかっていた。
例年通りであれば、パワーアップ形態も出る可能性が高い。
ティガらしさを残しつつ、新しいものを付け加える。
スタッフの手腕が問われる。
時代を反映したリメイク
リメイク作品に対し、「当時と○○が違う」と指摘するファンの声がある。
とは言っても、当時と全く同じものを作ることはできない。
それではリメイクの意味がない。
商業的にも、同じものを売るのは難しい*1。
引退や亡くなっているキャストもいる。
シャーマンキングでは可能な限り、当時のキャストを集めている。
主題歌も、当時と同じ林原めぐみが新曲を歌う。
それでもエンディング曲は時代を反映しており、同じものを作らない意志を感じさせる。
もちろん、作品の主題や世界観を表現するのは大事だ。
だが、時代を反映しなければ、今作っている意味はない。
思い出を美化していないか?
たしかに、世の中には原作や前回のアニメのよさが失われている作品も存在する。
しかし、あなたの思い出の中で美化されている作品もあるのではないか?
「久しぶりに原作を見たら、思い出に残っているものと違った」
「記憶より○○の登場が早かった・遅かった」
そのようなコメントも多い。
原作を見たことがないという人は特に、新しい作品として番組を見たほうがよい。
世間一般やファンの評価ではなく、あなた自身がどう感じるかが大事だ。
ファンが言っているのは、親戚のおじさんが言う「昔はよかった」と同じである。
なお、出演者の都合上、ウルトラマンティガを視聴する手段は限られている。
無理して原作を見る必要はない。
現代では許容されない表現も
この20年で、表現のハードルは格段に上がった。
ダイの大冒険でも、一部の女性キャラクターのデザインが大幅に変わっている。
現代の常識に照らし合わせた結果、カット・変更されたシーンもあるようだ。
実際、90年代以前のテレビ番組(バラエティやドラマを含む)を見ればわかるが、当時は今の時代では明らかに許容されない表現が放送されていた。
身体的なセクハラや、血の出る暴力シーンも見られた。
深夜番組なら大丈夫かもしれないが、子どもをメインターゲットにした作品では無理がある。
論点は表現の自由というよりも、メインターゲットの子どもやその保護者が許容するかである。
ただ、それでも過激と思えるシーンは残っている。
原作のエッセンスを残しながら、今の世に合う作品を作ることが課題となっている。
愛のあるリメイクを
社会情勢が不安定な中で、新たなコンテンツを打ち出すのが難しくなっている。
リメイクをやりたい気持ちはわかるが、アニメは単なるビジネスの道具ではない。
作品を愛している人もたくさんいるし、知らない人でも強い関心を持っている。
制作サイドは作品の魅力を意識したほうがよい。
その作品の歴史の中で、リメイクが汚点になるのはどうしても避けたい。
中には、ファンが「なかったことにしたい」と言っている作品もある。
省略や再構成をするなら、その作品らしさや重要なエピソードをおさえるべきだ。
*1:ダイの大冒険はゲームや外伝マンガなどを多岐に展開している。シャーマンキングでも、外伝マンガや展覧会がある。